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第6話 大賢者との鬼ごっこ

 私とハンナの喧嘩ケンカは、子供同士のたわいない嫌がらせから徐々に激しくなっていった。私はプラスチック製の下敷きを手に取り、服を使って静電気を貯める。


 更に強力となった電撃で、ハンナの首筋を狙う。そこは、筋肉が無くて、電気ショックがより痛い場所だ。彼女が私に無防備な背中を晒しているところを狙う。


(さっきは良くもやってくれたわね……。ふん、突然攻撃されて、変な声を出すと良いわ!)


「ひゃん!」


 ハンナはビックリしたような声を出して、私の方を睨み付ける。褐色の顔は、ほんのり赤くなり、恥ずかしさと怒りを感じているようだ。彼女は、私を張り手で突き飛ばす。オッパイの位置に手が当たり、私も思わず声を出してしまった。



「ああん……、痛い……」


 私のセクシーな声を聞き、ハンナは動きを止めていた。本来ならば、腹を攻撃するつもりが、誤って胸に行ってしまった。膨らみ始めたばかりの胸は敏感であり、彼女の攻撃を思いっ切り喰らってしまった。私は、しばらく胸を押さえてうずくまっていた。



「あ、ごめんなさい……」


 ハンナは、私の思わぬ反応にそう言って謝る。その2人の様子を、アリッサが興奮するように見つめていた。本来ならば止めるべきだが、2人の色っぽい仕草にドッキリさせられていた。止めずに、2人の喧嘩ケンカを見守る事にしていた。



(2人とも、凄く良い! これは、小説のネタになるわ。もっとお互いに喧嘩ケンカし合って、最後には仲良くなるのよ。あ、よだれが……)


 そんなアリッサの事など知らず、2人の戦いはエスカレートし始めていた。私は、ハンナが憎くなり、プラスチック製の下敷きを使って電気を貯める。多少長時間電気を貯め続けて、自分自身が電気を起こせるイメージを体に刻み込んでいた。そして、私の動きに警戒するハンナに近付いて行く。



(喰らえ、『五本指ファイブフィンガー衝撃ショック)』!)


 私は、さっきまで不可能だと思っていた静電気による連続攻撃、それを可能にしていた。指1つ1つに電気を分散して貯めるイメージをし、5回連続の指による電気ショックを与えていた。もはや10秒に1回などというペースではなく、1秒に5発を叩き込めるレベルに達していたのだ。



「ふぁあ、痛い、痛い、痛いよぉ……」


 5回の連続電気ショックを受け、ハンナは泣き出していた。1発1発の威力は弱くても、急所に5回も攻撃されては、精神的に泣きたくもなったのであろう。私は、すでにグロリアスの与えてくれた課題をクリアーしていた事により、にやけ顔をしていた。それが、ハンナの心にも火を付けていた。



「この、良くもやってくれたわね! 喰らえ、『空気エアの張りスラップ』!」


 私を張り手1つで弾き飛ばした技が、高速で繰り出される。空気エアという名前を付けているが、彼女の技は空気ではないようだ。張り手が当たる瞬間に、太い輪ゴムを直接当てられたような衝撃が来る。その強力な衝撃と、張り手が同時に襲って来るのだ。私は3発も体に受けて、痛みに悶えていた。



「あっ、あっ、あっ、痛いよぉ……」


 私は助けを求めて、アリッサの方を見る。私が振り向くと、彼女もよだれを垂らしてヤバい表情をしていた。放心状態になり、とても頼れるような状況ではない。ハンナもそれを悟ったのか、お互いに戦闘意欲を隠す事なく、全力で向かって行く。



「ハンナ、これで終わりよ! 『稲妻ライトニング衝撃インパクト』!」


 私は、一本一本の指に貯めた電気を、1つにして一気に放出する技のイメージをしていた。しかし、威力は弱く、通常の電気ショックの威力しかない。


 ハンナの体に当てる直前に、すでに私はその事に気が付いていた。それでも攻撃は止めず、彼女に向かって技を放つ。彼女も特大の電撃が来ると思ったのだろう。技が当たる前に、私を止める事にしていた。


「させないわよ! 『レッグによる反撃カウンターアタック』!」


 私の攻撃に対して、ハンナは下半身の足元を攻撃して反撃する。私は転けるような体勢になり、ハンナの上に覆い被さった。ポヨンと彼女のオッパイがクッションになり、私を抱き止めてくれる。


 私の電撃攻撃は、彼女ではなく、その後ろに立っていた洗濯機へ向かっていた。彼女に壁ドンするような形で、洗濯機ドンをしてしまう。


「痛たたた……」


「大丈夫?」


 私は、ハンナに思いっ切り抱き止められていた。顔を上げると、キリリとした美しい彼女の顔と目が合った。私と同い歳なのに、私よりも少し大人びた顔と体をしている。


 思わず彼女を可愛いと感じてしまった。気持ちの良いオッパイの感触と、彼女の良い匂いに包まれて、さっきまでの怒りやムカつきも消え失せていた。


「あ、ごめん……。痛かった?」


「痛くはないけど、早く退いて欲しい……」


 彼女の顔も熱を帯びている。私を支えるようにして抱き付かれたため、対応に困っているようだ。アリッサとの嫉妬心が無ければ、彼女も私と仲良くなりたいと感じていた。


 出会ってすぐに友達になれる可能性も高かったのだ。それが一気に急接近した事によって思い出されていた。アリッサへの嫉妬心も消え失せ、お互いに素のままの自分に戻っていたのだ。


