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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第3章 『闇の(ダーク)道化師(クラウン)』との死闘
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第52話 長距離列車の旅へ

主人公ローレンの視点に戻ります。

 私ことローレン・エヴァンズは、師匠のグロリアスとその恋人アリッサ、親友のハンナと共に列車に乗って、護衛の任務と修行の旅に出かけます。4人で切符を買い、列車に乗り込む。出発までは、後20分ほど止まっている。私とハンナは列車の自由席に座り、オヤツを出しながら、はしゃいで喋っていた。


「じゃーん、ポッキーを買って来たんだよ! ビターに、イチゴ味、オリジナル、何でもあるよ?」


「悪くないわね。私は、駄菓子を大量に買って来たわ! タラタラしてんじゃないよ!に、パチパチ君とか……」


「わあ、美味しそう!」


 ハンナは、道端で偶然見かけた黒猫を抱いている。人懐っこく、彼女に懐いているようだ。自分から近付いて来て、彼女の膝の上に座る。時々オッパイの間に顔を埋めては、ゴロゴロと喉を鳴らして気持ち良さそうにしていた。


 猫が大人しい為、彼女も一緒に列車に乗せていた。その猫は何を隠そう、変身したジャックだった。彼女の身を守るために、黒猫に変化して警護しているのだ。決して、エロ目的だけで近付いてきたわけではない。


「この猫、完全にハンナちゃんに懐いてるね」


「そうね、超可愛い♡ よし、私の髪留め用のゴムを首輪代わりにしてあげるわ。結構伸びるから、枝に引っかかった場合でも伸びるでしょう!」


「おお、黒にはやっぱり赤が似合うね。すっごい可愛い!」


 私達が黒猫と戯れていると、グロリアスが私に話しかけて来た。


「ローレン、お前の切符を見せてみろ! 場所を間違えて買っていても困るからな。今なら、間違っていても替えに行く時間はあるはずだ」


「うん、これだけど……」


「これは、場所がちょっと違うな。目的の場所までは合っているが、俺たちはいくつか駅を経由して回る。暗殺者を撹乱するためだ。この切符だと、1人だけ先に目的の場所まで付いてしまって、1人だけつまらない思いをする事になるぞ!」


「ええ、そんな……」


「今すぐに替えてもらってこい!」


「うん、分かった!」


 私は、切符を替えてもらうために、電車を降りて切符売り場に向かう。実は、切符は途中下車が不可能なタイプだったのだ。他の人達は、途中下車をするのが可能なタイプだったが、私1人だけ目的地のみで買ったので間違えていたようだ。


「もう電車に乗る前に確認してあげれば良いのに……」


 アリッサは、グロリアスの隣に座り、彼大して怒っていた。しかし、グロリアスには別に計画があったようだ。彼女にこう返す。


「ローレンにはダイアナと一緒に行動してもらった方が良いと思ってな……。あいつの賢者能力(アビリティー)はケタ違いに強いし、俺では制御する事ができない。


 その点、ダイアナならば、ローレンの動きを常に監視する事ができる。キマイラ軍団もいるしな。


 俺たちと一緒にいるよりか、安全だろう。それに、ダイアナは医療特化型だ。ローレンには、医療技術も学ばせてやりたい。


 もしも、ローレンが男だったなら、賢者能力アビリティーの制御にかなりの時間を費やすだろうが、女の子だから戦闘能力も医療技術も含めた事を幅広く学ばせてやりたい。彼女自身もいずれはそう思うだろう」


「ローレンちゃんは、魔術師タイプ。一般的に、攻撃力だけなら錬金術師タイプや超能力者タイプよりも上と言われている。攻撃力と攻撃方法が幅広い反面、暴走して、怪我を負い易いタイプでもあるわ。それに、他人を傷付ける事も……」


「ああ、医療技術を学んでおけば、もしかしたら医療技術の分野でも才能が開花されるかもしれない。男の子は、暴走して周囲を攻撃する危険もあるが、女の子は、そこまで危険はない。攻撃力の高さに不安を覚えて、なかなか攻撃する事ができなくなる事が多い」


