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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第2章 『3つの(トリプル)王冠(クラウン)』の絆(きずな)
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第26話 ローレンの新しい修行

主人公ローレンの視点に戻ります。

 私とグロリアスは、薄暗い部屋の中、初めて修行を開始し始めていた。


「うう、痛い、痛いよ……。グロリアス、もう少し優しく……」


「痛いのか? 頑張って耐えてくれ、ローレン。もう少しすれば慣れてくると思うんだが……」


「うん、頑張る……。うう、痛いよ……」


「キツイな……。俺も初めてだから、この方法が正しいのか分からん……。少し、休憩してみるか?」


「やだ、このまま続ける……、あん……、痛い……」


「無理はするな。今日の修行は、できるだけゆっくりにする。お前の体が傷付いても困るからな。初めてだから、上手くいかなくて当然なんだ」


「うん……、分かった。ちょっと休憩する……」


「どれどれ、ちょっと痛かった部分を見せてみろ。やっぱり傷が付いてしまったな。俺の配慮が悪かったんだ、すまん。もう少し先端を滑らかにして、滑りやすく加工してやるからな。そうすれば、痛みも多少は和らぐだろう……」


「うん、ありがとう……」


「じゃあ、原因も分かった事だし、もう一度やるか?」


「うん、やってみる。ううん、やってみたい!」


「どうだ、痛いかな? 今度は傷付くことはないと思うんだが……」


「ああ、あっ、あっ、あっ、なんか……、マッサージみたいで気持ち良いです……。クセになりそう、体全身から何かが溢れ出てる感じ……」


「そうか、これなら賢者タイムまで続けられるかもな。ほら、ほら、頑張れ……」


「ああん、頑張る……」


 私は、指先の関節に携帯電話の充電ケーブルを繋ぎ、自分で携帯電話をチャージする修行をしていた。最初は、コードの先端が尖っていて、指を傷付けていたが、グロリアスが加工してくれたおかげで、長時間電気を流すことが可能になっていた。


「そうだ、今までは断片的に電気を発生させていたが、今度からは継続して発電をしてもらう。今までよりもはるかにキツイが、自分の賢者タイムも知ることができるし、慣れてくれば、自分の賢者タイムの時間も最大限に引き延ばすことができるようになるだろう」


「ああ、電気が発生しなくなった……」


「賢者タイムになったな。ちょうど出発の時間だ。そろそろ修行は終わりにして、朝食を食べに行くか? この続きは、遊園地に着いてから開始すれば良いんだ!」


「うん、分かった! わーい、遊園地だ!」


 こうして、私達は家を出発する。目的地は、オープン前の遊園地だ。全ての乗り物は調整済みだが、謎の不法侵入者が現れたという理由で調査の依頼が入ったらしい。依頼さえ解決するなら、無料で全ての遊具が遊べるらしい。そこまでは、電車で向かっていた。


「はーい、ポッキーですよ! きのこの山とたけのこの里も持参してますよ! 私は、どっちもいける派なので……」


「私、きのこの山で!」


「私、たけのこの里!」


「俺は、ダークビターなポッキーでいこう!」


 和気藹々(わきあいあい)と楽しい旅行が始まった。今日の旅行は、私とグロリアス、アリッサとハンナの4人だ。遊園地に着くまでは、私とハンナは、普通に旅行と思っていた。遊園地の場所まで着いて、初めて違和感に気付く。


「あれ、遊園地、動いてないよ。人も見当たらないし……」


「そりゃあ、無人だからな。動かすだけなら、俺達でもできるぞ!」


「いや、そういう問題じゃなくて、動いてないの?」


「依頼が解決したら、タダで乗れるようになっている。喜べ、貸切だぞ!」


「そんな……」


 こうして、私達は、依頼を受けることになった。夜中の時間に、怪しい男がウロチョロしているようなので、捉えるなり、追い出すなりしてくれという依頼らしい。私達が泊まっているホテルに出没するらしい。


