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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第5章 ダンジョンで冒険してたら、変な女の子に出会った
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第103話 ローレンVSスライム

 頭の良い私は、とりあえず相手モンスターの弱点を探る。敵の情報を知る事で、効率良く倒す方法を学ぶわけだ。私は、同居人のアリッサからもらった伊達眼鏡をかけて調査に当たる。こうする事で、頭が良くなった気分になるのだ。


「ふーむ、スライムは乾燥させて干物にすると高級珍味になるようですね。形状としては、外側がドロリとしていて、中側に内臓があるようです。私は事前に調査して、すでに乾燥させる道具を作り出しています。特許志願中とか書いてあったけど、無断でパクります!」


「スライムの干物、これは当たりそうね。いろんな意味で……」


 ベネットも舌なめずりをして、戦いに参加してくれるもようだ。ハンナやステラがすでに幾らかモンスターを倒しているが、奴らの戦い方ではスライム自身を大幅に傷付けてしまうおそれがある。それでは、スライムを美味しく食べられないのだ。


「喰らえ、バリアブルクラッシャー」


「パン!」


「ふふん、どうよ、この威力!」


 ハンナの一撃によって、スライムは液体ごと四散して飛び散っていた。彼女が攻撃した後には、爆発したような無残な残骸が残っていた。優しく包み込むように捉えなくては、食糧にする事はできないのだ。


「ハンナちゃんは戦っちゃダメ! モンスターの生態系を大幅に傷付ける恐れがある。それに、私達も胸糞な残骸を見て、精神的なダメージを与えるから戦っちゃダメ!」


「ええ、スライムが弾ける音が面白いのに……」


「ひい、ブラックハンナちゃん登場だ」


 子供というのは残酷なものだ。普段は優しい良い子でも、時には残虐な遊びに夢中になるものなのだ。こういう時は、早めに止めてあげないと、彼女の残虐性が増してしまうのだ。


「ダメ、ダメ、私達が食べる食糧が無くなっちゃうよ。今度は、私が感電死させるからハンナちゃんは見ていて!」


「結局変わらないんじゃ……」


 ハンナちゃんは、文句を言いつつも私に戦闘を任せてくれた。愛するハンナちゃんのために、高級珍味のスライムを食べさせてあげたい。私はその一心でスライムに容赦のない電撃を浴びせる。感電させて、鉄の網に挟んで乾燥させるわけだ。


「喰らえ、『マジックNo.80高速のライトニングインパクト』!」


「パン!」


 私の電撃を浴びて、スライムは破裂する。どうやらデリケートな作りのようだ。電子レンジでチンしたような芳ばしい香りだけを残して消滅させていた。後には、何も残っていない。


「どうやら結果は同じようね」


「はっ、ナイフで切らないといけないんじゃ……。衝撃と電撃に弱いから、ナイフで優しく斬り裂いてあげないといけないんだ」


 スライムの攻撃方法は、死角から冒険者に襲いかかり、胃液によって包み込んで溶かすというシンプルなものだ。女性には顔や体などを焼く事から恐れられているが、本来は殺人をできるほどの強力なモンスターではないのだ。


 その弱くてデリケートなモンスターに私達は苦戦していた。確実に気絶させなければ、私やハンナの柔肌が傷付いてしまうし、威力が強過ぎれば、蛙のように破裂してしまうのだ。そこをベネットとステラが参戦する。スライムの動きを止め始めていた。


「OK、生け捕りすれば良いんでしょう?」


「ベネットは、ゲテモノ食いだもんね。通常の美食は食べ飽きたみたいだし……」


「うふふ、こんなモンスター、私にかかれば雑魚も同然よ!」


「いや、元から雑魚だったけど……」


「『AアロマCコントロール』。うふふ、AとCを合わせた私の得意技よ!」


「わざわざ『魔法マジックコード』まで説明しなくても良いのに……」


 ベネットは、芳しい香りを出して、スライムをメロメロにしていた。どうやら、コレが彼女の賢者能力らしい。『魔法マジックコード』を使えるのは、技の種類が圧倒的に多くなる賢者が開発と整理のために考え出すのだ。ベネットの潜在能力は私と同様にあるらしい。


