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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第3章 『闇の(ダーク)道化師(クラウン)』との死闘
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第62話 凶悪な魔法技術(マジックスキル)

 私とカステラは、食事も終わり、デザートに手を付ける。優雅に食べていると思ったカステラは、私並みのスピードで一気に食事を平らげていた。まるで、飢えた獣のように目が鋭くなっている。かつては、この目を怖がっていた時期もあったのだ。


(数日前までは、私の殺気も怖がっていたあなたが、みるみるうちに成長したのは認めます。ですが、私もやはり勝負に貪欲な獣なのです。久しぶりに、全力で相手をして差し上げましょう。あなたでは、私には勝てない!)


 カステラは、私との直接のバトルでは無いため、全力で私を叩き潰すようだった。本気を出せば、私を倒せると思っているのだろう。殺気をむき出しにして、こう語る。


「ベイブレードって、2勝して初めて勝ちになるんでしょう? なら、勝負はまだ決まっていないよね?」


「うん、私も初めてのギミックだから調子が出なかったみたいだけど、次は本気を出すよ! もう一度勝負しよう!」


「望むところですよ。ダイアナ様の弟子として、無様に負ける姿は見せられません。全力で戦い、私が勝利してみせます!」


「面白いじゃん、それでこそに勝負だよ!」


 私達は、プリンだけは味わいながら味を楽しんでいた。このプリンが終わった時、カステラとの全力のバトルが展開されるのだ。私は、プリンを味わいながら考えていた。やっぱり、焼きプリンは美味いと……。


 デザートも食べ終わり、私とカステラは勝負のフォールドに移動する。わずか直径30センチの円の中が、私と彼女の気迫で緊張感を増して来ていた。子供とかが集まり、2人の勝負の行方を息を飲んで見守っている。


「よーし、全力で叩き潰すぞ! 3(スリー)、2(ツー)、1(ワン)、GOゴーシュート、えい!」


 私が放ったコマは、まるで竜巻のような風を纏って動いていた。わずかに宙を浮いて、私をさえ引き込もうとするほどの威力だった。放った私自身もちょっと驚いている。本気を出したが、ギミックを超えるレベルだった。


「もうオモチャじゃないみたい……」


「これは、オモチャじゃないんだろうな。賢者能力アビリティーを限界まで載せた軍事兵器なんだ。これを倒さなければならないのか……」


 カステラは、恐怖を感じていても動揺せずにシュートを放った。初めから勝てないという事は覚悟していた。少しでも争うことが出来れば、上出来だという事らしい。シュートと同時に私のコマを吹っ飛ばす気らしい。


(ローレンのコマは、おそらく持久型だろう。地面からちょっと浮いているし、攻撃型の全力アタックには耐えられないはず……)


 カンという衝撃と共に、カステラの放ったコマが私のコマに激しく当たる。しかし、私の高速回転の前には、弾き飛ばす事はおろか、揺らす事さえもできない。通常の2倍以上、いや3倍の回転力を持っているのだ。通常のコマでは争うこともできない。


「くう、弾き飛ばされる!」


 カステラは、軸先をグリップに変えてなんとかフィールドに留まっていた。賢者能力アビリティーによる変化をフィールド内でも行えるようになっていた。それでも、並みの攻撃では私のコマを揺るがす事さえもできない。


「くっそ、グリップ軸じゃあ、体力が奪われる! なんとか、持久型に……」


 カステラが考えている事を呟いていると、それに呼応したようにコマも変化し始めていた。バランス型の軸先になり、なんとか体力を温存する。その時、彼女はある事実に気が付いた。彼女はどんな生物にでも変化できる賢者能力アビリティーを持っているのだ。


(そういえば、やってみた事が無かったけど、他人にも変化する事が出来るんだよね? なら、ダイアナ様やグロリアス、ローレンにも変化できるのだろうか? 姿形は多分簡単に真似る事はできる。ならば、賢者能力アビリティーはどうだろうか?)


 カステラは、ゴクリと唾を飲んだ。今まで、自分の賢者能力アビリティーはジャックという男の劣化コピー程度でしかないと考えていた。それが、自分だけのオリジナル能力を身に付ける事が出来るかもしれない可能性に行き着いたのだ。


「ジャックにも、同じ事が出来るかもしれない。でも、私が他人の賢者能力アビリティーをコピー出来れば、私が出会った事のある人によって作られたオリジナルの能力にする事ができるはず……。もう、劣化コピーなんて思わなくて良いんだ!」


「何、ブツクサ言ってるの? こちらから攻めて行くよ!」


 私は、かなりの実力差があるにも関わらず、攻めの姿勢を崩さない。どんな敵にもガンガン攻めて行くのが子供ならではの戦略だった。相手のコマを派手に吹っ飛ばせれば、自分としては気持ち良いのだ。


