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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第2章 『3つの(トリプル)王冠(クラウン)』の絆(きずな)
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第44話 ダイアナVSグロリアス

 ダイアナは、グロリアスと戦闘する気のようだ。右足の太ももに設置されているホルスターから、小型のナイフを取り出していた。さながら忍者のような装備方式だ。しかし、通常の武器では、グロリアスに傷1つ付ける事は出来ない。


 それでも、着替えてきた赤い上下の水着と武器のセットがマッチしていて、私に興奮を誘う。攻撃スタイルとしては取り入れたいほどの魅力だった。大半の男性ならば、あの姿だけで悩殺される脅威と隣り合わせなのだ。


「おお、セクシーでカッコイイ! でも、ナイフを武器にするとか、賢者としては弱くない?」


 私の言葉に、アリッサさんが答える。彼女も自分とダイアナを見比べて、戦闘スキルを吸収しようとしていた。味方で知り合い同士とはいえ、最上級レベルの賢者同士の対決だ。いろいろ得られる物があるのだろう。


「あれは、医療用のメスよ! 鋭くて丈夫で、人体ならスパスパ切れるほど鋭利だわ。あの武器を見る限り、ダイアナは医療に特化した『医療特化型』の賢者のようね。


 賢者能力アビリティーとしては、攻撃力も防御力も一歩劣るから、グロリアスを相手にどうやって戦う気かしら? これは、ちょっと見ものかもね……」


「『医療特化型』、なにそれ!?」


「集団になって行動する場合に、いろいろ得意な役割分野を決めておくのよ。基本は5人一組で戦うスタイルが有効なのよ。前線に出て戦う『接近戦型』や『中距離型』。後方支援をする『遠距離攻撃型』、後ろで傷付いた仲間を助ける『医療特化型』。


 最後に、なんでもできる『全能オールマイティー型』。まあ、最後の『全能オールマイティー型』は、数合わせになってしまって、『無能(何にもできない)型』になる場合がほとんどだけどね。


 私とハンナちゃんは、『接近戦型』。グロリアスは、『中距離型』。ジャックは、『全能オールマイティー型』だったかな。


 だから、『医療特化型』のダイアナでは、本来ならばグロリアスと戦うのはご法度なのよ。攻撃が届かない安全な場所で、みんなをサポートするのが本職だから……」


「なるほど。私は、どんなタイプなのかな?」


「うーん、今のところは『無能(何にもできない)型』かな?」


 アリッサは、私に気を使う事なくそう言った。極たまにだが、賢者タイムに入って酷い言葉を発する時がある。人を傷付ける闇魔法でも使っているのかもしれないが……。私は軽く落ち込んでいた。


「そうですか……」


「ああ、お喋りはここまで! 始めるわよ!」


 アリッサに促され、私はグロリアスとダイアナに注目する。私としては、自分の師匠でもあるグロリアスには負けて欲しくなかった。


 ダイアナは魅力的で美人だとは思うが、賢者としては微妙に感じられた。やはり魔法のような賢者能力アビリティーを駆使してこそ、一流の賢者として尊敬できる。


 ダイアナは、グロリアスに向かって医療用のメスを投げ付ける。はっきり言って勝負にすらならないと思っていた。グロリアスは、体を鉄のように硬くする事ができる。


 本気を出せば、ダイヤモンドの硬さと鉄の硬さを合わせた『幻の物質オリハルコン』さえも精製可能なのだ。攻撃力、防御力共に、グロリアスの方が圧倒的に強かった。しかし、私の予想とは相反する光景が起こっていた。


「ぐわああああああ……、馬鹿な……」


 彼は体を水飴に変えて、攻撃をすり抜けようとするが、防御できていない。体がスパッと切られてから、遅れて体が水飴に変わっていた。それでは、元々あった傷という認識になり、体を修復するには意識して回復する必要がある。


 意識して体を回復するには、かなりの疲労を伴うのだ。傷を受けた状態では、すぐに賢者タイムが来てしまうだろう。傷を治さないで戦うという選択肢もあるが、傷は大きくかなり痛い! それに、血も流れ始めていた。


「俺が攻撃されて、傷を受けた?」


「ふふ、私の攻撃ぐらい、体を水飴にすれば避けられると思った? 体が変化する時に、わずかに変わる場所に差があるのよ。自分は気付いていないでしょうけど、変化にもムラがあるし、どこを守ろうとしてるかもモロバレよ。私の六神通の眼力の前ではね!」


 ダイアナが攻撃を止めた事により、グロリアスの傷が回復していった。流れた血は回収できないが、水飴にする能力を応用する事で修復していた。それでも、精神的に受けた傷は、体で受けた傷よりも重い。


 彼の自慢の防御法が、通常武器のダイアナに勝てなかったのだ。長期戦になれば、どちらが勝つかは予測できないが、今の戦いぶりではダイアナが勝利を収めていた事だろう。メスによる連続攻撃を受け続ければ、彼の方が先に賢者タイムになってしまう。


「オスは、メスに勝てないようだな……」


「つまらん!」


 グロリアスのギャグにより、一度止まった攻撃が再び繰り出される。正確無比なメスの弾丸により、彼は更にダメージを受けていた。


「くう、強い……」


「ふん、このくらいで許してあげるわ。私を振った事+屋内温水プールの破壊+くだらないギャグへの制裁よ! ジャックは、今回は許してあげるわ。グロリアスに協力しただけのようだしね」


