薬時代
頭髪の薄い男性が『カミノケハエール』という薬を飲むと、たちまち髪の毛が生えてきた。
『ワカガエール』を飲んだおばさまの顔からはしわがなくなり、肌にツヤが甦った。
『アシハヤクナール』を飲んだ小学生は運動会の50メートル走で一着になったし、マンネリ気味のカップルは『スキニナール』を飲んで愛しあった。
世の中は薬の時代。人々は薬を飲んで、それぞれの欠点を克服していった。全てが丸く収まり、円滑に進む素晴らしい時代。幸せの到達点と言ってもいいだろう。
とある製薬会社の会議室。上役が部下達に言った。
「では、今日の会議だが、今、我が社で開発中の『ケッテンデキール』について…」