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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第3章 『闇の(ダーク)道化師(クラウン)』との死闘
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第57話 グロリアスVSアリッサ

「クッソ、どうして俺の防御しようとする場所が分かるんだ? まずは、それを知らなければ、回避する術さえもない」


「ふふ、ようやく頭が回るようになってきましたかね?」


 アリッサは、グロリアスの変わろうとする部分ではなく、変わっていない生身の部分を攻撃する。まるで、お手本を見せているかのように、彼には防御する事ができない。


「最強の盾を持っているあなたも、防ごうとする場所が分かっているのなら、逆を突いてやれば良いだけの事ですよ。これじゃあ、私の圧勝ですかね?」


「痛、なんて奴だよ、お前は……」


 アリッサの攻撃が緩む事はない。彼が怪我しない場所を狙ってダメージを与えているのだ。彼の受けた場所は、無数の赤いあざになっていた。彼は死ぬ事はないが、痛みを堪えて顔を歪めていた。


「なるほど、防御だけでは止める事ができない。ならば、攻撃を加えてみるしかないな……」


「愚かですね。動きが明らかになれば、よりあなたの弱点を攻撃する事がし易くなります。動きのない部分を攻撃すれば良いだけの事ですからね。まさに、格好の的といったところですよ!」


「ぐわあああああああああ……」


「とことん容赦する気はありません!」


 アリッサは、彼の動かない部分を攻撃していた。ひざうで、足などをピンポイントで撃ち抜く。腕や手が鉄のように硬化しているが、全てを完全に硬化させるには、わずかな時間が必要となる。そのわずかな時間が命取りとなっていた。


「くう、攻撃を当てるよりも前にダメージを与えられて、結局生身の体に戻されてしまう。俺が間合いに近付くことも出来ぬとは……」


「ふん、決死の特攻で相打ち覚悟のつもりだったのでしょうが、私の目にはあなたの動きが全て分かっています。動きを制御すれば、素早い動きも意味はありません。完全に私の掌の上で踊っている状況になるのです。ゲームオーバーですかね?」


 アリッサは、銃をもう一丁持って構えていた。グロリアスに至近距離から銃を浴びせるつもりのようだ。距離が近くなれば、攻撃力や破壊力が増す。彼はすでにボロボロの状態にも関わらず、更なるダメージを与える気のようだ。彼は、突然不敵に笑う。


「ふっふっふ……」


「私のようなか弱い女の子に手も足も出せず、気がふれましたか? 一時期は、無敵の賢者と呼ばれていたようですが、今では私にすら勝てないレベルです。自信喪失と絶望感を感じているのは理解できますよ」


「いやいや、お前がなぜ俺の攻撃も防御も掻い潜り、ピンポイントで生身の体にダメージを与えられるかが分かったのさ。決死の特攻も無駄ではなかった。俺自身が意識して動いたことで、体を武器化している場所と攻撃された場所の位置関係がハッキリと理解できたぜ!」


「ほーう、面白い。残り時間は3分です。この短い時間内で、私の攻撃を攻略出来るとでも言うんですか?」


「ああ、出来るさ。まずは、お前が俺の動きを先読みしているのは、筋肉の動きを見ているからだ。水の流れを見れるなら、筋肉の動くを見切るなど容易い事だろう。俺の脳は、どうやら筋肉の動きに合わせて体を硬化させたり、飴に変えたりしているようだ。


 筋肉の動かない部分は、鉄のように硬化しなかったり、水飴のように柔らかくなったりもできないのだろう。お前は、そこを狙って攻撃しているんだ!」


「ふふ、正解ですよ。ですが、それが分かったところで意味はありませんよ? 筋肉といった脳からの指令によって、さまざまな行動を起こす器官では、あなたの意思で自由自在に動かす事はまず不可能です。


 ローレンちゃんのような電気を操る能力ならば、細部に至るまで制御できるかもしれませんが、あなたには動きのない筋肉だけを硬化させるなど不可能な方法でしょう。もう万策尽きましたね。そろそろ終わりにしましょうか?」


「くう、悔しいがその通りだ。俺には、動きのない筋肉を硬化させるような微細な変化はできそうもない」


 アリッサは、じわりじわりとグロリアスを追い詰めていた。攻撃も防御も封じられ、逃げる事さえもできない状況だ。


「やれやれ残り1分ほどです。結局、何の対策もないまま、私の賢者タイムが来てしまいますね。次の賢者タイム終了時に期待といったところでしょうか? 今ここで、打開策が思い浮かばぬようでは、次の期待も無さそうですけどね」


 アリッサは、彼に失望したような冷酷な表情を浮かべる。狙い所が悪ければ、彼に深刻なダメージを与えてしまう可能性も高くなっていた。徐々にだが、彼の急所を攻撃して来ていた。


(くう、その通りだ。いくら攻撃の方法が分かっていても、彼女には俺の行動が全て見透かされているんだ。裏をかくことさえ、彼女の心を読む能力でバレてしまうはず……。万事休すか?)


 彼は、とりあえず対抗策は思い付いていた。しかし、彼女が心を読む能力を使っていたら、裏をかく事など絶対に不可能なのだ。それでも、彼は苦肉の策で作戦を実行に移す。


「これで終わりですよ!」


 アリッサは、彼にトドメの一撃を加えようとしていた。顔面を攻撃する事により、戦闘への恐怖を与えて、彼が戦闘に参加できないようにさせるのが狙いだった。顔は、意識しなければ変え難い部分の1つだ。そこを攻撃して来た。


(何となくだが分かっていた。アリッサは、今心を読む能力は使っていない。おそらくダイアナの超能力コピーは、相当量の集中力を必要とするはずだ。普段使い慣れている能力でさえ、消費を抑えるほどにな。ならば、勝てる!)


