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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第3章 『闇の(ダーク)道化師(クラウン)』との死闘
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第54話 少年VSダイアナ ゲーム決着!

 カステラは、主人であるはずのダイアナにも意見をするようだ。ダイアナ自身もそれを黙認している。しかし、いきなりゲームのルールを変えられては、勝てる勝負も勝てなくなるのだ。先に、彼女に勝負方式を決定させる必要があるのだ。


「ふう、カステラちゃんがゲームを支配しているわね。これじゃあ、私が勝てると思っていた勝負を、ルールを変更されて、一気に負けてしまうわ。カステラちゃんが私の事を大切に思っているのはありがたいけど、勝負は勝負、他人が横から口出しするのは厳禁なのよ。


 でもまあ、即席のルールだし、変えたい気持ちはわかるけどね。今回は、先に勝負方法をあなたが決めなさい。それなら、誰が勝っても文句はないでしょう?」


「ごめんなさい。少し、度が過ぎました。突然ルールを変更しては、私の思っている人物が勝ってしまうのは当然ですよね。分かりました。先にルールを決めさせてもらいます。ダイアナ様は六神通の眼力を持っておられるので、距離を測る方では確実に勝ってしまいます。


 今回は、少年側の方に1センチの距離を保ってポッキーを食べてもらいます。ダイアナ様は、キスするか、ポッキーが1センチ以上残っていたら勝ちとします。これでよろしいでしょうか?」


 カステラは、勝負が公平になるようにルールを決めていた。しかし、少年は勝利条件が難しくなったことを知って、抗議する。彼はただ、ダイアナとキスすれば勝ちだと思っていたようだ。合理的にキスする事ができなくなり、男の子夢が破られようとしているのだ。


「ええ、そんなルールじゃあ、僕とダイアナさんがキスできないじゃないか! 大人の魅力あるキスをしてみたいのに……」


「童貞にいきなり人妻は危険なように、君にもダイアナさんは危険だと思うよ。確かに、キスしたいという気持ちは分からんではないけど……」


 カステラは、論理的に彼を諭す。ダイアナならば、相手の最も弱い急所を突いて、濃厚で忘れられないキスさえできるだろう。彼を生涯奴隷にするくらいのテクニックさえも有しているのだ。キマイラ軍団ならばそれでも良いが、未来ある若者には害にさえなりかねない。


 カステラの思い遣りある忠告を聞いても、彼の心は変わらなかった。どうやらカステラのキスによって美女の味を知ってしまい、極上の美女さえも味わってみようという好奇心が強いようだ。強過ぎる好奇心は、時に若者を堕落の道へと誘ってしまうから注意しよう。


「じゃあ、お姉さんに勝ったら、ご褒美としてキスしてあげるよ」


 ダイアナは、そう言って唇を妖艶に触る。ピンク色のぷるんとした唇が、少年を誘惑していた。勝っても負けてもキスできるという事で、少年は納得する。


 しかし、カステラの言うことも最もだった。極上にキスを覚えて仕舞えば、他の女の子とのキスが退屈な物になってしまう可能性がある。まさか、ダイアナは彼を虜にするつもりなのだろうか?


「ふう、カステラちゃんのルールのせいで、とんだ大勝負になってしまったわ。本当ならば、私がキスして終了する予定だったんだけど……。


 さすがに、2、3日も一緒にいれば、私の性格ぐらいは把握できたわけか。カステラちゃんが成長していて嬉しいわ。


 まあ、そういうわけなんで、あなたも真面目にポッキーゲームを楽しみましょう。ゆっくりかじっていけば、優しい私が合図しちゃうかもしれないわよ?」


「ごくり、頑張ります!」


 少年は、生唾なまつばを飲んで本気になった。あまり認めたくはないが、女子力ではダイアナが圧倒的に私達よりも上なのだ。いくら40歳だとはいえ、肌質や肉体年齢は、六神通の眼力によって最善の状態に保たれている。


 見た目は、20歳くらいの美しい女性なのだ。美しい美人の教師に惚れるように、少年の初恋は彼女に奪われてしまった。それが更に、キスもできるほどの至近距離で顔を近付けているのだ。


 失神してもおかしくないほどのシチュエーションにも関わらず、少年は新しく目覚めたエロパワーよって、なんとか理性を保っていた。このゲームを制すれば、正式に彼女と濃厚なキスができるのだ。絶対に勝負を捨てるわけにはいかない。


