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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第2章 『3つの(トリプル)王冠(クラウン)』の絆(きずな)
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第41話 ハンナVSジャック 水上の戦い!

 ジャックは威圧を出して、私達を威嚇いかくする。最上級レベルの賢者なのだ。賢者に成り立てのハンナと、賢者にもなっていない私には、その威嚇いかくだけですくみ上がってしまうほどの威力がある。


「どうやら僕の事を認めてくれたようだね。今までにないほどの真剣な顔付だ。僕の本気の想いが通じたのかな? 本当ならば、今すぐにでもハンナちゃんのファーストキスを力付くでも奪ってあげたいところだけど、それは止めておくよ。


 だいぶ僕を意識し始めているようだからね。それに、僕も午後からプールの監視員という仕事があってね。本当はずっと一緒にいたいけど、仕方なく離れるんだ。でも、ハンナちゃんが危険になったら、すぐにでも助けに行くからね!」


「うわぁ、危険が無いように注意しないと、更なる危険が近付いて来るのね。ローレン、絶対に溺れたりしないようにしないと……。本気で危険みたいよ」


「まあ、基本的に僕が狙っているのは、ハンナちゃん1人だけさ。でも、人の命がかかっているんだ。ローレンちゃんが溺れて死にかけている時は、僕も彼女を助ける為に人工呼吸をするつもりだ。嫉妬の炎が燃え盛ってしまうだろうけど、そればかりは許して欲しい!」


「あんたの為に嫉妬する事なんて永遠にないわ!」


「くっくっく、良いね、その自信たっぷりの大人ぶった顔付き。実に、可愛くもあり、憎らしく感じる時もある。僕色に染めてあげたくてウズウズしているよ。いずれは、君の胸の中で眠る時が楽しみだ!」


「あんた、良い度胸しているわね。私と同じタイプという事かしら? 普段の表情や態度は良い子ぶってるけど、本当の性格は最悪みたいなタイプね。私も、普段は見せていない本当の顔があるのよ」


「その顔を見たいとも思うね。いずれにしても、少し僕の事を気にしてくれて嬉しいよ。体は少し離れるけど、心はずっと離れないよ!」


「うわぁ、絶対に油断できないわね!」


 ジャックが警備員の仕事をする時間となり、私とハンナから離れていく。近くで泳いでいる人の真似をして、なんとか息継ぎをマスターできた。


 普通に泳ぐ分には、溺れたりする危険はない。ジャックは、私達の様子を監視台から見守っていたが、他の客の安全も気遣っていた。


 ハンナは、ジャックが自分に近寄って来なくなると、彼の事が気になり出していた。チラチラと彼の方を見ては、その業務態度を観察している。


「へー、真面目に仕事してるわね」


「ジャックの事が気になるの?」


「いや、どうでも良いわよ、あんな奴。それよりも、変態が離れて清々するわ。ウォータースライダーしに行こうよ!」


「うん!」


 私達は、ジャックの事が気になりながらも、気にしないフリをしていた。ウォータースライダーで無邪気に遊ぶ子供になる。ウォータースライダーは、青いビニールシートと黄色いビニールシートで作られた丈夫な物だった。


 浮き輪を使って滑る事ができるほどの大きさをしており、水が常に流れていた。私は浮き輪を使って滑ろうとする。ハンナちゃんは、何も無しで滑ろうとしていた。どうやら、浮き輪無しの方がスピードが出るらしい。


「じゃあ、私が先に滑るからね。私が無事に下に辿り着いたのを見てから滑りなさいよ。さすがに、ウォータースライダー内で詰まったら、アイツが助けに来るだろうし……。あんまり迷惑かけるのも悪いし、大人しくしていたいの」


「うん、数少ない好印象な時間だもんね。ハンナちゃんが遠くから眺めていたい気持ちはわかるよ」


「バカ、そんなんじゃないわよ。ただ、真面目に仕事させてないとクビになるかもしれないじゃない。あの歳と性格で再就職は難しいだろうし、私のせいでクビとかにはさせたくないの。分かる?」


「うん、ハンナちゃんがちょっとジャックの事を気に入ったって事は分かるよ!」


「全然分かってない! ほら、私達の居場所を常に確認しているわ。ちょっと目を離しただけで心配性なんだから……」


 ウォータースライダーに登る時に、私達はジャックの死角に入っていた。私達の姿が見えなくなり、彼は慌ててプール内を見渡していた。しかし、私達がウォータースライダーに登っていることを知ると、安心した顔をする。


 私は、意地を貼るハンナの代わりに手を振っていた。ハンナちゃんも手を振りたそうだったが、自分がジャックを気になっている事を認めたくないようだ。彼を見ても無視した態度を取っていた。


「ふう、やっと私の番か。ちょっと勢いを付けて滑ってみようかしら?」


 ハンナちゃんは賢者能力アビリティーを使い、わずかに摩擦係数を調節して滑る。通常の2倍以上のスピードが出ていた。彼女は、自分の賢者能力アビリティーを上手く使いこなしているようだ。


「凄い、あんな事も出来るんだ……」


 私は、自分とハンナの賢者能力アビリティーを比べてガッカリしていた。彼女は応用技や微調整さえも出来るのに対し、私はただ電気を出すだけだった。今の課題である水を消す方法も、どうすれば良いのかさえ分かっていない。


「私の賢者能力アビリティー、弱いのかな?」


 私が不安を感じていると、突然悲鳴が上がる。ハンナちゃんがウォータースライダーのコースから外れて、落下する寸前だったようだ。見ていた客が落下するものだと思って派手な声を上げている。当の本人は冷静だった。


