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内海所長と黒崎くん。  作者: R884
6/18

ライディングジャケットって大事だよね

6.衝撃のファーストブリット


黒崎君がすでに研究所に着いちゃってるが今日子視点のお話をしようと思う。



8月3日午後7時、長野市松代町の某山中。


その日、内海今日子はすこぶる機嫌が悪かった。

新開発の白蜘蛛の動作テストのためここ2週間ばかりはほぼ徹夜続きで、平均睡眠時間は3時間を切る勢いだった、しかも趣味のバイク作りもマネージャーや整備主任から「今の仕事が終わるまでやっちゃだめ(やらせません)」と言われてるのも大きい。

好きでやってる機械いじりや設計だが、お仕事でやる以上少なからずストレスは溜まるのだ。


無数に並ぶモニターが出力グラフを正確に示している。


今日も研究所員と松本の駐屯地から出張って来ている自衛隊員のおっさん、おじさん、お姉さんと年上に囲まれてモニターと絶賛にらめっこ中だ、だいたい私の仕事は白蜘蛛を組み上げた時に終了しているんだ、私が組んだ機体がちゃんと動かないわけがない!タイの工場で作った量産機の故障クレームなど知ったことか、そんなのは部品精度と組み立て技術が雑なせいだ、現に目の前の白蜘蛛は完璧に動いてるじゃないか!メイドイン私万歳!

仮設テントで寝不足と集中力が切れた状態でブチブチと愚痴をこぼしながらモニターを見つめていると、夜風に乗ってエンジン音が耳に入って来た。

パンパンと小気味良い小排気量の2ストロークエンジンがすごく元気に吠えている。

自分の開発した新型モーターは音が静かすぎて爆発音がないのが唯一の欠点だ。


「山崎課長ちょっと席を外すぞ」

「はい。危ないからあまり遠く行っちゃだめですよ」

「私は子供か!じゃ後はたのんだぞ」


暗視ゴーグルをつけてフラフラと音を追って林を突っ切る、視界が拓けた先に1台のバイクが止まったのがちょうど見えた。


「やっぱりNSR50だ!やっほー超かわいーぞ!!」


ライダーの人がヘルメットを取ってこっちを見てる、どれどれどんな人が乗ってるのかな?

カチカチっとゴーグルの調光をして倍率を上げてお顔を拝見。・・・・どれどれ


ゴロゴロ、パッシャーーン!!


頭の中に雷が落ちる、なんだこれ!ビビビどころじゃないぞ脳みそ痺れた。

MOMOのジェットヘルメットを脱いで現れたのは短く整えられたサラサラと輝く黒髪。

まだあどけなさが残る瞳は長いまつげに縁どられ、優しげでどこかなつかしさを感じさせる。

引き締まった体躯に、メッシュのライディングジャケットを着こなして佇む姿はまさしくバイクに乗った王子様だ、どストライクだ。やばい、22年生きてきて初めて男子にときめいてる。ときめきトゥナイトだ。

はっ!まさかこれが噂に聞くプラシーボ効果?いや違うな吊り橋効果?


・・お、落ち着け私、と、とにかくご挨拶をせねば。ここが私の人生の分水嶺かもしれん、とにかく慎重に一歩踏み出すんだ。



「や、やぁ、いいエンジン音だね、少年」


髪はボサボサ、ポケットの中の左手に汗をかき、心臓はレッドゾーンにぶちこみながら、内海今日子は、黒崎竜一とのファーストコンタクトを取ることとなった。

この出会いが世界にもたらす影響はずいぶんと大きいものだったのだが、それをを知る者は少ない。

お読みいただきありがとうございます。

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