 少年は、そう思ってポッキーを咥えるが、ダイアナの香りを嗅いで喘いでいた。「うおおお、とても良い香りだよ」と言って、私の方を見る。ダイアナは、「なるほど、ローレンちゃんのボーイッシュな姿を見て、私の色香を相殺するとは……。やるわね!」と言う。


 私としては、もう勝敗などどうでも良い戦いだったが、一応最後まで見守る事にした。2人の勝負を見ているより、それを見てやきもきしているカステラが可愛いと感じる。少年とダイアナがポッキーを咥え合い、勝負がスタートした。


「ふー、どう私の吐息は?」


「ぐわあああ、なんて攻撃力だ。一瞬よろめきそうになった。でも、こんな所で倒れるわけにはいかないんだ。僕は、必ずあなたに勝って、あなたの味を直接確認する。大人の階段を一気に駆け上がるんだ!」


「あらあら、キスだけでは済まないような予感。チェリーを食べるのも好みではあるけど、さすがに先約がいるのよね。それは、またの機会にしましょうか。カステラちゃんとロバートが真剣に見つめているし……」


「うおおお、僕は勝つ、僕は勝つ、僕は勝つ!」


 少年は、徐々にポッキーを食べて行き、ゆっくりとダイアナの方に顔を近づけていた。吐息のかかる距離にまで行っても、彼のダイアナに対する思いによって、なんとか理性を保っている。彼自身が、魔法技術マジックスキルを会得しようとしていた。


「この子、自力で私と互角に戦える魔法技術マジックスキルを開発した!?」


「分かる、分かるぞ! 僕の鼻とダイアナさんの鼻がぶつかった瞬間がおよそ2センチの距離になる。そして、2人の鼻が頰に触れた瞬間が1センチとなるんだ。距離さえ測れれば、僕の勝利だ!」


 ポキっという音と共に、少年はポッキーを噛み切って、ダイアナから離れる。彼女の口には、ジャスト1センチの距離を残したポッキーが咥えられていた。


 彼女は、元々少年に勝利を与えてやるつもりだったが、彼が魔法技術マジックスキルを修得したことによって、一切不正のない公平な勝負となっていた。


 残りのポッキーを口に含み、自分が敗北した事を悟る。笑顔で彼の勝利を称えていた。口に付いたチョコを拭い、指先に付いたチョコを舐め取る。


「ふふん、負けちゃったわ。どうやら、君は『超嗅覚』の持ち主ね。匂いに敏感な人は、別の部屋の匂いでさえ分かるという。壁越しで目に見えなくても、物の位置や距離などが分かるというわ。超能力者タイプで、私と同じ感知タイプのようね。


 どんな風に発展するかは、まだ分からないけれど、鍛えようによっては強力な武器になるわ。鼻を、大切にして、いろいろな物の匂いを嗅ぐ事をお勧めするわ。では、ご褒美よ♡」


 ダイアナは、少年の顔に自分の顔を近付けていく。どうやらキスのご褒美を済ますつもりのようだ。ベテラン執事のロバートは平然としているが、見習い執事のカステラは目を背けていた。クチュクチュという妖艶な音が部屋の中でしていた。


 どうやら少年が魔法技術マジックスキルを持った事で、ダイアナも容赦無しに誘惑して来たようだ。キスで虜にして、いずれは自分の手足とするつもりなのだろう。10歳の子供には刺激の強い攻撃が繰り返しなされていた。


「ふー、ご馳走さま。私の事が忘れられなかったら、賢者協会へいらっしゃい。優しく丁寧に、賢者能力アビリティー)を教えてあげるわ。強力な賢者になれば、度々私と出会う機会も増えるわよ?」


 少年は、腰が抜けて地面に座り込んでいた。顔は幸福を存分に味わったような顔をしており、ダイアナの唾液と混ざったヨダレが口から流れていた。目は虚になり、まだ味わうには早過ぎる刺激を受けた事がわかる。


「ふぁい、必ずダイアナ様を見つけて、賢者となってみせます」


 彼が意識を取り戻すまで、30分ほどの時間を必要としていた。口の中の気持ちの良い部分を、彼女の舌で弄ばれたのだ。仮に、私やカステラがキスしたとしても、彼にこれほどの喜びを与える事は不可能であろう。


「大丈夫?」


 私は、彼の陥った状況が理解できず、しばらく病気だと思って解放していた。なんとか正気の目に戻り、意識を回復しつつある。10分ほどは心配していたが、残りの20分ほどは飽きてカステラちゃんと遊んでいた。

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