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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第2章 『3つの(トリプル)王冠(クラウン)』の絆(きずな)
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第32話 キマイラVSハンナ

 私とハンナは、ショッピングモールでの仕事を終え、ホテルに帰る。時刻はすでに10時を過ぎており、ちょっと眠くなっていた。初めてのアルバイトで緊張したし、疲労はピークに達していた。早くお風呂に入って、眠りたい衝動にかられる。


「うー、眠たいよ……」


「もう少しだから我慢しなさい。どうやら、猫ちゃんも目覚めたようだわ。今日は、一緒に添い寝しましょうね。うう、可愛いわ。起きていても私の言う事をよく聞いてくれて」


「良いなぁ、私もニャンコと添い寝したい。でも、ちょっと汚れているからお風呂に入れないといけないね。ドライヤーで乾かしてから眠るとなると、12時くらいまでかかっちゃうかも……」


「あんたはお眠だから無理ね。私がこの仔を大切に飼うわ。お父さんとお母さんも快く受け入れてくれると思うし……」


「黒猫は、インスタ映えしないよ? 私がアリッサさんに頼んで飼うから、こっちへよこして!」


「インスタ映えなんてどうでも良いわ。要は、私が可愛がってあげれば良いだけだもの。猫は、可愛がれば可愛がるほど、いろいろな表情を見せてくれるのよ。画像で収めようなんて不純な動機で飼う物ではないわ」


「ちょっとくらい一緒に寝かせてよ!」


「あんたの寝相が良ければ良いけどね。今日は、一緒の部屋なんだから、猫とサンドイッチで寝る事になるわよ。寝相良くしてなきゃ、ベッドから蹴り落とすからね!」


「ひえええええ、私、寝相は良いと言われております。優しく抱きしめてください」


「何、色気を出しているのよ。まあ、ちょっとくらいなら我慢してあげるわよ」


 私達が話し合いをしながら、ホテルのロビーに辿り着くと、突然空気が変わった。何か分からないが、異様な空気に辺りが包まれている。息苦しく、何者かに狙われているようだった。初めて感じる殺気に、私とハンナは動揺する。


「何、この感じ……。息が苦しい……」


「何か、ヤバイ化け物がいるみたいね。気配は消しているようだけど、トンデモナイ威圧感を感じるわ。まるで、檻から逃げ出したライオンみたいな感じがする」


「ひええええ」


「しっ、声を出すんじゃない。とりあえず、こう暗くてはこちらが不利だわ。ホテルの明かりを全部点けましょう。全体が明るくなれば、化け物や野生の獣だろうが、身動きできなくなるはずよ。少なくとも、こちらも奴の姿や動きを確認し易くなる」


「どこに電気があるんだろう?」


「ホテルのカウンター内なら、明かりを調節しているブレイカーがあると思うんだけど……」


 私とハンナは、ホテルのカウンターを目指して移動するが、謎の獣が襲いかかってきた。ハンナの方を狙い、突進してくる。


「ちっ、あんたは猫ちゃんを持って、電気を点けるようにしなさい。コイツは、私が食い止めておくから……」


 ハンナは、猫を私に押し付けて、自ら囮になる。いくら格闘技を学んでいるといっても、夜の獣の前には無力に等しい。ホテルのロビーに明かりが点くだけでも、ハンナが攻撃を対処できる可能性が高まるのだ。


「来なさいよ、こう見えても防御力は自信があるのよ!」


「ガルルルルル……」


 人間大の獣が、ハンナに襲いかかってきた。人の指ほどもある鋭い爪が、ハンナの華奢な体に斬りかかってきた。攻撃がヒットする瞬間、ハンナの体の周りに、空気の膜のような物が現れていた。それが爪の攻撃を阻み、素手でも捉えられるくらいの威力にまで落ちている。


