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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第2章 『3つの(トリプル)王冠(クラウン)』の絆(きずな)
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第36話 ジャックの賢者能力とは?

 私とハンナは、抱き合うような形で目を覚ました。昨晩は、お漏らしをしてしまったが、誰かに着替えさせられたのか、2人ともパジャマを着ていた。


 私は青いパジャマを着ており、ハンナは緑色のパジャマだった。ブラジャーとパンティーも変えられており、まるでタイムスリップしたような感覚だ。


「あれ、ここどこだっけ?」


 私は記憶を辿るように思い出した。キマイラに恐怖を感じ、お漏らしをしてしまった。圧倒的にピンチな状況をグロリアスが助けてくれたのだ。その時の彼の姿が蘇り、私に淡い恋心を抱かせていた。自分でも気付かないくらいの小さな変化だ。


 パンティーを触ると、昨日とは違う物である事に気がつく。私が履いた記憶のない新しいパンティーだった。ハンナも服を着替えさせられてパジャマを着ているので、おそらく同一人物が着替えさせたのだろう。ハンナに触れて、呼びかけてみた。


「ハンナ、起きて!」


「うーん、あと5分だけ……」


 ハンナがそう言って寝返りを打つと、パジャマのボタンが外れてしまった。彼女にはちょっとキツイくらいのサイズだったようだ。成長期だけに、服のサイズがちょっとピッチリしていたのだろう。隙間から緑のブラジャーが顔を覗かせ、プルンと揺れていた。


「私達、誰かにここまで運ばれてきたみたい。ほら、服が変わって、パジャマ姿になっているよ! 着替えた記憶とか、全然ないから……」


「ええっ!?」


 眠っていたハンナが状況を理解して、ガバッと飛び起きた。まずブラジャーを確認して、昨日と違う物である事に気がつく。恐る恐るパンティーも確認する。両方とも何者かに着替えさせられた事に同意した。


「確かに、昨日のブラジャーとパンティーではないわ……。でも、どちらもちゃんと着替えさせられている。ブラジャーのサイズも合っているし、取り付け方も完璧よ。これは、女性が変えたと思うけど……」


 私達の脳裏に、ジャックの顔が思い浮かぶ。気絶する直前に、彼とグロリアスが話していたのを薄っすらとだが覚えていたようだ。彼ならば、もしかしたらブラジャーも完璧に変えられるのではないかという不安が過ぎる。


「あはは、アリッサさんとかじゃないかな? いくらなんでも、グロリアスが女の子の体を、他の男性に触れさせるのを許可するとは思えないけど……。かと言って、グロリアスが下着を変えられるとは思えないし……」


「アリッサに直接聞いてみよう!」


 私達は、急いでアリッサの部屋に向かった。私達を着替えさせた犯人が分かるまでは安心する事ができない。アリッサがそうだと認めてくれるならば、私達はようやく安堵する事ができるのだ。廊下を走っていると、グロリアスとジャックに出会う。


 彼らは、コンビニに行って、私達の朝ごはんを買って来てくれたようだ。レンジでチンしたのか、美味しい食べ物の匂いが漂ってきた。グーというお腹の音が、ホテルの廊下内で響いていた。いつもなら気にしなかったが、グロリアスを男と認識したのか恥ずかしかった。


「おお、朝っぱらから走り回って元気が良いな。だが、お腹の虫は正直だ。ほれ、朝ごはんを買ってきてやったぞ。お前の好きなキーマカレーだ。昨日は、とんでもない怪物と遭遇したけど、怪我がなくて何よりだ!」


「ああ、うん、ありがとう……。もう少ししてから食べるね……」


「おいおい、お腹が空いているのに余裕だな。何か、他に用事があるのか?」


 私は、グロリアスの顔が見れなくなった。なんか、変に意識してしまう。声や仕草はオッサンなのに、全体で見ると格好良く感じてしまう。言いにくそうにしているのを、ハンナが代弁してくれた。ハンナは、私の気持ちとかには気付いていない。


「あんた達、昨日の夜中に、倒れた私達を運んだわよね? 服を着替えさせたのは、誰?」


「うん? そりゃあ、運んだのは俺とコイツだよ。ローレンは俺が運んで、ハンナはコイツが運んだ……」


 ハンナは、グロリアスの指差す方向を見て呆然とする。メガネをかけたジャックが、笑顔で彼女に手を振っていた。追い討ちをかけるかのように、ジャックが興奮して語り出した。


「いやー、ハンナちゃんの体は柔らかくて気持ち良かったよ。なかなかの肉付きの良さに、子供ながらに巨乳で興奮してしまった。肌も張りがあって、キメ細かくて最高だったよ!」


「いやああああああ……」


 ハンナは、あまりのショックに倒れ込んだ。確かに、この男に体を触られたかと思うと、私でも寒気がする。ハンナは、恐怖で顔を引きつらせていた。今度は、ハンナが質問できない状態に陥ったので、私が質問する。


