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内海所長と黒崎くん。  作者: R884
3/18

白衣を着てバイクに乗るとバタバタうるさい

3.白衣



ひしゃげて開いてるゲートを抜けて脇道を走る。えらく新しい道だな、街灯は無いけど真新しい黒々したアスファルトで道幅もある、すごく走りやすいなココ。15分位道なりに走っていると、


パァーン、プン、パァーーン パパパパン


「やっぱり、俺のバイクと違う音がまざってるな」


ヘルメット越しに愛車NSR50以外のエンジン音が山の中から聞こえる。


「おっ、近づいたてきたかな」


パパパパン


「あれ、山の中から?」


頭の中に?マークを浮かべていると山を削りだした様な採石場?みたいな所に出た。


「あちゃー行き止まりだったか?」


バイクにまたがって呆然としていると、ヘッドライトの先の方でなんか白いものが動いたのが見えた、ありゃ、しかもこっちに向かってきてないか?

ジャリ、ジャリと足音が聞こえる距離まで白い物体が近づいてくるとライトに照らされてハッキリしてきた。白い服を着た髪の長い女性だった。


「えっ、貞子?」


「やぁ、良いエンジン音だね、少年」


ボザボサのロングの黒髪と少し大きめの白衣を着た女の子が、ニッコニコしながら右手をシュタと上げて声をかけてきた、えっ、誰?なんだこの状況。

現時刻は7時40分、真っ暗な山の中をバイクで走ってくると採石場のような場所に出て、白衣の女の子?に声をかけられた、なんだコレ!





街灯代わりにエンジンを掛けたままのバイクを横に白衣の女の子と話し始める。


「私は内海今日子、今日子お姉さんと呼びたまえ。少年は学生さんかな?」


お姉さん? 確かによく見ると年上なのか? 背がちっちゃいのと薄暗いのでよくわからん。ダボダボの白衣にあちこち寝癖のついた腰位まである黒髪。

あっ、でも胸が結構あるわ。大きな胸の上にごっついゴーグルぶらさげてんな、暗視ゴーグル?。

頭の中は?マークだらけだが、まぁ、挨拶くらいはしないといけないな。


「黒崎竜一です。美術専門学校2年生です」

「専門学校の2年生ってことは20歳か? お姉さんは22歳の会社員だ」

「いやーそれにしても今時めずらしい、NSR50だね。しっかりと整備された完璧な音だ! 焼けたカストロールの香りもたまらん!! ちょっと前からとても心地良い2ストロークエンジン音が聞こえてきたなぁと思ったらフラフラと導かれてしまったよ、お姉さんは」

「はぁ、それはどうも(なんかあぶない人なのか?しかも白衣って、お医者さん、理科の先生?)」

「ん、でもこの音は80ccにしてるのかな。キャブもチャンバーも純正じゃないよね」

「えっ!50ccじゃないの。音だけでわかるの!」

「わかるよそれくらい。何だ黒崎少年、自分のバイクじゃないのかね?」

「親父のお下がりなんですよ、これ」

「ほぅ。それはなかなかいい腕だね親父さん。ナンバー原付のままだから違法改造になっちゃうけどね」

「えぇ〜っマジっすか。親父の奴、息子に違法改造車乗らせんなよー」

「大丈夫、大丈夫、見た目じゃ全然わかんないから」

「そうなの、それならいいですけど」


「それより今日…内海さん。こんな真っ暗な山の中で何してるんですか、もしかして迷子ですか?」

「失礼だな黒崎少年、私は迷子なんかじゃないぞ。今は大事なテ…テ、テッテケテ」

「テ?テッテケテ?」


夜の山中で良く分からん話題に花を咲かせてるとガサリと上の方から何か気配がして視線を上に向ける。


ガサガサガサッ。バヒュ


すると採石場の高さ30mはある切り立った崖の上から何かが飛び出してくるのが見えた。星空をバックに白い塊が落下してくる。


「へっ、虫?」

「あっ、そうだ。ヤバ。おい、少年」


ギョブン!!!


目の前のお姉さんがあわてだしたのと同時にでっかい虫が落ちてきた。



「えええ!?な、な、なんじゃこりゃー!!!!」


俺達の目の前に軽自動車位の大きさの真っ白い虫が崖の上から落ちてきた。


いや本当に虫なんだよ、足6本だし角生えてるし、大きさ無視すればカブトムシなんだよ。

しかも30m位上から落ちてきたのにフワッって感じで着地するし、なんかブブブ唸ってるし、角キンキン鳴ってるし、目光ってるし。


「…ん、目が光ってる?」


カチッ、ポシュ。クコーーーー。


白くて巨大なカブトムシの背中が後ろにスライドして開いていく。虫の中でなにやらゴソゴソと蠢いているのが見える。なんだ?


「くぅーっ、シートベルト外れない!」


中から人の声が聞こえた後、しばらくするとヒョコと中から人が出てきた。


「もう、所長!!こんな範囲外の所まで来て何してるんですか!探しましたよ」


「あちゃー。来ちゃったよ」


カブトムシから出てきたお姉さんがまくし立てると、白衣のお姉さんが額に手をあてて天をあおいだ。


お読み頂きありがとうございます。

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