「ぐおお、ローレンが電磁力を使っているのなら、私も……」


 カステラのコマに、わずかだが磁力が宿り始めていた。私のコマが近付くと、逃げるようにして離れて行く。ほんのわずかではあるが、磁力で地面を浮いているようだ。私の磁力とは威力が違うので明らかではないが、そのように変化している。


「やった、少しだけど変化させる事ができた。私の賢者能力アビリティーは、『全能オールマイティー変形トランスレーション』と名付けよう。これなら、ローレンにだって負けない!」


「この、調子に乗るなよ!」


 私のコマは、ちょっと助走を付けて、カステラのコマから離れていた。まだ自分の能力を上手く扱えないので、磁力を引き合うようにさせる変化はできなかったが、それでも余りある回転力と破壊力を有していた。わずかな溜めで、一気に彼女のコマを弾き飛ばすつもりだ。


「喰らえ、『炎の(フレイム)破壊バースト』!」


「ええ、炎とか一切関係ない賢者能力アビリティーなのに……」


 カステラはそいツッコミを入れるが、動き出した私のコマを避けるほどの磁力は持ち合わせていなかった。彼女自身のコマの反発力も加わり、弾丸のようなスピードでコマが弾け飛んだ。彼女が何の対応もする事が出来ず、私のコマが圧勝していた。


「わーい、2連勝だ!」


「負けた! でも、私の賢者能力アビリティーには伸び代がある! 落ち込む必要なんてないんだ……」


 カステラは、そう言って自分を慰めるが、負けた悔しさは噛み締めているようだ。圧倒的な力の差を感じて驚くと同時に、私の師匠のグロリアスに対しても認識を改めていた。私が努力しても勝てないほどの実力を、彼は持っていると思っているのだろう。


「これほどの賢者能力アビリティーを持ってしても一勝もできないとは……。グロリアスさんの賢者能力アビリティーは、どれだけ強いんだろうな……」


「うん? 賢者能力アビリティーなんて関係ないよ! 全部特殊ギミックによる勝負じゃん!」


 私がそう言うと、彼女は驚いた顔をして私を見つめてきた。彼女は、このベイブレードが特別に作られている『魔法技術マジックスキル強化使用型ベイブレード』だという事を知っていた。それに対して、私は普通のベイブレードだと思っていたのだ。


「あの、このベイブレードね、賢者能力アビリティーによって変化する特殊なタイプを持っているの。勝ったのは、ローレンの実力だよ」


「うん、そのつもりなんだけど……」


 私はカステラに説明されても、全然コマの性能を理解する事が出来なかった。全ては、この店で買ったコマのギミックだと思い込んでいるのだ。私への説明が無駄と分かり、彼女は気持ちを切り替える。子供には理解し辛い内容である事を悟ったのだろう。


「じゃあ、お腹も満たされたし、次は美容院に行こうか?」


「うん!」


 私は、新しく手に入れたベイブレードを自分の胸のポケットにしまう。このコマを使えば、嫌らしい戦法を使うグロリアスから一勝をもぎ取れるかもしれないのだ。今日、お城に帰ったら、早速バトルを申し込むつもりだった。


「うーん、美容院はもう少しあっちの方に行った場所にあるみたいだね。その後は、温泉に浸かって体を洗おう。切った髪の毛が付いていると嫌だからね。で、体を洗った後は、洋服店に行って装備を整えよう」


「うん、付いて行く」


 私は、迷子にならないようにカステラと手を繋いでいた。さっきまではお互いをライバルだと思っていたカステラだが、一歩店の外から出るとただの子供に戻ってしまう私を見て、彼女はお姉さんのようになっていた。私がはぐれないように、いろいろ気を使ってくれる。


「わー、アレなんだろう?」


「ちょっと、私から離れないで! 後で一緒に見てあげるから、まずは目的の場所に行きましょう。じゃないと、すぐに夕方になったり、迷子になったりするからね!」


「わー、カステラちゃん、ハンナちゃんみたい。凄く大人っぽいよ!」


「はあ、あなたは、もう少し大人になって欲しいわ。迷子になったら、地図の見方も分からないから、確実に迷子になるわよ。私は、ダイアナ様からあなたの護衛も承っているの。絶対に怪我させるわけにはいかないんだから!」


「うん、カステラちゃんの手をしっかり握っているね!」


 ハンナは、私の性格を瞬時に見抜いて、子供と大人の両方の対応を上手くこなしていた。カステラは、大人への対応はできるが、子供である私の対応には上手く合わせられないでいた。人付き合いの差が、わずかではあるが私の対応に出始めている。

ちなみに、女の子用のオモチャを選んだ場合は、バトミントンセットでした。

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