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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第3章 『闇の(ダーク)道化師(クラウン)』との死闘
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第61話 優雅な食事タイム

 私とカステラは向かい合うようにテーブルに座り、コースメニューを頼もうとしていた。その時、隣に書いてあるメニューが気になった。何と、オモチャ付きの美味しそうなお子様ランチが目に入ったのだ。


「ああ、お子様ランチがある!」


「え、うん、あるね……。欲しいの、オモチャ?」


 興奮する私に対して、精神年齢が上のカステラは冷静な目をしていた。まさか、13歳でお子様ランチに興味を持つとは思わなかったのだろう。彼女はすでにお子様ランチなどよりも、大人の女性として見られることを望んでいたのだ。


 反対に、私はただ自分の欲望に忠実に行動しようとしていた。さっきまで女子力を磨くとか思っていた覚悟さえも消し飛んでいる。彼女は一瞬面食らったが、1分ほど考えてから大人の対応をする事にしていた。


「うーん、オモチャだけを後で買う事も出来ると思うけど、どうする?」


「何言ってるの? このオモチャは、この店のオリジナル商品って、書いてるじゃない! この店でしか手に入らないんだよ。他の店では似たような物も置いてあるけど、この店にあるのは非売品だよ! 買わなきゃ、絶対に後悔するよ!」


「う、上手すぎる……」


 カステラは、私の言うことを聞き、この店が子供心をバッチリ掴んでいることを悟った。もちろん、この店もダイアナが経営指南をしているのだろう。自分の師匠であり、親でもある彼女に畏れと尊敬を感じていた。


「じゃあ、オモチャだけ特別に買って、後は普通のランチコースにするって言うのはどう? 実際、コースメニューの方が美味しくて、女子力もアップできると思うんだけどな……」


「本当!? そんな事できるの!?」


「うん、私もダイアナ様のスペシャルカード会員だから、いろいろ融通を利かせてくれると思うけど……」


「へー、凄い! グロリアスなんて、カードどころか現金さえ滅多に持っているの見た事ないよ。いつも、アリッサさんにお金をせびってるからね……」


「うわぁ……」


 グロリアスとダイアナは、同じ『3つの(トリプル)王冠クラウン』のメンバーだ。今ここで食事している場所も、グロリアス城の城下町として呼ばれている。そのグロリアスが無一文のような生活をしているのは、彼女にとってはとても不思議だった。


 本来ならば、どちらも同じくらいに財産を持つ事の出来る尊敬するべき人物達なのだ。それが一方は、一国を作り出すほどの大金持ち。もう一方は、お金を他人に恵んでもらわなければ生活さえも出来ないのだ。


「お金の管理って、思った以上に大事なんだな。私も、ダイアナ様並みとは行かないまでも、人並みに生活できるようにはしたい! せめて、人様に迷惑をかけないくらいには……」


「ふーん、頑張ってね!」


 私は、まるで人ごとのようにそう言った。オモチャは、女の子用と男の子用の2種類から選べるようになっていた。私は、グロリアスと一緒に良く遊ぶオモチャを選択する。カステラも同じオモチャを買っていた。ちょっと興味が湧いたらしい。


「わー、オリジナルのベイブレードだ! どんなギミックを持っているか楽しみ!」


 カステラは、貰ったベイブレードを確認する。手に取って、マジマジと見ていた。


「これは、まさか……。魔法技術マジックスキルを吸収して、自分のオリジナルギミックにする特殊加工がされている。きっと、これで魔法技術マジックスキルを発現させて戦わせるんじゃ無いのかな?