「後、俺とアリッサは忙しい。夕方までは何の予定もないから、隣のショッピングモールで買い物を楽しんでいると良い。お金は、なんとか現地で調達してくれ。では、以上で解散だ。お前達の健闘を祈る!」


「ちょっと、資金を現地調達って何よ? おーい!」


 グロリアスとアリッサのホテルの重い扉は閉ざされた。中からアニメのセリフの声や、小説を執筆している音が聞こえる。この状態になった2人を連れ出すのは容易なことではない。せっかく楽しみにしていたが、いきなりの放置プレイに戸惑っていた。


「うう、遊園地が……」


「こうなったら仕方ないわよ。ショッピングモールを見回ってみましょう。お金は全然ないけど、試食コーナーのつまみ食いをすれば、それなりにお腹いっぱいになると思うわ。今日の昼食は、それでお腹を満たすしかないわね」


「ハンナ……」


「気持ちは分かるわよ……。でも、落ち込んでいても、つまらないだけだわ。それなら、少しは2人で楽しく遊べるように工夫をしようよ!」


「うん……、私、思いっきり楽しむ!」


「楽しめる施設があるかは分からないけどね……」


 こうして、私とハンナの冒険が始まろうとしていた。ホテルもほぼ完成している新品の部屋に、ムリやり宿泊しているような状態だ。ベッドやテーブル、浴室などは綺麗だが、ルームサービスなどはないに等しい。ホテルとして昨日もまだしていないようだった。


「この通路から、ショッピングモールへ行けるみたい。3回くらいの高さの連絡通路だけど、外はガラス張りで綺麗だよ。歩きながら見てみよう!」


「うわぁー、凄い建物! まるでお姫様が住む宮殿みたい!」


「どうやら変わった形のショッピングモールみたいね。ドーム状の巨大な建物の中に、無数のお店が立ち並んでいるみたい。駐車場に止まっている車の数からも、このショッピングモールは現役で賑わっている。ローレン、逸れないように気を付けなさいよ!」


「うん、分かった! 早く、中へ入ろうよ!」


「迷子になったら、このショッピングモールの中央広場で落ち合うわよ。分かった?」


「うん、一階の中央にある子供広場だね! 分かったよ!」


 興奮する私を尻目にして、ハンナは冷静なお姉さん役に徹していた。ショッピングモールは、外壁を巨大な壁で囲われているが、まるで風船のようにフワッと外側に飛び出しているのだ。外壁の近くに立つと、その巨大さがハッキリと分かる。


 まるで、貧乏人を受け付けないかのような防壁とガードマンが私を待ち構えているようだ。初めて入る高級施設に、私は身構え始めていた。どこもかしこもオシャレな人だらけで、子供の私が浮いて見える。


「うわぁ、なんか緊張してきた……。誘拐とかされたりしないよね?」


「見るからに貧乏だから大丈夫じゃない?」


「お財布持ってないし……、お菓子も食べ終わっちゃったし……」


「私が一緒だから大丈夫よ! 私も所持金ゼロで、食べ物も持ってないけど……」


「そっか……」


 私達が中に入ると、まず迷子になった場合の中央広場を確認する。たくさんの遊具が置いてあり、友達がいる場合には楽しめるだろう。一人きりの場合は、センチメンタルな気持ちに苛まれながら、遊具のブランコを漕ぐこともできる。



 その広場からは、この建物の全体が見渡せるようになっていた。ガラス張りの建物が、私を威圧するかのように、高層ビル群を形成している。この真ん中の広場に近付けば、そこから私達の居場所を確認できる構造になっていた。



 一階と最上階は、食べ物屋で溢れているようだ。地下へ行くと、食料品売り場なども用意されている。ハンナの狙いは、そのデパ地下だった。無料の食品を試食しながら、お腹を満たそうという考えだ。


「地下へ、移動するわよ!」


 ハンナがエスカレーターで移動しようとすると、声をかける人が現れた。どうやら、このショッピングモールの従業員らしい。私とハンナは、その人物に注目する。

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