第16話 アリッサの光魔法発動!
今日も朝から私は温泉に入る。グロリアスが入っていると考えるが、父親のような感じがするので嫌には感じない。タオルを持参して、体が見えないように最低限の防御はして出て行く。
「今日も面白そうな依頼が入っていた。どうだ、一緒に行くか?」
「うん、良いよ。弟子だもん、師匠の戦闘ぶりを見ておかないと……」
「修行も忘れずにしろよ。手と足の指から1分間に200回も放電させるんだ。合計すると、最低でも4000回は放電しないといけない。かなりキツイと思うぞ……」
「ボチボチ頑張ります」
私は、彼からちょっと離れて温泉に浸かる。人一人分くらいの間隔が空いた。
「ふー、良いお湯……」
「もう、完全に俺を男だと思っていないな……」
「師匠、もっといろいろな事を教えてよ」
「いきなり意味深な発言を……。どんな事が知りたいんだ?場合によっては、断るが……。お前には、まだ知らなくてもいい事とかもあるからな……」
「そうなんだ……。魔法もやっぱり段階というものがあるんだね……」
「なんだ、魔法の事か……。それなら、教えてやろう。男女間の関係とかなら、ダメだが……」
「男女間の関係!? 何、それ?」
「ああ、いやいや、魔法とは関係ない事ですよ。じゃあ、今日は魔法の3種類のタイプについて教えてやろう。そこまでの明確な規定は無いが、分けたい奴は魔法を3種類に分別しているのだ」
「へー、なんで?」
「一括りにした方が、修行行程が決め易いというのが理由だ。魔法は、個人的に発現して、魔法技術を磨いていくのが普通なんだ。誰かに教えて貰うというのは、特別な状況であると思って良い。
普通は、親や親族が子供の可能性を発見して伸ばして行くものなのだ。しかし、それでは安定した賢者を生み出す事は難しい。そこで、賢者と大賢者を分ける事で、弟子を設けて育てようという教師達が出始めた」
「へー、やっぱり賢者の世界も、ビジネスをしようとする人がいるんだね」
「ああ、そのおかげで賢者能力は、安定した能力を持つ者達になり始めた。賢者魔法には、個々の魔法技術を発見して、成長させるという過程が必要という提案がなされて、その時に生まれたのがこの3種類のタイプというわけだ」
「へー、そうなんだ……」
「ああ、魔法技術を発見するだけでも困難だからな。子供を何人か集めて、特殊な能力を見分ける作業を1年ほどして、それから3タイプ別に分けて訓練を施したそうだ。すると、なんとかバランス良く能力を開発する事ができた。
そこから、賢者能力の開発には、3タイプのどれかを見極めて、能力を開発していくという措置が取られている。まあ、お前はすぐに魔法技術を知る事ができたから、俺が訓練方法を決めているのだがな」
「ふーん」
「中には、親などが魔法技術を見分ける事ができずに、放置されている人物もいる。そういう子は、自分の魔法技術も開発できずに、困惑している事だろう。そういう子を助けるのも賢者の仕事の1つだ」
「それで、3タイプって?」
「魔術師タイプ、錬金術師タイプ、超能力者タイプだ。魔術師タイプは、体がなんらかの物質を出せる、又は変われる変化をする。自然属性と合わせれば、知識次第で破壊力は増して行く。ローレンは、魔術師タイプだろう。
錬金術師タイプは、体から物を作り出す事が得意だ。自然属性と組み合わせて、様々な武器や防具を作り出して戦う。俺も一部では、錬金術師に当てはまるかもしれないな。飴から武器を作り出せるし……。
超能力者タイプは、体に変化は少ないが、特殊な能力を持つタイプだ。魔法技術の発見がし難いという特徴がある。
普通に生活している分には、他人には分からないタイプだ。アリッサも、この超能力者タイプだぞ。他にも、自然属性と合わせ難いという特徴がある」
「厄介なタイプなんだ」
「まあ、開発や成長し難い能力かもな……。だが、接近戦や格闘戦では最強の部類に入る事もある。要は、工夫次第で強くする事は可能なのだ。アリッサも、能力開発という点では、俺よりも上かもしれない!」
「へー、アリッサさんって、凄いんだ!」
私とグロリアスが話していると、ひんやりとした空気を感じる。どうやら、誰かが温泉に入って来たようだ。ゆっくりと、私に気付かせないように近付いていた。
「はーい、私の事を知りたいの? アリッサお姉さんが、いろいろ教えちゃうわ!」
一糸纏わぬEカップが、私達の前に現れた。私は、彼女に前を立たれて視界をオッパイだけにされる。顔の前方に立たれては、そこにしか注目する事ができない。タオルを持参してはいるが、古い伝統の為か、湯船に浸ける事はしなかった。
「さてと、湯加減はどうかしら?」
アリッサは、ゆっくりと湯船に体を浸かり始めた。足は、長くスラリとしており、グロリアスのいる位置まで余裕で届く。軽く足が当たったのだろう、グロリアスが声を上げていた。アリッサが来た時点で放心状態だったが、意識を取り戻したようだ。
「ヒギャアアアア!」
「あら、どうしたのかしら? 化け物が現れたみたいな声を出して……。ちょっと失礼ね」
「すまん、驚いただけだ。いつもは、朝の食事で忙しいから、この時間帯に入浴してくるのは珍しいな……」
グロリアスは俯いて、彼女を見ないようにしていた。どうやら恥ずかしがっているらしい。
私が彼を観察していると、アリッサは髪を纏め始めた。どうやらポニーテールにして、髪でオッパイが隠れるのを防いでいるようだ。
「おい、見えているぞ。前を隠せよ!」
「あら、照れているの? 今まで進展しなかったんだから、少しくらい大胆になった方が、あなたも嬉しいんじゃないのかしら? 自分のお風呂でリラックスできないのもおかしいもんね。嫌なら、あなたが出て行けば?」
「嫌ではないが、お前の思い通りになることもないぞ。火属性の『誘惑魔法』で俺を落とそうとしても無駄だ!」
「うーん、別に、魔法は使ってないんだけどな……」
こうして、私とアリッサが温泉内をはしゃぎ回る。タオルが取れて、オッパイや体が見えても平気になっていた。水を掛け合ったり、鬼ごっこをしたりする。グロリアスは、なぜか機嫌が悪い。ゆっくり入っていたいのだろうか?
