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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第2章 『3つの(トリプル)王冠(クラウン)』の絆(きずな)
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第37話 自然属性を身につけろ

 私とハンナは、グロリアスの部屋で朝ごはんを食べる。ジャックも一緒だったが、グロリアスが一緒なら危険は半減するだろう。ハンナも警戒しつつも、邪険にする気はなかったようだ。キーマカレーを食べていると、グロリアスがこう尋ねてくる。


「どうやらローレンの修行は上手くいっているようだな。電気を発生させて、効率良く電気を貯める事までできているそうじゃないか。アレは、お前専用の武器になると思って、特別に用意しておいた物なんだ。使い熟せているようで嬉しいぞ」


「うん、確かに、電気を発生させて、ライトを点灯させていたけど……。誰から聞いたの? ハンナしか近くにいなかったと思うけど……」


 グロリアスは、ジャックを指差して答えた。


「コイツからだが……」


 修行は上手くいき、空の充電池に電気を貯める事には成功した。だが、所長であるジャックが知っているはずはない。それどころか、修行の内容についても分からないはずなのだ。それを知っているという事は、どういう事なのだろうか? 私は疑問を感じていた。


「いつ、見てたんですか?」


 私の問いかけに、ジャックが初めて動揺していた。しどろもどろに返答する。


「それは、だね……。夜に、彼の部屋を訪れた時に、チラッとローレンちゃんがピンチになったのを見かけた時だよ。ライトやスタンガンを使って、キマイラを追い詰めていたよね?」


「えー、黒猫ちゃんは、ちょっとスタンガンで威嚇しちゃったけど、キマイラにはスタンガンは使っていないよ。怖くて、使える状況でもなかったし……。そういえば、あの猫ちゃんどこへいったんだろう?」


 私は、黒猫が近くにいないかを確認する。グロリアスならば、私達の近くにいた黒猫も保護してくれたであろう。しかし、部屋の中には見当たらない。ホテルのロビーに隠れているのだろうか?


「実は、あの黒猫な……。アレは、ジャックが……」


「うわぁ、それ以上は言ってはいけない!」


 ジャックは、グロリアスの口を押さえてそう言った。そして、自分で説明を加える。


「あの黒猫ちゃんね、僕を見て逃げたんだよ! やはり大人の魅力にビックリさせちゃったのかな? しばらくすれば、ひょっこり出て来るかもしれないよ。体は綺麗だったから、すぐにでもベッドで抱いて寝ても大丈夫だと思うよ」


「あなたに驚いて逃げちゃったんですか?」


「ごめん、驚かせちゃったみたいだね。まあ、ハンナちゃんが近くで倒れていたから、ちょっと心配で駆け付けちゃったんだよ。スタンガンをスタッフから貰ったのは知っているからね。


 それで、電気ショックが発生したと勘違いしちゃったんだ。実際に状況を見ると、別の脅威に襲われていた事が分かったんだけどね。グロリアスが君達を助けたのが早かったというだけの話さ。彼がいなければ、僕が君達を助けていたと思うね!」


 私とハンナは、グロリアスが来なかった場合の状況を想像して恐怖を感じていた。気を失った私達とジャックの3人だけになる。どんな事をされるのかも分からない。目を覚ましたら、いきなりベッドの上で彼と添い寝していたかもしれないのだ。


「危ないところだった! グロリアスが来なければ、もっとヤバイ獣に襲われていたかもしれないのか……。ギリギリだったね……」


「マジで危険だったわ……」


「僕、そんなに嫌われているのか……。ショックだ……」


 ジャックは少し凹んでいた。少しは、女の子に好かれるような言動をして欲しい。それができれば、多少なりとも気になるレベルの容姿はしているのだ。しばらくすると、寝起きのアリッサも加わって来た。


 パジャマはボタンが止まっていないので、ピンクのブラジャーが見えていた。私は、彼女のボタンを必死で止めるが、グロリアスとジャックは気不味い空気を感じていた。アリッサの前では、2人とも大人しくなるらしい。どういう奴らなんだと疑問に思う。


「ところで、ローレンの新しい修行を開始する。これからは、自然属性を操る修行になるので、注意して訓練して欲しい。使い方を誤れば、何人かが傷付く可能性もあるのだ。自然属性を習得するという事は、賢者能力を得るのに等しいからな。


