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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第3章 『闇の(ダーク)道化師(クラウン)』との死闘
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第65話 ローレンVS2人の七賢者

 外に出るなり、私は夕日が綺麗なのを眺めていた。太陽が横に長細くなり、いびつな形をし始めていた。それでも、心踊るような素晴らしい景色だった。


「わー、綺麗な夕日!」


「ふん、夕日ごときで騒がないでください。俺ほどの賢者能力アビリティーを持っていれば、この夕日くらい再現できるのですよ」


 赤い服のローブを着たムカつく男性は、私と同等レベルの火球を瞬時に作り出した。辺りは、彼の火球によって温度が上がる。まるで夕日のような眩しさと熱量を維持し続けていた。彼は得意になり、こう語る。


「はっはっは、あなたも同じくらいの火球を出す事ができるのでしょうが、維持し続けるのは無理でしょう。この超高温と夕日をも思わせる火球を巧みにコントロールするには、膨大な努力と才能が必要なのです。これこそが、エリート中のエリートの力なのです!」


「むー、維持はともかく、私だって同じくらいの大きさの球を出せるもん!」


 私がイラついて銃を構えようとすると、少しは話の通じる冷静な風の賢者が話を続け出した。私をテストする内容を告げて来た。どうやら、私に少しは敬意を持っているようだ。自分をエリートと思って見下している炎の賢者とは違うレベルのようだ。


「まあ、それはグロリアスから聞いていますよ。あなたは、確かに私達より潜在能力は上かもしれない。しかし、まだ足手纏いである事には変わりはありません。私達の合体技を超える威力を出せば、あなたの勝ちと致しましょう。


 それが出来なければ、今回はお城の中で大人しくしていてくださいね。足手纏いを気にかけているほど、今回の戦いは余裕ではないのです。1人の足手纏いがいるだけで、そいつを助けるのに余計な力を使わなければいけなくなりますからね」


「まあ、そういう事だ! 俺達の合体技を超える威力などあり得ない。今回だけは、ヤンチャ行為も子守りも無しの方向でお願いするぜ!」


 風の賢者も私のハリケーンボール並みの風の球を作り出していた。さながら台風のように右回転しながら渦を巻いている。引き込まれそうなほどの威力を発揮していた。私とカステラは、スカートを押さえながらなんとか耐える。


「いやーん、エッチな風!」


「いや、冗談を言ってるレベルじゃないよ。このレベルの炎と風を長時間維持していれるとは……。さすがは、ダイアナ様やグロリアスさんと同等レベルの賢者といったところか……」


「そんなに凄いの?」


 驚いているカステラに対して、私は質問する。どう見ても、私の火球フレイムバースト風球ハリケーンボールと同じくらいの威力だ。私がエイトガンでショットすれば、同じ威力の技によって相殺してしまうだろう。


「くっくっく、自己紹介が遅れたな。まあ、貴様のようなガキに覚えてもらおうとは思えないが、少しは敬意を持って接してもらおうか。


 グロリアスとダイアナ、ジャックを最高の賢者『3つの(トリプル)王冠クラウン』とするなら、こちらはそれを上回る賢者能力アビリティーを持つ四天王『風林火山ふうりんかざん』だ!


 全員が魔法使いタイプであり、自然属性のうちの1つを極めている。お前のような素人には一生かかってもできないような合わせ技も自由自在に発生させる事ができるのだ。まずは、炎と風によって、地上最大級の火球技を見せてやろう!」


「ふふ、この技を超える技を生み出せれば、ローレンちゃんも闘いに参加して良いですよ。生み出せるものならばね!」


 2人の火球と風の球が重なり合い、2倍以上の火球を作り出していた。上空にもう一つ、巨大な太陽が出現したような感じだ。私とカステラは、周囲の熱を感じて、必死でクールダウンする。上空数十メートル上でも、かなりの熱気を放っていて危ない技だった。


「くう、これが七賢者同士が合体させた必殺技なのか。何という凄まじい威力なんだ。本当に、夕日のように周囲を熱く燃え上がらせているようだ……」


「はあ、暑い……」


 私とカステラの驚く顔を見て、炎の賢者は粋がる。何と技名まで命名し始めていた。


「くっくっく、俺とコイツの『朝日が昇る(ライジングモーニングサン)』だ!」


「うわぁ、夕日なら『夕日が沈む(シンクサンセット)』なのに、間違えているよ!」


 私は、2人の技名をバカにしていた。それを、カステラが訂正する。


「いや、おそらく夕日が沈むという表現が気に入らなかったのだろう。それで、朝日が昇るという『朝日が昇る(ライジングモーニングサン)』と名付けたのだろう。エリートにとって、沈むという表現はなんとなく受け入れられないだろうからね」