 おそらく、グロリアスさんはその事も考えて、ローレンとベイブレードで戦っていたのかもしれない。子供なら興味も持つし、熱中する子も出てくるかもね。魔法技術マジックスキルを発現させる事と賢者能力アビリティーの強化にも役に立つはず……」


 私は、彼女が興味を持った事に気が付いた。そして、ベイブレードを持ってこう宣言する。


「私と、バトルしてみる?」


 彼女は、ゴクリと喉を鳴らした。自分の魔法技術マジックスキルによる戦いと、私の魔法技術マジックスキル同士の戦いが気になったようだ。食事が出て来るまでには、多少時間がある。ベイブレードでバトルするフィールドも準備されていた。


「お願いします!」


 カステラは、ベイブレードを構えてシュート準備していた。


「3(スリー)、2(ツー)、1(ワン)、GOゴーシュート、えい!」


 私は彼女よりも先にシュートしていた。ベイブレードは高速で回転して、宙をちょっと浮いていた。まるで積乱雲のように雷を放出して、高速で移動していた。こんなギミックは初めてで興奮していた。


「うおおおおお、凄い! これならグロリアスにも勝てるかも!」


「くっ、ちょっと浮いてるし、回転数もあり得ないぐらい強い。こんなコマと勝負しなきゃなんないのか……」


 彼女は動揺しながらも、なんとか遅れてシュートをする。フィールドの上に高速で回転するコマが打ち出された。コマは姿を変えずに、そのままの状態で何のギミックもない。どうやら彼女がどうやって戦えば良いのかも分かっていないからだろう。


「くっ、全然次元が違う! こんなの、素人でも一目で分かる。勝てるわけないよ……」


 コマ同士が軽く触れただけで、彼女のコマが吹っ飛ばされていた。何のギミックもないコマでは、私のコマには争う事さえも不可能だった。私は、圧倒的な実力の前に呆気にとられていた。グロリアスとの戦いでは、弄ばれていただけにちょっと嬉しい。


「やったー、初めて勝った!」


「え、初めて、勝った?」


 カステラもビックリして驚いていた。私の恐るべき実力の割には、初めて勝ったという事実に驚いていたようだ。ベイブレードの戦いは一時中断して、出てきた食事を食べる事にした。


 出て来たのは、普通のパンとシチュー、サラダ、プリンというメニューだった。子供が喜ぶようなセットメニューだった。これならお子様ランチと大差がない。私は、貪るように一気に食事を食べ始めた。


 もう、自分がお淑やかに食べようとしていた事などすっかり忘れている。反対に、カステラはゆっくりと考えながら食物を口に運ぶ。優雅な食べ方ではあるが、心はどこか別のことを考えているようだった。


(くう、手も足も出なかった。なぜだ……、魔法技術マジックスキルでは負けていないくらいのはずなのに、なぜアッサリ負けたんだ。ローレンに勝てないまでも、互角に戦えないようでは、ダイアナ様の弟子として申し訳が立たない……)


 彼女は、私を睨み付けるように見て来た。さっきまでは自分の方がお姉さん風を吹かせていただけに、自分の魔法技術マジックスキルが私にボロ負けした理由を真剣に考えていたようだ。彼女は、負けず嫌いらしい。


「どったの?」


 私は、彼女の表情から変化を気付く事は無かったが、食事を食べるスピードが遅いので彼女が調子が悪い事に気が付いた。パンを口に含みながら、彼女に問いかける。すると、ゆっくりと不安げな答えが返って来た。


「ねえ、このベイブレードには、どんなタイプの種類があるの?」


「え、攻撃型と防御型、持久型とバランス型になってるよ。どれが強いかは分からないけど……」


「ふーん、持久型に得意なタイプとかは分かるの?」


「確か、持久型に有利なのは、攻撃型のはずだよ。もちろん、絶対にそっちが強いとは限らないけど……」


「そっか……」


 カステラは、ベイブレードを触っていた。すると、さっきまでとは違う形に変化する。彼女の魔法技術マジックスキルは、どんな生物にも変化できる能力を持っている。その能力がコマに変化を与えていたようだ。


 次は、どうやら互角の勝負ができるらしい。私は、そんな事とはつゆ知らず、食事を堪能していた。

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