 ブラジャーとパンティーを着替えさせた人物が他にいるのなら、彼女の絶望も薄らぐだろう。もちろん、彼らが着替えさせた場合は、彼女の致命的なダメージになるが……。


「あの、服を替えたのは誰ですか? 私、ちょっと濡れていたと思うんですけど……」


 私はグロリアスにそう聞く。恥ずかしいが、真相を解明する方が重要だった。好きな男の前でお漏らししていた事実など語りたくないが、ハンナが心配なので勇気が出て来た。


「ああ、そういえば下半身が濡れていたな。お前にはショックだと思って、黙ったままでいようと思っていたのだが……」


 グロリアスが服を替えた人物を言わないので、ハンナが痺れを切らした。どんな結果であろうと、真実を知ろうと声を張り上げる。グロリアスも少し驚くくらいの叫び声だった。


「私の下着を替えたのは誰? 正直に答えなさい!」


「僕だよ!」


 ジャックがそう答え、ハンナは気を失ったように倒れ込む。私がそれを支えたので、転倒は免れたが、彼女にとっては気を失いかけるくらいのショックだった。しかし、ジャックの言葉は、まだ続いていた。


「そう言いたいが、さすがに女の子の下着を脱がすのには抵抗があったからね。僕は紳士的に考えて、アリッサさんを呼んでバトンタッチしたんだ。いくらメイド服をデザインできる僕でも、女性の下着を着けるのは難しい。


 せめて、僕のデザインしたブラジャーとパンティーを2人にプレゼントする事で合意したんだ。僕が、アレクサンドラの賢者能力で女の子の体になり、実際に試着してデザインした傑作だ。2人には、喜んで着て欲しいよ♡」


「その従業員も迷惑に思っているだろうな。可哀想に……」


 ジャックとグロリアスが和む空気で話している中、ハンナの手が激しくブルブルと震える。怒りで体が痙攣けいれんいているようだ。


「この、紛らわしいのよ!」


「いたたたた、なんで?」


 ハンナは、ジャックをボコボコに攻撃していた。メガネは危ないという判断から、腹を重点的に攻撃する。彼女の怒りが治るまでは、激しい攻撃が続いた。ハンナは賢者能力を使っての攻撃ではないので、ジャックも快く攻撃を全て受け入れていた。


「はあ、はあ、はあ、コイツ、効いてない?」


「ふふふ、効いているとも……。ハンナちゃんの恥ずかしがる可愛い攻撃で、僕のハートはノックアウトされかけているさ。ますます僕の恋が燃え上がってしまうよ! 僕の腹への拳を使った巧みな接触と感触、愛を感じてしまうね♡」


「いやああ、昨日のキマイラより、コイツの方がよっぽどの化け物だわ!」


 ハンナは攻撃をやめて、ジャックと間合いを取っていた。これ以上、奴が近付けば、ハンナも賢者能力を使ってでも拒絶するであろう。ジャックの気を紛らわす為か、グロリアスは彼に尋ねる。彼の賢者能力も気になっているようだ。


「しかし、ジャックの賢者能力ならば、女性の姿にも変化できるんじゃないのか? 敢えて、アレクサンドラとかいう女性従業員の能力を使う理由が分からんのだが……。お前は、どんな生物にでも変化できるんだろう?」


 ジャックは、グロリアスを睨むつける。私達からちょっと離れ、彼らだけで話し始めていた。ハンナと私は、ジャックを警戒して近付く勇気が持てない。遠くからでは、彼らの話を聞き取る事はできないでいた。


「ふっ、グロリアス、ちょっと彼女達から離れようか? 僕の賢者能力が広まるのは、賢者としても避けたいんでね。いいか、女性の体というのは、神秘的な物なんだよ。そりゃあ、姿形を真似する事はできるかもしれない。


 だが、女の子特有の香りや柔らかさを再現する事はできないんだよ。仮に、ハンナちゃんと結婚して愛し合い、数年間経ったとしても理解できるかどうか……。アレクサンドラちゃんの賢者能力を駆使して初めて、女の子の体に変われるんだよ。


 香りや柔らかさ、オッパイの形や大きさなんかを自然な状態でね。彼女の賢者能力により、更に生物としての女性の魅力が分かったよ。それでも、女性の仕草や性格、可愛らしさを身に付けるのは難しい事なのだが……」


「なんだ、その変なこだわりは……。姿形が変われば、それで良くないか?」


「何を言うんだ、グロリアス。女の子の体というのは、特有の良い香りや柔らかい体付き、魅力的なオッパイなど、それらが複雑に絡み合って1人の女性が誕生するのだよ。一朝一夕でできた仮初めの女の子など、僕は認めない!


 アレクサンドラちゃんの賢者能力は、僕が女性として生まれてきた場合の香りや体付き、オッパイのカップ数まで再現されているんだ。改めて、彼女の賢者能力が優秀である事を再確認させられるよ。僕が変化した程度では、アソコまでは忠実に再現できないからね!」


「やっぱり変な奴!」


 グロリアスと私達の心がシンクロしていた。3人で、同時にそう呟く。とりあえず、私とハンナは、着替えをさせたのがハンナと知って胸を撫で下ろした。ご飯を食べる為に、彼らの部屋に向かう。

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