家に帰っても疑問は残る。
漣は家まで送ってくれた。
といっても、家は隣だから「送った」に類するかどうかは分からないけれど。
玄関に入るとお母さんの怒鳴り声がキッチンから聞こえてきた。
「ちょっと、ゆか!こんな時間まで帰ってこないなら連絡の1つくらいいれたらどうなの!」
そんなに怒ってるならここでしたらいいのに、どうしてキッチンから出てこないんだろう。
けど、今日は連絡を入れようにもスマホを家に忘れてきた為、出来なかったと思う。
「今日、スマホ、わすれちゃったんだよー!」
「だったら公衆電話で家にかけるなり、早く帰るなりしてちょうだい!」
うーん、善処するー、と適当に返事をしながら、私は自分の部屋に行くため、階段を上った。
「メール、来てっかなー」
部屋に入るなりペンダントをはずしつつ、メールの通知を確認する。
すると案の定、紫乃からメールが来ていた。
『ゆか、彼氏くんと、でーとしたんだって?』
「なーにがでーとだ…」
紫乃は何度言ってもふざけて漣のことを彼氏くんと呼ぶ。
"デート"が"でーと"になっているのは彼女なりの演出なんだろう。
『だから付き合ってないって言ってるでしょ!漣と行ったのは昔私の迷子になった山だよ』
するとすぐに返信が来た。
まさかスマホをずっと握ってたのか?
『あーあ、デートだってのに色気ないねぇ~』
『デートじゃないから色気はいらないの!』
暫くこんな不毛のやり取りを続けた結果、お母さんに「いつまでケータイ、さわってんの!」としかられてしまった。
続きはー……明日でいっか!と、スマホを置いた。