「ぐう、これが六神通の眼力か……。俺が絶対に攻撃を受けない黄金パターンを、あっさりと打ち破りやがった。自信を無くしかけたぜ……」


「ふふ、あなたの伸び代を示してあげただけよ。あなたの体を飴に変える能力は、自然属性を組み合わせる事で最高度の硬さを手に入れた。そこは強力だけど、体の変化にまでは注意が回らなかったみたいね。


 私の攻撃が決まったのは、あくまでも体が水飴に変化する瞬間なのよ。もしも、全身を水飴に変えていたら、私のメスでは対抗できなかったわ。体を硬くしていたとしても結果は変わらないわね。体を変えるという変化が必要な時だけ攻撃できる数少ない方法よ」


「なるほどな。大抵の賢者が、自分の魔法活動時間を長くしようと、体の一部分だけを変化させる。逆に言えば、変化にムラや癖が出て、わずかに隙が生じるという事か。なんらかの対策を取る事によって、さらに防御力が上がるというわけか」


「ええ、そういう事よ。あなたと私が戦えば、数時間でその弱点を克服できるでしょう。ローレンちゃんとハンナちゃんを訓練する合間に、息抜きと暇潰しで付き合ってあげるわ。SMプレイでもすれば、あなたも気が紛れるでしょう?」


「くっくっく、別にドMでもないが、よろしく頼むぜ!」


 ダイアナは、アリッサの方を見る。彼女の進化した賢者能力アビリティーならば、ダイアナがいなくても、その訓練ができるかもしれないのだ。忙しい身の彼女には、自分の代わりに訓練をしてくれるような相棒を探していた。


(ふふ、アリッサさんの目付きがちょっと違うわね。今の戦闘で、グロリアスを傷付ける技を覚えたかしら? それなら、私の仕事が1つ減って助かるんだけどね……)


 ダイアナは、おもむろにアリッサに向かってメスを投げ付けた。グロリアスですら避けられなかった攻撃だ。メス一本とはいえ、生身の体のアリッサには危険な攻撃だった。急所に当たれば、致命傷になりかねない。


「なんの遊びですか?」


 アリッサは、あっさりとダイアナのメス攻撃を、指2本で受け止めていた。ダイアナは、敢えて彼女の最も防御力の低いところを攻撃してみたが、彼女はそれを防いでいた。


「いや、あなたもグロリアスに攻撃したいんじゃないかと思ってね。私とグロリアスとの会話に、混ざりたいという顔をしていたわよ?」


「ふん!」


 アリッサは、グロリアスに向けてメスを投げる。ダイアナの攻撃同様に、彼女の攻撃もグロリアスを傷付けていた。スパッと切られて、赤い血が流れ落ちる。グロリアスは体を水飴に変えようとしていたが、やはり傷付けられていた。


(ふふ、傷付けられる場所は覚えたみたいね。所詮は、グロリアスを攻撃して傷付けられる場所を覚えたに過ぎないけれど、彼がコツを掴むのには役に立ちそう。頑張ってね、アリッサさん!)


「ふん、グロリアスの恋人になったから、彼に協力するのは当然だし……」


 アリッサはなぜか、ヤンキーみたいな口調をしていた。ツンデレになろうとしていたようだが、なったのはヤンデレ(ヤンキーデレデレの略)だった。まあ、金髪美女だから意外と似合っていたが……。


 ダイアナは、私達を見て真剣な顔をする。言おうか悩んでいるようだが、覚悟を決めたようだ。今度行く訓練合宿の、本当の目的を話し始めた。実は、私とハンナの訓練だけが目的というわけではないようだ。


「早い段階で告げておくわ。実は、賢者協会では不審な暗殺が続いているのよ。犯人の名前は、『闇の道化師ダーククラウン』。私達に対抗意識を燃やして、その名を名乗っているみたい。


 奴らのターゲットは、賢者協会の社長よ。奴らは一癖も二癖もある凄腕の暗殺者集団だから、こっちも油断できないのよ。しばらく、ひっそりとした別荘で生活した方が良いというわけ。なんとか暗殺を阻止しないと……」


「なるほど、お前も訓練に格好を付けて、俺達に依頼をさせる気だったんだな。だが、賢者協会の社長なんてお飾りだぜ。本当の狙いは、お前じゃないのか?」


「そうかもしれない。でも、社長を傷付けられるのは、私も困るのよ。大切なスポンサー(金づる)だからね。生きて、もっともっと稼いで貰わないと……。私の影武者にした意味もなくなるじゃない!」


「社長を誘惑しておいて、結婚も愛人にならないお前も酷いけどなぁ。可愛い護衛の女の子が欲しいって要求もことごとく阻止しているみたいじゃないか。そろそろ良い歳なのに……」


「いずれは結婚相手を探してあげるわよ。私にお金を貢いでくれる分にはね。暗殺者のデーターや旅行計画の詳細は、パソコンのメールで送るから確認しておいてね」


「ダイアナ妃がそこまで計画的に行動するという事は、相当ヤバイ敵のようだな」


「後、グロリアスとジャックは、自腹で旅行について来なさいよ。正式な依頼だから、屋内温水プールの修繕費を払ってあげる。前金で1億円、成功報酬で1億円の計算よ。暗殺者から私と社長を守れば、事実上チャラにしてあげる」


「くう、足元を見やがって……」


 こうして、私の訓練旅行が計画されていた。今のホテルにもう一泊して、ダイアナの仕事が終わって自由フリーになるのを待つ。


 彼女のスケジュールは多忙だが、1日あればなんとか間に合うという。その間に、私達は遊園地を楽しむ事ができる。2日後の朝に訓練旅行へ旅立つのだ。

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