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第99話 番外編 神様と呼ばれる少女の捜索

 神崎かんざき真火流まひるは、14歳くらいの年齢で、賢者学校に入る女の子を探していた。電車に乗っても8時間かかるような片田舎へ向かう。段々畑の水田が目の前に広がり、素晴らしい風景を眺めていた。


 この辺は数100年も変わらずに稲作を行なっているらしい。この地域ならではの幻想的な風景だった。高い山々も遠くに見え、人が少ない事を物語っていた。透き通るような川が流れており、自然そのままの姿を保っていた。


「農村部のようだな。近くに座っている人々も方言をしゃべっている。どうやら都市部との交渉もごく僅かといったところか。年頃の女の子には住み辛い場所のように思うな」


 真火流まひるは、電車内を見回してみるが、二十代以下の女性の姿は見当たらない。みんな、四十代、五十代の女性や男性のようだ。農家特有の格好をしており、手は荒れていた。この場所に住む女の子といえば、どんな子なのかと気になるようだ。


「ここが神という少女が住む家か。見たところ、普通の農家だな」


 真火流まひるは、ジャックが教えてくれた住所に辿り着いた。道すがらに神と呼ばれる少女のいる家も聞いていたので、この家が間違いなく紙に記された住所である事を悟る。かなり大きな農家の家らしく、部屋がいくつもありそうではあった。


「ごめんください。賢者協会の者なのですが……」


 真火流まひるは、家の扉をノックして、家の人に少女の行方を訪ねた。家の人は、まるでお婆ちゃんのような人で明るく、良い人のように見える。とても神と呼ばれる少女を慕っているようだった。


「すいません。神と呼ばれる少女を探しているのですが……」


「ああ、神様ね! 神託に寄って、誰かが来るであろう事は知っておりますよ。さすがは、神様です。なんでもご存じであります。あの奥の部屋におらっしゃいますよ!」


「そうですか。では、上がらせてもらいます!」


「神様に会いに来たとは……。結婚を申し込まれるおつもりですか? 神様もお年頃ですものね。こんなイケメン男性の許嫁が居てもおかしくありませんよ!」


「いえ、そういう目的できたわけではありませんが……」


 真火流まひるは、ジャックがこの家に来たがらない事を薄々勘付いていた。家に来ただけで恋人扱いされてしまうのだ。好きな女の子のいるジャックにとってはこの上ない不快な事であろう。自分も必死で否定していたが、村人は少し異常なほど恋人扱いしていた。


「うふふふふ、神様はこの部屋におられますよ。では、邪魔者は退散いたしますね。後は、2人でごゆっくり。お風呂も沸いてますし、食事も時間になったらお呼びいたします!」


「はあ、どうも……」


「お二人の愛の時間は邪魔しないように注意します!」


 お婆さんは、嫌らしい笑みを浮かべて逃げていった。1日やそこら会った程度で恋人気分になる奴はまずいない。田舎特有の風習からなのか、すでに2人は恋人同士として認められていた。真火流まひるは気にせず、彼女のいる部屋へ向かって行く。


「うわぁ、女子高生でエッチな行為を……。少女漫画もだんだん過激になって来たのう。彼氏彼女の事情というアニメから性行為が露骨になって来おったわ。それに、ヒロインの成長の劇というのも気になっておったのに無いではないか!


 CLANNADで言ったら、渚の成長した劇とオッさんの名シーンが丸々カットしたようなものじゃぞ。主人公が自分で納得しておるような感じじゃし、駄作化しておるわ。漫画ならば、まだ面白いのかのう? 見てみたいのう……」


 扉を開ける前に、昔のアニメの感想を語る少女に違和感を覚えた。どうやら少女は漫画やアニメが好きなようで、古い物までチェックしているようだ。真火流まひるは扉を開けようか迷うが、仕事なので仕方ない。扉を開けた先には、色気のない少女が寝転んでいた。


(やはり昼頃の主婦のように寝転んでテレビを見ていたか。少女というから洋子(13歳)並みの年齢を期待していたが、精神年齢はとっくに凛子(18歳)を超えているじゃないか。


 それどころか、ダイアナ(35歳だが見た目は18歳くらい)やアリッサ(25歳だが偶に高年齢になる)を軽く超えているじゃないか。退職して1年くらいの日常に思えるぞ。今からこんなので良いのか?)


 真火流まひるは、少女の寝姿と孫の手で背中をかく姿に幻滅するものの、なんとか気を取り直して少女の姿を見る。綺麗な黒髪ロングのヘアースタイルと、幼い顔立ちの可愛い女の子である事を確認した。少女は彼の気配に気が付き、ゆっくりと後ろを振り返る。


「おー、賢者学校の案内人か。そろそろ来る頃だと思っておった。これでわらわもようやく自由を手に入れられるのだな。ジジババ共に軟禁されて、息苦しくてかなわんかったわ。随分とイケメンな男が来たようじゃのう。外国人など初めて見たわ!」


 少女は、神と言われるだけあって美しく神々しい容姿をしていた。黒髪ロングヘアーをなびかせる姿は、真火流まひるも息を飲んだほどだ。しかし、流れるように出て来るオナラによって空気と雰囲気をぶっ壊していた。


「もう少し、女の子らしく……、クッサ!」


「おい、年頃の少女に臭いとか言うな! トラウマになるだろうが! オババ共がオヤツの時間として焼き芋を差し出して来たのじゃ。屁をへるのは自然の摂理という物じゃ。まあ、座って饅頭まんじゅう煎餅せんべいを食すが良い。お茶もあるぞ!」