 不用意に使えば、思わぬ事態を招く危険もある。まあ、俺やジャック、アリッサの前でならなんとか対応できるとは思うが……。1人で修行する事を禁止するぞ。せめて、大人の賢者と一緒に訓練する事だ。俺が1時間くらいは修行を付けてやる。


 それがお前が賢者能力を扱える時間だと思って集中してやってみるように! 今までのようには簡単にはいかないと考えておけよ。長期的に成長させる予定だから、そのつもりで気長に練習するんだ」


「うんうん、分かったから次の修行を教えてよ! どんな事をするの?」


「まあ、このレベルの修行ならば大惨事にはならないだろう。だが、敢えて、大人の賢者と一緒に訓練する事を義務付ける。ジャックならば、暇だし、お前達の修行に粘着質に協力してくれるだろう。しばらくは、奴との修行だと思ってくれ……」


「ええ、ジャックと一緒に……」


「うわぁ、最悪じゃん!」


 私とハンナは、ジャックに対して嫌悪感を抱いていた。なんとなく、自分達の身に危険を感じるのだ。特に酷い事をされたわけでもないが、ロリコンというのは存在するだけで脅威を与える存在なのだ。


「それで、何をすれば良いの?」


 私は、新しい可能性に目を潤ませる。この修行をマスターすれば、グロリアスのような賢者能力が身に付くのだ。カッコイイ能力とかに憧れている年頃なのだ。そう思っていると、彼がコップ一杯の水を差し出してきた。


「この水を消してもらう!」


「ええ、なんだ。簡単じゃん!」


 私はコップを受け取り、水を飲み干した。


「ゲップ、はい、空になったよ!」


「飲んでどうする。電気の能力で水を消すんだよ!」


「ええ、どうやるの? 手品?」


「それは、自分で考えるんだ。まあ、ヒントくらいは教えてやろう。このコップは、特殊なガラスで出来ていて、電気を通しやすくなっているんだ。ある方法を使えば、お前の電気ショックで消滅させる事が可能になる。アイデアと工夫で頑張ってみろ!」


「ええ……、ヒントはそれだけ?」


「まずは、電気を通して問題点を考えてみろ。何か、ヒントが浮かぶかもしれんぞ」


「うん……、分かった……」


 私はコップに電気ショックを与え続けてみたが、水が変化した様子はない。賢者タイムになるまで続けて見たが、何も変わらなかった。水を舐めてみても、味などに変化はなかった。グロリアスに助けを求めるように見つめる。


「難しい……、無理だよ……」


「いきなり諦めるなよ! 数日間考えてみろ。考えて思考錯誤した結果は、思わぬところで役に立つものだ。いきなりストレートな答えを求めても、戦闘や賢者能力の向上には繋がらないんだ。自分の魔法技術マジックスキルである電気をもっと知る必要があるんだ。


 それは、遊びの中にも含まれているかもしれないし、勉強をしてようやく知れる分野かもしれない。どこでお前の知識が増えるかは、お前次第という事だ。諦めずに頑張れば、いずれは問題が解けるようになるだろう」


「ぶー、けち! 分かったよ、自分で考えてみる」


 私はコップを受け取り、いろいろ試してみることにした。賢者タイムが終わったのを見計らって、電気ショックの間隔や威力を工夫してみるが、水に変化は起こらなかった。私が修行しているので、ハンナが飽きた表情でグロリアスに尋ねる。


「そういえば、遊園地は?」


「今日は、メンテナンス中だそうだ。いきなり遊園地の乗り物を動かしても危険だからな。代わりに、隣の温水プールが無料で使える事になっている。


 経営者が同じで、俺達の友人なんだ。ウォータースライダーやら、水を使った乗り物が無料で遊び放題だぞ。多少の客はいるが、ほぼ貸切状態のはずだ」


「なるほど、そこにローレンの修行の鍵が眠っているわけね!」


「ネタバレするんじゃない!」


 こうして、私とハンナは水着に着替えて、プールに向かう。ショッピングモールで簡単に水着を買い、ゴーグルや帽子なども用意する事ができた。私達が買い物をしている間に、グロリアスとアリッサは水着に着替えて、プールサイドで待っていた。


 所長であるジャックも監視員の格好をして、私達が来るのを獲物を狙う目で待ち構えていた。双眼鏡と電動メガホンを持ち、ゴーグルと水泳帽を被っている。明らかに、水泳が得意といった風貌だった。

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