「危ない奴ね。なんて鋭い爪……、こんなんでやられたらヤバイわ!」


「ガルルルルル……」


「でも、動きを制御できれば、反撃くらいは……」


 ハンナは、獣の動きを制御して、反撃しようと考えるが、奴の筋力が凄くて思うように決まらなかった。いくら鍛えているといっても、大の大人と少女ほどの筋力差がある。ハンナは、一瞬にして、自分ではこの怪物を倒せない事を悟っていた。


 動きも圧倒的に速く、パワーも、攻撃力も強い。下手に反撃しようとすれば、彼女自身が獣の攻撃を受ける危険が高かった。その為、防御に徹する事にする。いわば時間稼ぎのような消極的な戦法だが、今はそれしか方法がない。


「ローレン、早くホテルの電気を点けなさい! そうしたら、グロリアスを呼びに行くのよ。彼なら、こんな獣でも相手にできると思うから……。私は、悔しいけれど、まだ実力不足だわ。でも、時間くらいは稼いで見せる!」


 ハンナは、自分の持っている魔法技術マジックスキルを最大限に駆使して、超高速の獣の攻撃を防いでいた。彼女の体が攻撃される瞬間、風の膜が発生して、一瞬だけだが獣の動きを止めていた。それでも、あまり長く持つはずがない。


「来なさいよ、賢者タイムの5分間までは、ギリギリ耐え切ってみせる! その後は、悔しいけれど、グロリアスに任せるしかないけどね……」


 ハンナは、高速で連続攻撃を仕掛けてくるキマイラの攻撃を全て受け止めていた。彼女の魔法技術マジックスキルは、バリアーであり、キマイラの攻撃が当たる瞬間に、見えない透明な壁が出現していた。その壁が、鋭いキマイラの猛攻を阻んでいた。


「くう、敵の攻撃が見えない以上、常にバリアーを張り続けて阻むしかない。でも、絶対に5分間は耐えてみせるんだから……。ローレンには、爪の一本も触れさせてあげないんだから!」


 彼女は、私を守ろうと必死になっていた。自分が長くキマイラを引き付けていれば、少なくとも私に危害が及ぶことはない。私も、必死でホテルのカウンター内に飛び込み、急いで電気が点くようにブレイカーを探していた。


「これかな?」


 ホテル内は、ブレイカーを調節することで、どこに明かりが灯るかを決定していた。グロリアスとアリッサの部屋、私達の部屋以外には電気が行かないように調節されている。


 私達は、ライトを使えば移動できるし、グロリアスを追い詰める為に電気が点かないように調節されていた。これによって、キマイラが有利な条件で戦う事ができていた。


 私は、ロビーの明かりという項目の書かれたブレイカーを上げる。すると、ホテル内がパッと明るくなっていた。人も動物も、目が眩んでまともに動く事ができない。


「ギャアアアアア……」


 人の形をしたキマイラは、目が眩んで動きが止まる。そこを、ハンナが最後の力を振り絞って攻撃していた。明かりが点く一瞬を狙っていたようだ。目が見えなくても、バリアーの能力を応用する事によって、相手の居場所くらいは分かるようになっていた。


「ここだ! お互いに同じ条件なら、私の方が有利なのよ!」


 ハンナは、バリアーを足に集中させて、一気にキマイラとの距離を詰める。これもバリアーの応用技だった。足に集中したバリアーが反発力を生み、彼女自身の格闘スキルと合わせる事でキマイラと同等のスピードを得ることができていた。


 キマイラも、野生の勘と聴覚を頼りに、ハンナの動きに対応する。お互いに同じスピードになり、必殺の一撃を繰り出していた。


「くっくっく、さすがに、これで倒せるほど甘くはないか……」


 ハンナは、バリアーを張り、体全体で特攻をかける。バリアーを纏った体が、高速で移動するキマイラとぶつかり、お互いに反発するように弾け飛んだ。


 ハンナもキマイラも壁に激突し、激しい衝撃音がホテル内に響く。2人とも瓦礫に埋まり、動かなくなっていた。これでは、どちらも無事では済まないだろう。

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