「確かに、先に医療技術を学んでおけば、細かい技術も習得し易いかもしれないわね。緻密な作業も多いから、力を調整しやすくなるかもしれないし……」


「まあ、そういう事だ。遠回りに見える道が、実は近道という事もあるわけだ」


「弟子のためにそんなに考えているなんて、ちょっと焼けちゃうな……」


 アリッサは、グロリアスが私のことを真剣に考えていたので、ちょっと嫉妬していた。私が男の子ならば、嫉妬する事もなかったが、私が女の子なので不安になる。彼の恋人になったと言っても、そこまでの進呈も無かったからだ。


「はあ、ローレンちゃんに嫉妬するなんて、どうかしてるわ……」


「うん、どうした?」


「別に!」


 グロリアスが覚悟を決めれば、アリッサが悩む必要もないが、彼にはまだ私を賢者として成長させるという目標があるのだ。それを達成するまでは、2人の結婚も延期される事だろう。後、数年はかかるのだ。


 ------------


 私は、切符を替えてもらうために、切符売り場に並んでいた。さっきまでは空いていたのに、今は驚くほど混み合っていた。私は、電車に乗り遅れないかと焦り始める。私の前だけでも20人は並んでいるのだ。


「えー、凄い人! こんなに混んでちゃあ、間に合わないかも……。うー、どうしよう!?」


「うん、ローレンちゃん?」


 私は後ろから声をかけられて、思わず振り向く。振り向いた先には、キマイラの軍団が集団で移動していた。黒いスーツを着た男性や、ビジネス服を着た可愛い女の子などが100人くらいはいるだろう。


 そんな軍団の中にいても、不思議な事に中心にいるダイアナと目が合う。彼女は、高級なビジネス服に身を包み、軽くコートを羽織っていた。黒いパンプスを履いて、カッカッカと歩いている。訓練された軍団の中にいても、彼女の行動はズバ抜けてカッコ良かった。


「あの子のところまで、道を開けなさい」


「かしこまりました!」


 かつて、モーセが海を分けたように、ダイアナの命令で黒服を着た軍団が綺麗に2つに分かれていた。私まで行ける道をポッカリと作り出し、なおかつ警備は怠っていない。この軍団の連携力の高さを示していた。彼女の命令があれば、どんな事でも聞くのだ。


「ローレンちゃん、どうしたの?」


「実は、切符を間違えて買ってしまって……。目的地のサントスまで直接行く切符を買ったんですけど、他の人達は色々経由していくみたいだから替えてもらおうかと……」


「なるほど、グロリアスにしてやられたわね。それは、あなたの面倒を私に見させる為の口実よ。本当ならば、切符を買った時点で確認するものだからね。でも、敢えて彼の計画に乗ってあげるわ。あなたは、彼に会ったら、1発重いのをくれてやりなさい!」


「うん?」


 私は、良く分かっていなかった。分からないけど、笑顔で誤魔化す。


「ふー、ローレンちゃん、良かったらダイアナお姉さんと一緒に行く? 私と一緒なら、顔パスで電車に乗れるからね」


「え、本当? 凄い! 一緒に付いていきます!」


「その代わり、ちょっとした雑用を手伝ってもらうけどね。丁度、同い年のカステラちゃんもいるし、仲良くしてあげてね!」


「うん、良いよ。よろしくね!」


 カステラとは、キマイラの新人で、姿形は変わっているが、かつては私を襲って恐怖を感じさせた人物だ。今では、ダイアナの調教によって、可愛い黒髪ロングヘアーの美少女に生まれ変わっていた。見た目だけなら、私と同じ年齢に見える。


 彼女は、私の満面な笑顔につられてハニカミながら笑う。目を合わせると、恥ずかしそうに目を背けて、「よろしく」と答えていた。ちょっと不安があるけど、仲良くなれるだろう。

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