「ふーん、受験ジンクスって感じですか?」


「まあ、不安になるだろうね。たとえ自信があろうが、成績が優秀だろうと、この話を読まなきゃ受からない! とか言われたら、迷信でも嘘だろうとも従ってしまうだろう。人生を決めるかもしれない決定を迫られれば、わずかな不安要素も避けようとするだろうからね」


「ふーん、なら読んでもらうしかないね!」


 私とカステラが話していると、炎の賢者が私を挑発する。とりあえず、コイツの粋がる様子は搔き消したいと感じていた。その笑顔を絶望の表情にして、私の実力を認めさせるのだ。私は、上空に向かって銃を構える。


 火球を打ち出して、奴に絶望の表情をさせようとしていた。私の指先と足元に電気が蓄積ちくせきされる。カステラは、私の行動を一部始終観察していた。そして、私の賢者レベルを見て驚いていた。


「凄い、基本的な実力だけならば、七賢者をも超えるレベルだ……」


「うおおおおおおおお、行っけ、『火炎弾フレイムバースト』!」


 空を明るく照らす七賢者の火球と同等レベルの攻撃が上空に撃ち放たれた。炎の賢者1人が出した火球ならば同じほどのレベルだったが、炎と風を合わせた攻撃技には及ばない。私の最大火力の攻撃が、虚しく上空に消えて行った。


「くう、奴らの合体技には及ばなかったか……。次こそは!」


「待った!」


 私が続けて火球を撃ち出そうとしていると、カステラが止める。どうやら、私の攻撃方法を見て、なんらかの以上に気が付いたようだ。彼女は無意識にだが、ダイアナの六神通の眼力を何度も見てコピーしていた。その為、少しだけ分析能力が向上している。


「カステラちゃん、どうしたの?」


「ローレン、あなたの攻撃、銃を撃つ時にエネルギーをエイトガンに集めてるようだけど、銃の威力が強過ぎてあなた自身が飛ばされないようにエネルギーを足にも集中している。そのせいで、無駄に電気エネルギーを消費しているよ。


 エイトガンの発射にのみ、電気エネルギーを消費させれば、もっと威力のある攻撃ができるかもしれない。ちょっと足への放電を止めてみてくれないか?」


「え、そうなの?」


「身体能力だけで発射を受け流すことができれば、威力だけでなく球数も増えると思うけど……」


「じゃあ、銃を撃つのにも慣れてきたからやってみるよ。ちょっと足の方に電気エネルギーが使われていないか確認してよ!」


「うん、良いよ!」


 私はカステラのアドバイスにより、エイトガンに電気エネルギーが行くように調節する。最初は難しかったが、彼女の眼力によって手だけに電気エネルギーが集中させる事ができるようになっていた。エイトガンに、いつも以上のエネルギーが充電されているように感じる。


「うーん、ちょっとは威力が上がるかな?」


 私の電気エネルギーを見て、2人の七賢者が驚愕していた。このまま撃ち出せれば、彼らの合体した技を超える威力を持つ火球が放出されるだろう。


「馬鹿な……。この我々の合作技があっさりと超えられてしまう!?」


「いや、あの銃は制限リミッターが付けられている。いくら彼女の潜在能力が強くても、銃によって撃ち出される攻撃力は、1人の七賢者の最大技だけと決められているはずだ。エイトガンを通している以上、それを超えることは不可能だ」


 風の賢者の言う通り、私が必死で撃ち出した火球は、さっきと同じ威力だった。どんなに電気エネルギーを手に集中させても、撃ち出される火球の威力が変わることは無い。ただし、蓄えられた電気エネルギーは、次の球へと供給されていた。


「あれ、威力が変わってないよ?」


「どうやら、最低限の安全性を考慮して、七賢者の最大技と同じ威力しか撃ち出せないようだね。余った電気エネルギーは、次の攻撃用に充電されているようだけど……」


「えー、じゃあ絶対に勝てない勝負じゃん! 威力が上がらないんじゃあ、私の負けだ!」


「まだ分からないよ。いろいろ工夫してみたら、攻撃の威力が上がる可能性はあると思うけど……」


 私とカステラが、一時的に銃を地面に置いて構造を分析していると、炎の賢者が諦めるように言ってきた。私を降参させて、自分通りに操らせようという魂胆だったらしい。頑なに私を戦力外とさせたいようだ。


「何度やっても無駄だ! 自慢の威力ある攻撃でも、俺達の攻撃には及ばないということだ。それが分かったら、さっさと大人しく引っ込んでいろ。ここからは、大人の優秀な賢者だけの時間となるのだ。足手纏まといの子供は、ベッドで大人しく寝ているが良い!」


「今回ばかりは、容赦するわけには行かないな」


 どうやら私とアリッサだけが戦力外として戦いに参加できないようにされそうになっていた。アリッサは、引きこもりの無職ニート小説家だから良いけど、子供で好奇心旺盛な私には耐えられないほどの苦痛になっていた。

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