 彼女の攻撃は、今までと同じように彼を攻撃していたが、弾は逸れるようにして彼の体から離れていった。全ての銃弾が彼から逸れて、壁や地面にめり込んでいた。彼女にとっては、驚くべき出来事だったようだ。心を読まれていないからこそできた防御だった。


「何、どういう事ですか!?」


「くっくっく、超能力者タイプにはちょっと理解し難いかもな……。俺の体を飴にする魔法技術マジックスキルに、闇属性の力を加えてみたのさ。これにより、俺の賢者能力アビリティーが進化したのさ。


 今の俺の飴には、物質を引きつける重力がプラスされている。もっと本気を出せば、ブラックホールを作り出すことも可能だ。それによって、攻撃を食らう前に弾を誘導させる事に成功したのさ!」


 アリッサは、自然属性の付与に関係する内容を聞き、顔を歪めていた。超能力者タイプは、分析能力などに優れている反面、自然属性を付与してパワーアップするという事が難しいのだ。


 彼女自身も闇魔法や光魔法と言っているが、本当に自然属性を操っているわけではないのだ。真に自然属性を操れるのは、魔術師タイプや錬金術師タイプであり、超能力者タイプには組み合わせるのが不可能な場合が多いのだ。


 その為に、自然属性を組み合わせる事に、怒りと憧れの2つの複雑な感情を抱いているのだ。優秀な賢者であるアリッサやダイアナでさえも例外ではない。


 自らが自然属性を操れる事を夢見て、いろいろな工夫をしているのだ。それでも、自然属性を組み合わせたというほどには強くなっていないのが現状だった。


「ふん、自然属性を組み合わせたですか……。ふざけないでください! そんな攻撃で私の賢者能力アビリティーが破れるとでも思っているんですか?」


 アリッサは、必死で否定しながら攻撃するが、無情にも全ての攻撃はグロリアスには届かない。前方に出現した小型の黒飴によって、攻撃が全て引き寄せられていた。


「くう、銃弾が1発も届かない……」


「悪いな、『黒飴ブラックキャンディー』によって、お前の攻撃は全て俺には届かない。どうやら、俺の方が強くなってしまったようだ。今までは出来なかった闇属性の力を手に入れられるとは……。


 ついでに、風属性も出来るかどうか試させてもらうぜ。台風をイメージさせた白い雲のような飴だ。名付けて、『白飴ホワイトキャンディー』と言ったところかな?」


 グロリアスがそう宣言すると、風の力を纏った白い飴玉が出現した。木の葉がその為に触れると、粉微塵に砕かれる。まるで、削断機のような威力だった。ゆっくりとアリッサの顔面に移動して来る。彼女は微風を感じ始めて泣き出した。


「いやああああああああ、やめて!」


 彼女は、白い飴玉が目の前に来た時、思わず目を瞑ってしまう。恐怖を耐える為に、目を閉じて攻撃が当たるのに耐えようとしていた。当たれば、確実に死んでしまうかもしれないほどの威力だ。


「ありがとうな。俺の為に賢者能力アビリティーの進化を助けてくれて」


 白い飴玉は消滅していた。アリッサをビビらせて、彼女に近付く準備をしていたのだ。優しく抱きしめて、額に優しくキスをする。


「愛するお前を傷付ける事は絶対にしない」


「本当?」


 アリッサは、乙女の顔をして目を開ける。すると、目の前には彼のキスしようとする唇が迫っていた。目の前に何かよく分からない物が迫っていて彼女はビビる。彼の顔がキモいという事だけは理解できたらしい。


「うおおおお、寄るな!」


 アリッサは、彼の顔を思いっきり張り手で叩いていた。賢者タイムになり、もはや六神通の眼力も、心を読む能力も発動しない。その状況で、男の顔が目の目に出現すれば、とりあえず殴られるだろう。


「はあはあはあ、とりあえずお互いに見つめ合ってからでないと、キスはちょっと……。思いっきり叩いてごめんね。ちょっとびっくりしただけだから……」


 グロリアスは、とっさに賢者能力アビリティーを解いていた。鉄となった体を叩かれれば、逆に彼女が傷付いてしまうかもしれない。その為に、グロリアスは生身の体になっていた。叩かれて、ガックシと肩を落とす。


「酷い、せっかく感謝の言葉を述べたのに……」


「いきなり目の前に顔があったから驚いただけよ。まさか、いきなり恋愛モードに突入していたなんて思わないじゃない。でも、賢者タイムに入る前に私の攻撃を防いだ事は事実よ。


 良いわ、自由に戦ってきなさい。その代わり、負けたら承知しないわ! 私が別の男性と恋をしないうちに帰ってきなさいよ。私は、それまで部屋で小説の執筆をして、待っていてあげるから……」


 アリッサは、さっきまで座っていた席に腰を下ろす。隣には、ハンナが勝負を見守っていた。グロリアスも、彼女の後を追うように、自分の席へと着席していた。彼女に、こう語りかける。


「ああ、暗殺者集団の『闇の(ダーク)道化師クラウン』を絶対に倒してみせるぜ!」


 彼女は、優しく笑って答えていた。

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