「ちょっとスピードを速くし過ぎたわね。まあ、私の賢者能力アビリティーがあれば、地面に叩きつけられる事は無いけど。問題は、奴が出現する事ね……」


 ハンナは、次に起こる内容を想定して、ため息を吐く。案の定、彼女の想定した通りの展開が待っていた。


「ハンナちゃん、大丈夫かい?」


 ハンナが危険な状況である事を目撃して、ジャックが瞬時に近付いて来る。彼女にお姫様抱っこをして、彼女が叩きつけられないようにしていた。さながら王子様のような助け方だ。


 一瞬で、プールサイドの距離からウォータースライダーのある場所まで移動して来ていた。実に、彼の移動距離は少なく見積もっても30メートル以上もある。にも関わらず、1秒もしないうちに移動して来たのだ。


 彼の身体能力がいくら高くても、生身の体で30メートル以上の距離を1秒足らずで移動するのは不可能だ。間違いなく、彼はなんらかの賢者能力アビリティーを使って移動して来たようだ。


 ジャックは、ハンナをプールサイドのイスの所に座らせる。ハンナが無事に地面に辿り着いた事を安心していると、彼が飲み物を持って来ていた。恐ろしいほどのイケメンぶりだ。私は、すぐさまウォータースライダーを滑り降り、彼らの元へ向かった。


「危ないところだったね。もう少しで怪我をしていたところだよ。さあ、この飲み物でも飲んで落ち着いてくれ」


「ありがとう……。でも、私なら大丈夫だったよ」


 ハンナは恥じらいながらお礼を言っていた。恋する乙女の目をして、ジャックを見つめていた。確かに、あのシチュエーションで助けられれば、ちょっとカッコ良く見えるだろう。私はハンナに近付き、ある事に気付いていた。その重大な事実を告げる。


「ハンナちゃん、水着が……」


「えっ、どうしたの?」


 ハンナもジャックも気が付いていなかったようだが、彼女のブラジャーの紐が片方解けていた。あまりにも速いスピードで滑っていただけに、どこかで紐が解けたらしい。褐色の肌が露わとなり、可愛いチョコレート色の乳首が顔を覗かせていた。


「いやああああ、見ちゃダメ……」


 ハンナは、素早く解れたブラジャーの紐を結び直す。乳首が見えなくなると、ジャックを睨み付けて呟く。


「見たわね……」


「いや、これは事故……」


「忘れろ!」


 ハンナは、ジャックの顔面にパンチで攻撃するが、ジャックには効かなかった。最小限の動きで回避され、攻撃が当たらない。彼の記憶をブン殴って忘れさせる事は不可能だった。


「くっくっく、せっかく記憶したハンナちゃんのオッパイを忘れるわけにはいかないよ。というか、今の一撃を喰らえば、確実に大怪我するよ」


 ハンナは、全力で攻撃を繰り出すが、ジャックには大した攻撃では無いようだ。連続攻撃も楽々とかわされてしまう。ジャックは有利な地形である水面へ移動し始めていた。彼の賢者能力アビリティーは不明だが、水面を忍者のように走る事が可能だった。


 ハンナは彼を追って、プールの前で立ち止まっていた。水面を高速で走るジャックに対抗するには、水の中に入っては絶対に勝てない。水を操る能力か、飛行能力、彼と同じように水面を歩行できるような能力がいるのだ。


「くう、何なのよ! あの賢者能力アビリティー)は……」


「悪いけれど、ハンナちゃんでは僕に傷を付ける事は不可能だよ。まあ、偶にはスキンシップを図るために殴られてあげるけれど、本気を出せばこの通りさ」


「ふーん、これでもそう言えるかしら?」


 ハンナは、笑みを浮かべてジャックのように水面を走り始めた。脚にバリアーを張り、その反発力で水面を浮いているようだ。どうやら水属性の賢者能力アビリティーらしい。どうやらジャックの水面歩行を見て、自分でもできないかを考えていたようだ。


「なるほどね。水面張力を利用して歩行しているようだね。僕の攻撃を当てる事は出来ないだろうけど、なかなかの成長ぶりだよ。さすがは、僕の妻になる女性は違うね。これで、プールでのデートが断然楽しくなったよ♡」


「ふん、水の弾丸を喰らえ!」


 ハンナは水面を叩き、水弾を作り出した。人体に当たればかなり痛い。


「くっくっく、面白いよ!」


 ジャックも水面を叩き、同じように水弾を作って相殺する。ハンナよりも正確で、より精度が高い事を示していた。ハンナは、バリアーの弾く力と腕力を利用して、かなりの威力の水弾を作り出したが、ジャックは自らの腕力で水弾を作り出していた。


 腕力だけだとすると、消防車のホースから出る水よりも高い水圧で撃ち出した事に相当する。もはや人間の腕力では不可能なレベルだった。腕力、スピード共にジャックの方が一枚上手だ。ハンナは軽く翻弄されている。


「くっそ、なら直接叩く!」


「はっはっは、僕を捕まえてごらん! ハンナちゃんが僕を追いかけて来るなんて感激だよ!」


「この、ちょこまかと……」


 ハンナは必死で追いかけるが、彼にとってはラブラブデートしているようなものだ。次第に、彼女の方に疲れが見え始めて、動きが鈍くなっていた。脚の水面張力も無くなり、水中に沈むようになる。水中でうつ伏せになり、水面上にプカプカ浮かび始めていた。

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