 少女は、お茶っ葉から手際良くお茶を入れる。茶こしや急須きゅうすなど、今の現代人では知らないようなアイテムが部屋の中には溢れていた。少女の着ている物も、浴衣という日本の変わった洋服だった。普段着は、コレと着物という物らしい。


「おっ、わらわの着ている物が気になるか? やはりイケメンといっても男の子だのう。考える事は女の子の裸や下着の事などか? 残念ながら下着は見せられぬが、オッさん共が隠れて買っていたエロ本ならばあるぞ!」


 少女は、ヨレヨレになった雑誌を渡して来た。何十年も前に、彼らが勇気を出して買った代物らしい。田舎というのは不審な行動をすれば一気に噂が広がる。エロ本一冊を買うことさえ、死と隣り合わせの危険な行為なのだ。真火流まひるは真顔で叫んだ。


「いらん!」


「特に、この女の子が一番人気じゃ。ほれ見ろ、折り目が付いて、素早く開けるようになっておる。このページの他にも、後5、6ページは開き易い加工が施されておるぞ!」


「だから、いりませんってば!」


「おお、いらんか。そういえば、今の時代には電子書籍という物があるのだったな。こんな雑誌は、もはや不要という事か。すまん、すまん」


「誤解を生むような発言はやめてください!」


 少女は、お茶を口に含み、話題を変える。お互いにまだ名前を知っていない事を思い出した。彼の名前を言おうとして、知らないのでぎこちなく接していた。


「あー、誰さんじゃったかのう? 別に、ボケたわけではないぞ。出会ってすぐに名前を名乗られても、すぐに覚えられる方ではない。さらりと名前を忘れる方が得意な方じゃ。なにせ、村人がわらわを頼って来るからのう。


 覚えても用事が終われば来なくなるのじゃよ。全く困った時の神頼みとは良く言ったものじゃ。用事の済んだ今では、御用達のオババが監視にちょくちょく世話しに来るだけじゃ。何か問題が発生した時の保険としてな」


「それで、年頃の娘にしては言動が年寄り染みているというわけですか。ちなみに、まだ一言も自己紹介は致してませんよ。私は、賢者学校の教師代理として、あなたを迎えに来ただけです。教師となるかも確定してはいませんよ。ただのアルバイトです!」


 真火流まひるは自分の素性をさっさと告げる。別に、望んで来たわけではない。神様と呼ばれる少女が彼女ならば、後は学校に連れ帰って他の人物に預ければ良い。ジャックにでも押し付けてしまおうと考えていた。


「うーむ、真火流まひるか。苗字を名乗らぬところを見ると、緊張しているようじゃのう。名前だけ言えばカッコよく見えるとでも思っている年頃か?


 ははあ、さては、わらわが黒髪ロングの美少女だったから、「黒髪ロングの美少女来た! これから1つ屋根の下で暮らせるようになんとか作戦を練らねば!」とか思っているだろう?」


「思ってません!」


「「ふん、所詮は田舎者の娘。風呂場でばったり出くわし、転けたふりをして押し倒してキスの1つでもしてしまえば、すぐにでも恋愛フラグが立つ!」とでも思っているのだろう? 」


「思ってません!」


「「そういえば独身の男性が幼女を養子にはできないので、これを機に結婚してしまおう。勢いに任せて籍を入れてしまえば、こっちのものだ。後は、泣こうが叫ぼうがムダだ!


 ふふふ、これほどの黒髪ロングの美少女を喰えるとは、神に感謝しなければな!」とか思っているだろう?」


「全く、これっぽっちも思っていません!」


 彼女は、真火流まひるの頑なな態度を見て少し悲しくなる。浴衣を緩ませて誘惑する態勢を取って来た。並の男ならば、すぐにでもアニマル化してしまうような妖艶な格好と仕草をしていた。肌を露出させ、ちょっぴりオッパイを見せる。


「くひひひひ、わらわはノーパン、ノーブラなのじゃ。これにはイケメンで無愛想なお前でも顔が緩むであろう?」


「風邪を引きますよ。もっと女の子らしく慎みのある格好をしてください! 今日は特別に許してあげますが、学校に戻ってからそういう格好になった場合は、どうなるか保証もできませんよ。神様と呼ばれる人物である威厳を保ってください!」


 真火流まひるは、教師のような毅然な態度を見せる。彼女の服を整えて、少しも興味ないという事を体現していた。彼の心には、すでに赤馬あかば凛子りんすしか見えていない。たとえ彼女が全裸でもそれは変わらないのだ。


「ふっ、合格というところじゃのう。これならば、わらわと一緒に生活しても問題ないだろう。お主との共同生活を認めてやるぞ」


 神様と呼ばれる彼女は、無理矢理にも真火流まひると一緒に生活しようとしていた。どうやら本気で賢者学校に来たいようだ。何かしらの目的があるのであろう。真火流まひるは、その目的には興味を示して来た。


「君の名前を聞いていなかったな。どうして、賢者学校に来たいんだ? 君ならば、村人からも大切にされているだろう。そのまま村に居座れば、神として丁重に世話されるんじゃないのかい。賢者になる必要もないだろう。それとも、何かあるのか?」


 神様と呼ばれる少女は、ゆっくりと自分の過去を話し始めた。

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