拝啓、空割り
六月二日、金曜日。明け方、落雷の音で目を覚ます。続いて届くは雨がアスファルトを叩く音。
僕は、自転車で通学する心配だけして再び意識を闇に預けた。
起きなければと、目を覚ます。空を見やれば、眼前に群青が広がった。柄にもなく、声を出した。
枕元のカメラに手を伸ばす。窓から顔を突き出して、右半分には青空、左半分にはひび割れた雲。
境界は引きちぎられたように、そこからひびが広がり、雲はうっすら光を通した。雲の隙間を、ぱしゃり。切り抜く。
正直写真は上手くない。目に焼き付けて補った。
いつもよりゆっくり家を出た。本気で漕げば間に合う時間。でも、こんな日にまで急ぐ必要はない。空を見あげて、ゆっくりいこう。遅刻したとて、世界は俺を罰することなんてできやしないんだから。
爽やかな、夏の入りかけ独特の青草の匂いが鼻をつく。すぅ、と大きく深呼吸。
行き先は最寄り駅。調べてみれば、あと一本だけあると言う。ホームに降りれば、別の学校へ進んだ想い人を見かけた。同じ電車に乗るらしい。
急くことはない。人生は長い。気分次第で、歩けばいい。なにか不幸があったとしても、きっと幸福を拾えるから。
明日は土曜日。いつもより早起きして、たまには散歩でもしてみようか。
了