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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第2章 『3つの(トリプル)王冠(クラウン)』の絆(きずな)
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第43話 計画された爆発事故

 私は、背後から来る得体の知れない恐怖によってお漏らししてしまった。多分、今まで会った中では、一番怖い人物であろう。口調も変わり、態度も豹変している。今にも暗殺されそうな雰囲気だった。


「おい! 私の屋内温水プールを破壊しておいて、和やかに話しているんじゃねえよ! 当然、修繕費は師匠のあんたらが出してくれるのよね?」


「ひえええええ、化け物! いや、ダイアナ妃様でしたか。お美しい顔が、般若のようですよ? ほら、笑って、いつもの美しい笑顔を見せてくださいよ!」


 グロリアスは、ダイアナの頰に触れようとする。そこは、触ってはいけない竜の逆鱗となっていた。今、この状況で彼女に不用意に触るなど、殺してくれと言っているようなものだ。

 案の定止められ、関節技で締め上げられていた。恐るべき早業だ。


「お前らのせいで悲しんでいるんだろうが! せめて、申し訳なくて顔も合わせられないくらいの態度でいろ。和やかムードで反省の色なしとか、より私の殺意を増幅させるんだよ。

 振られた直後に、私の私物を破壊するとか、お前らの頭はイカれてんのか?」


「いや、俺達がやったという証拠はないしな……。たまたま事故現場に居合わせたのが俺達だったというだけで、そんな濡れ衣を着せられては困る。


 俺達だって、一歩間違えば、ダイアナ妃の設備不良のせいで死んでいたかもしれないしな。名誉毀損罪めいよきそんざいで慰謝料を払って貰いたいくらいですよ!」


「グロリアス、この野郎! 私の六神通の眼力を舐めているのかしら? なんなら、このローレンという娘を取り調べて、賢者能力アビリティーを分析して、彼女がこの災害を引き起こした事を証明しようかしら?


 幸い、死者や怪我人は出ていないけど、言い逃れはできない状況よ。師匠としての監督不行き届きと器物損壊罪きぶつそんかいざいで、グロリアスとジャックの2人に2億の損害賠償そんがいばいしょう)を請求するわ。どちらがお金を多めに払うかは、2人で決めてください!」


 グロリアスとジャックは、急に下手に出る。2億というリアルな数字を請求されては、彼らもどうする事ができない。アニメのDVD鑑賞やゲーム機器の買取によって、彼らの貯金はほぼ0だった。土下座をして、彼女の機嫌を取り始めた。


「「申し訳ありませんでした!」」


 真剣に謝る2人を見て、私は理解し始めていた。彼らの言っているように、私が屋内温水プールを爆破してしまったのだ。涙目になり、ダイアナに尋ねる。未だに信じる事ができなかった。


「本当に、私がプールを壊したんですか?」


 私は、震えながらダイアナの答えを待っていた。下手をしたら、親友のハンナちゃんの命を奪っていたかもしれないのだ。あまりの恐怖に身震いしていた。


 ダイアナは、私と話をするために表情を和らげる。恐怖は薄らぎ、教師のような彼女が話し始めた。


「信じられないかもしれないけど、本当の事よ。あなたの賢者能力アビリティーが暴走した事によって、あなたの命とハンナちゃんの命が危険に曝されたわ。修繕費は全額グロリアス達に払わせるけど、あなたも自由放免というわけにはいかないわ。


 このまま野放しにすれば、更に多くの悲劇が生まれてしまう事でしょうね。屋内温水プールが爆発したくらいならまだ良いけど、今度は人が死ぬかもしれない。爆弾を持ち歩いている女の子が、制御もできずに歩いているような物ですもの。


 あなたを自由に出歩かせるには、最低限『賢者能力アビリティーを制御できるまでに成長する事よ。それまでは、グロリアスとジャックの監視下に置かせて、自由は無いものと思ってね」