「おい、暴れるな! 水飛沫が飛ぶだろうが!」
「むう、そんなに怒るなんて……。私と一緒に入るのはダメなの? ローレンちゃんの時は、魔法のアドバイスまでしっかりしていたのに……」
「うう、デカイ……。ローレンは、まだ子供の体だから……。お前は、大人の女だろう。態度が変わるのも当たり前だと思うが……」
「あら、嬉しい。ちゃんと女の子として見てくれるんだ。結婚をしたら、大変になるとか思ってたけど、ローレンちゃんがいる内は、大して変わらないと思うけど……。お父さん、お母さんと相談してみる?」
「うう、俺だって……。いや、まだ早い気がする。ローレンが一人前の賢者になるまでは、俺はお前と結婚する気はないぜ!」
「もう、仕方のない人ね……」
グロリアスは、アリッサから逃げるように温泉から出て、体を洗い始める。膝の上にタオルを掛け、ゆっくりと洗い始めた。それを見たアリッサは、私を連れて、彼にゆっくりと近付いていく。そして、私に話しかけるように指示を出していた。
「ねえ、背中洗ってあげようか?」
「おお、すまんな……」
グロリアスは、私の声から気を許して、そう頼んで来た。しかし、実際に洗うのは、アリッサがしたいみたいだ。私は、彼女がする仕草に合わせて声をかけて行く。彼女が背中をこすれば、洗っているフリをするのだ。
「ねえ、気持ち良い?」
「ああ、中々の手付きだ……」
体を一通り洗い終わると、アリッサの目付きが変わる。どうやら魔法を発動しているようだ。半径5メートル以内にいる為、グロリアスの心の中は、全て筒抜けになっていた。しかも、彼女の存在に気付いたとしても、逃げられる位置ではない。
「そろそろ、本気であなたを癒してあげようかな? 光魔法『魂の(ソウル)回復』を発動するわよ!」
「おおう、オッパイが……」
アリッサは、無防備な彼の背中に抱き付いて、オッパイを押し付けていた。Eカップの巨乳が、彼の背中をモロに攻撃していた。体温と感触が伝わり、彼女の吐息が耳にかかる位置に来ていた。腕で首をロックされ、逃げる素振りさえも許されない。
「アリッサ、お前だったのか……」
「あら、ローレンちゃんなら後ろから抱き付いても許可しちゃうんだ。ちょっと焼けちゃうわ。光魔法のテーマは、『会社をクビにされた無職へのメッセージ』よ。体と心の回復技を、骨の髄まで受けなさい♡」
アリッサは、グロリアスの耳に吐息をかける。彼は、ダメージを受けて悶え始めていた。変な声を出して、なんとか攻撃を耐えようとしている。Eカップのオッパイは、べったりと彼の背中に貼り付いていた。
「あなたはとても頑張って働いたわ。なのに、あなたのような素晴らしい人をクビにするなんて……。あんな会社、辞めて正解だったのよ。あなたという宝のような人材をクビにする事で、自らの未来にピリオドを打ったのよ。
あなたが落ち込む事はないわ。さあ、あなたを受け入れてくれる賢い会社を探しましょう。数年後には、あなたは企業のトップに立っているでしょうけど、クビにした会社は敷地さえも残っていないわ。
あなたを受け入れてくれる会社こそが、未来のある伸びる会社なのよ。当然よね、近くの優秀な社員をさえ満足にできない会社が、顔も知らないお客様を満足させる事なんてできるわけないじゃない。ねえ、あなたもそう思うでしょう?」
「ぐあああああああ、耳に甘い言葉が……、背中に柔らかい感触が……」
グロリアスは、興奮し過ぎて意識を失った。わずかに出た鼻血を拭おうとしていたが、Eカップのオッパイ魔法には敵わなかったようだ。アリッサの胸に顔を埋めるような形で支えられていた。
「キャアアアアア、グロリアス、どうしたの? あなたが今、一番聞きたかった言葉でしょう? 心の中で、『最高だぜ!』とか叫んでいたじゃない!」
私はグロリアスの様子を確認してみるが、次第に鼻血の出血量が多くなり、痙攣し始めていた。このままではヤバイ事を悟る。脱衣所からティッシュペーパーを持って来て、なんとか出血量を抑える。だが、状況に反して、彼の顔は笑顔だ。
「ふう、この人、いつもこうなのよ……。私の闇魔法による攻撃にはなんとか耐えられるけど、光魔法による回復には気絶してしまうの。もしかして、この人、アンデット系なのかしら?」
アリッサは、労わるように彼を膝枕で寝かしていた。しばらくして、鼻血が止まったので、2人で彼をベッドのあるところまで運んだ。今日1日は、ずっとこのままらしい。彼には、依頼があると聞いたけど、どうすれば良いのかもわからない。




