となりのカノジョ。
短いです(笑)
私は手を伸ばす。
ベッドで伸ばした手が彼女の肌に触れた。
「なに?」
微笑しながら振り向く。
私に背中を見せていた彼女は昨日ナンパした女性だった。
初ナンパで、初ホテルのベッドで目が覚めたら彼女の方が先に起きていた。
「カナさん?」
同い年だったか、年上だったか、年下だったか忘れてしまった。
辛うじて名前は覚えていた。
「あなたの方が年上なのに、さん付け?」
年下だったのか。
けれど、口調はむしろ年上の貫禄がある。
「お腹、空きません?」
そのせいか丁寧な口調になってしまう。
「そうですね、少し空いたかもしれません。」
「もし良かったらなんですけど、ここを出て朝ごはんでも食べませんか?」
まだ少し、一緒に居たいと思った。
色々話したと思うのに何も覚えていない、昨夜の出来事も。
酔っていたわけでもなかったというのに。
「ええ。」
少し考えてからカナという名の女性は頷いた。
ホテルをチェックアウトし、外に出る。
眩しいくらいの日差しが私の視界を奪う、暗いところから明るいところに出ると起こるあんな現象。
街も人ももう動き出していた。
「何が食べたいですか?」
「軽めのもので。」
「わかりました。」
もう、違和感無く私のほうが年下のようになっていた。
彼女も何も言わない。
行きつけの喫茶店に行く、あそこならモーニングがやっていたかな。
変わったモーニング。
「いい?」
「え?」
彼女はそう言って私の腕に絡めてきた。
「嫌?」
「嫌じゃないけど・・・」
「じゃあ、いいですよね?」
身をさらに寄せてくる。
つけていた香水がほのかに薫った。
しつこくないのは嫌いじゃない、むしろ歓迎する。
「カナという名前しか覚えてなくてゴメン。」
謝る。
「いいですよ、まずは名前だけでも覚えててくれれば。」
すれ違う人が私達を見ながら通り過ぎてゆく。
彼女はかわいい人だった。
多分、倍率は高かったはずなのに彼女は私と居る。
何が一緒に居る理由なのだろうかと思う。
「よかったら名前以外の事も教えてくれない?」
「どうしようかしら?」
ふふっと笑って私を焦らさせた。
「知りたい、カナのこと。」
「私の事?」
「出来たら、その・・・この場だけじゃなくて・・・」
「とんでもない女かもしれませんけど? 私。」
「そんな悪女なの?」
冗談で聞いてみる。
「のこのこナンパに乗るなんて、自分でもどうかと思いますけど。」
「そんなことない、カナだけじゃないよ。」
「そうですか? でも、ハズレじゃなくて良かった。」
「ハズレ?」
「ええ、チマキさんでよかったです。」
「私も、声をかけてよかったと思ってる。」
視線が絡んだ。
ぴったりハマったんだろうな、私達。
出会うことはあっても、こうなる確率は低い。
私が声をかけるのを躊躇したり、彼女にその気がなかったりしたらこうならなかっただろう。
「私と付き合ってくれますか?」
「・・・それ、私のセリフ。」
先に言われてしまった。
でも、よく考えると順番が逆(笑)。
「先手必勝です。」
にっこり笑う、思わず見とれてしまう微笑。
「まだ出会ったばかりだけど、よろしく。」
立ち止まってのやりとり、ここら辺はきちんとしたい。
「昨日の今日ですけどね。」
「だけど、好きだという気持ちは確実にここにあるよ。」
心臓をたたく。
「チマキさん。」
「さあ、朝ごはん食べに行こう。お腹が空いて死にそう。」
彼女の腰を抱く。
カナは嫌がらずそのままにさせ、私達は再び歩き出した。
読んで頂いてありがとうございました( ´∀`)