「そんな……」


「まあ、そんなにガッカリしなくても良いわよ。私とあなた、グロリアスとジャック、アリッサさんとハンナちゃんの6人で、数ヶ月の旅行に出かけるような物だから。あなたとハンナちゃん、アリッサさんの旅行費は、私が出してあげるわ。


 こう見えても、私、世界有数のお金持ちなのよ。その代わり、将来の投資だとおもって、厳しく訓練しますからね。私は軍隊を育てる鬼教官とも呼ばれているから、覚悟しておいてね!」


 彼女は、ドSっぽい笑顔で私を睨み付ける。私は、緊張して変な返事をしてしまった。


「ふぁい……、頑張ります……」


「はいは、一回で短く切れ。大きい声でハキハキと挨拶するんだ! 子供のあなたには得意分野だろうが!」


「ひえええ、ごめんなさい!」


 歩く人間爆弾の私には、彼女の言葉を拒否する権限などないのだ。大人しく、彼女の指示に従う。ダイアナは、多忙の身であった。


 プールの修繕も早めに業者を雇って修復しなければいけないし、旅行の準備も早めに済ませなければいけない。電話1つで、部下達がいろいろと仕事をしてくれるらしい。しばらく電話に集中していて、私達に構っている暇はない。


「ごめんなさい、5分ほど待ってくれる?」


 ダイアナが1人で場所を移動すると、グロリアスとジャックが私に話しかけてきた。私が相当落ち込んでいる事を心配しているらしい。お金を払うはずの2人の方が、大して気にしていない様子だった。


「まあ、そんなに怯えなくて良いぞ。ダイアナ妃は、ああ見えてもメチャクチャ子供好きだからな。この旅行もお前の事を考えて、特別プログラムとして訓練する気なんだ。早めに対策を練らないと、お前らが危険だからな」


「そうだよ。それに、ダイアナ妃は、僕達以上に他人の能力や危険を察知できる賢者能力アビリティーを持っているんだ。賢者を訓練するという点においては、僕達よりもはるかに優秀だよ!」


「俺達では、どの程度までの規模が発生するかも予測がつかない。今回も、ちょっとプールが壊れるだろうな程度に思っていたら、まさか全壊するとは思わなかった。屋根がぶっ飛ぶとは予想外だぜ」


「ああ、ある程度までは、僕も予測はしていた。グロリアスの弟子が危険な能力になる危険が高いという事も聞いていた。でも、ここまでの破壊力とは予測もつかなかったよ。


 その点、ダイアナ妃ならば、事前に危険値も細部まで予測できるんだ。僕達の命のためにも、彼女の賢者能力アビリティーが絶対に必要なんだ!」


 ダイアナは、自分のスマホを切って、通話を終了する。彼女は耳も良いようだ。グロリアスとジャックの話を聞き取っていた。


「ふーん、やっぱり態と爆発を止めなかったのね。粗方、私の屋内温水プールを爆発させて、私をローレンちゃんの修行に加わらせるために……。それが真相といったところかしら? 2億じゃあ、安過ぎたかな?」


 ダイアナの言葉に、グロリアスがすがり付くような仕草で返答していた。これ以上金額を上げられたら、彼も破産の危険が出てくるのだ。


「はうう、だって、マジでこれ以上は、成長させる方法が分からなかったんだもん! 電気を流す力は強いし、非常にスムーズだ。


 まともに修行させても、どんな危険が発生するかも予測できないんだ。それほどまでに、彼女の潜在能力は強い。最悪の事態を免れただけでも、ノーブラ科学賞並みだよ!」


「ノーベル科学賞な。どこがだよ! 事前に私に相談していたら、屋内温水プールだって壊れなかったのに……」


 ダイアナは、グロリアスに向けてナイフを構えていた。グロリアスは、体を硬化させたり、液状化して攻撃を避ける事もできるのだ。はっきり言って、物理攻撃では、ほぼ無敵状態だった。

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