 スライムは、動きを止めて、ベネットに懐いていた。これでスライムを破裂させずに干物にすれば、美味しい珍味の完成となるのだ。私は早速、スライムを網に挟み込もうとしていた。


「やった! これで乾燥させれば、美味しいスライムが食えるよ!」


「なんだ、乾燥させれば良いのか。なら、今すぐ食べれますよ!」


 ステラは、這いつくばって魔法陣を出現させていた。別に、魔法陣が無くても賢者魔法は使えるのだろうが、これも一種の魔法マジックコードだろう。水分を豊富に含んだスライムが、彼女の敷いた魔法陣の上で無残に干からびていくのだ。


「わあ、スルメみたいに乾燥していくよ!」


「私は、こうすれば火も起こせるからね。調理するなら任せなさい!」


 こうして、乾燥した美味しそうなスライムができあがった。細かくスライスして食べてみたが、塩味が足りない。スライム自体はそこまで味が無いので、外部からの味付けが必要になっていた。とりあえず醤油に漬けて食べる。


「うお、スライムの醤油漬けはかなり美味いよ!」


「塩分が豊富という以外は問題なさそうね。後は、ご飯の上に乗せれば、スライム丼の完成よ!」


「うおおおおお、美味え、美味え!」


「ゆっくり食べなさい。急ぐと喉を詰まらせて死んだように見せかけて殺すわよ! 私、上品に食べる女の子と友達になりたいの。それ以外は、潰すわよ!」


「私ほど上品な女の子もいませんよ。ほら、この箸さばきをご覧ください!」


「ふふ、ご飯粒付いてるわよ♡」


(殺さ(やら)れる!)


 ベネットは、殺意を込めた目で私を見て、頰に手をかけてきた。ヤラれるという緊張感が漂ったが、何事もなく、頰のご飯粒だけが取り除かれていた。ベネットは本気になると、表情が怖い感じになる。笑顔でさえ、同級生の男達を震え上がらせるのだ。


 こうして、私達はダンジョン飯というダンジョンならではの楽しみ方を堪能していた。出くわすモンスターを迎撃して行き、多くの食材を集めては、調理して食べていた。数時間もするとモンスターが出現しなくなった。


 どうやら自分達が狩られる側だという事を自覚したらしい。ダンジョン内にいるボス格の奴らが私達の討伐に乗り出し始めていた。そいつらは人型のようで人語を理解していた。どうやら盗賊と裏で繋がっているようだ。


「オーガ様、どうやら何者かがダンジョン内に侵入したもようです。しかも、ダンジョン内のモンスターを殺して料理をしている模様です。どういたしましょうか?」


 幹部の1人と思われる少年はそう言って報告する。その少年の耳は、オオカミ型のケモミミを持つキマイラだった。歳は、私と同じくらいの13歳のようだ。おそらくこのダンジョン内で一番の高年齢なのだろう。


 その隣には、ほぼバニーガールの格好をしたウサミミ美女が控えていた。実力的には、この少年と大差がないのだろうが、オーガを快く思っていないのか無口だった。どうやらオーガにはもう1人姉がいるらしい。


「お姉様が例のブツを作るために外へ出ているわ。私はここで留守番を任されているから外に出る事ができない。あなた達で適当に遊んで来なさい」


「はっ! まあ、可愛い女の子達だったし、死なない程度に痛めつけてあげますよ!」


 少年は、颯爽と出ていくが、後ろのウサミミ少女は冷淡な口調でこう言った。


「私は、殺すけどね」


 私達とケモミミ少年達との戦いが開始しようとしていた。この2人と、ベネットとステラの2人は、いったいどんな実力を秘めているのだろうか?

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