(はあああ、ローレンちゃんとハンナちゃんが仲良く抱き合っている……。心配していたけど、どうやら仲直りしたみたいね。はあ、興奮して介入するタイミングを完全に見失ってしまったわ……)


 アリッサは、私達を熱っぽい目で見続けているが、完全に元通りの状態ではなかった。ウイーン、ウイーンと悩ましい音を立てて洗っていた洗濯機は、私の電気ショックにより、完全に壊れて停止していたのである。これでは、もう洗濯をする事ができない。私とハンナは責任を感じて、彼女に謝る。



『私達が喧嘩ケンカをしていたので、洗濯機が壊れてしまいました。すいません!』


「ふふ、物は、いずれ壊れる可能性があるものよ。あなた達に怪我が無くて良かったわ!」


 アリッサは、菩薩のような悟りと、聖母のような笑みを浮かべていた。その顔を見て、私達はホッと胸を撫で下ろす。自分達が取り返しのつかない事をしてしまったのではないかと不安だった。彼女が許してくれたという事で、私とハンナは笑顔になる。しかし、彼女の手はゲンコツ状態になっていた。



「でも、悪い事をしたのは事実。1発だけ、ゲンコツを喰らってもらうわね。それとも、お尻ペンペンの方が良いかしら? あなた達の可愛いお尻を叩くのも、とても興奮するわよね……」


 彼女は、飢えた野獣の目で私達を見つめて来た。これはヤバイ、私達の可愛いお尻に傷を付けられてしまう。私とハンナは、お互いに目で確認し合い、別々の方向に逃げる事によって、彼女を撹乱させる事にした。さっきまで喧嘩ケンカしていたが、同じピンチに陥った時は、お互いの利益の為に協力し合うのだった。



「うわあああ、逃げろ!」


「うん、あっちへ行くね」


 完全に同じタイミングで2方向へ走り出した。アリッサは、身体能力では優っていても、同じタイミングで走り出せば、どっちを追おうかと迷うはずだ。その時間を稼ぐ事もできるし、どちらか一方は逃げ切る事ができるという戦術だった。私達の拙い努力を、彼女は笑って見つめていた。私は逃げられると油断する。



「あらあら、私と鬼ごっこをしようなんて……。これは、ゲンコツの刑かしらね?」


 アリッサは、スカートを捲り上げ、速く走れるように準備をする。パンティーが見えないギリギリの位置で固定し、スカートを洗濯バサミで止めていた。その間にも、私とハンナはどんどん逃げて行く。いくらアリッサでも追い付けないであろう位置まで、角を曲がったり、部屋を通り抜けたりと工夫して走った。



 これで逃げ切れられる。そう思っていると、私の通路を塞ぐように立ち塞がる人物がいた。ハンナだった。2人で逃げ回り、同じように逃げ切ったのだ。これで、しばらくどこかの部屋の隅にでも隠れていれば、当面罰を受けなくて済む。そう思っていると、私の肩を叩く人物がいた。



「はーい、2人ともお揃いのようね♡」


 アリッサが、オバケのように不意に現れた。完全に逃げ切ったと思っていただけに、私もハンナもビビって、変な声を上げていた。


『ひぎゃあああ……、アリッサさん、なんで……』


 私は尻もちを突き、ハンナはビビって腰を抜かしていた。2人とも動けない事を悟り、アリッサがゆっくりと近付いてくる。顔は笑顔だが、私達を威嚇するように音を立てて近付いて来た。あまりの恐怖に、ハンナはお漏らしをし始めていた。そんな事を理解する余裕も無く、私はまだ逃げようと算段する。



「おっと、チェックメイトですよ!」


 私は一気に彼女から離れようとダッシュするが、スカートのベルト部分を掴まれ、逃げられない。逃げようとした反動で、スカートが脱げて、青色のパンティーが露わになってしまう。


 スカートが完全に脱げないまま、吊り上げられ逆さまにされている。膝元をスカートで締め付けられ、逃げる事も地面に降りる事もできないでいた。


「あらあら、良い眺めね。可愛い青色のパンティーが露わになっているわ。それに、ハンナちゃんは、失禁しちゃっているわね……。ふふ、2人して、私の魔法技術マジックスキルを甘く見ていましたね。


 確かに、通常時の私の魔法技術マジックスキルは、半径5メートル以内にいる人の心を読む能力ですけど、意識して本気を出せば、半径40メートルにも効果範囲を広げる事ができるのです。その分、賢者タイムは早めに来てしまいますけどね。



 賢者は、戦闘状況と戦闘スタイルに合わせて、自分の技を変える事もできます。2人とも、覚えておきなさい。では、罰ゲームのゲンコツですよ!」


 私とハンナは、彼女からゲンコツ一発を喰らい、半泣きする。私はスカートを履き直し、ハンナは下着とスカートを着替えていた。


 2人の着衣が整う頃には、すでに涙は引っ込んでおり、アリッサと共に洗濯を続行する事になった。古い方法だが、大きな桶と洗濯板を使っての手洗いだ。これも罰ゲームの一部に含まれているらしい。


挿絵(By みてみん)

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