俺は異性愛者だからな!
先生が教室に来た。
「みなさんおはようございます」
先生は生徒たちにあいさつをしてから教卓の前に向かった。この先生は俺たちのクラス二年四組の担任の大海原都先生である。
俺は、教室の入り口に一人の人間が立っていることに気付いた。
俺がその人影を気にしていたその時に先生は言った。
「今日は転校生が来ますよ!これから来る転校生は女子なので、このクラスでは唯一の女子になるかもしれませんが仲良くしてあげてください」
そういえばなぜかこのクラスは男ばかりだ。しかも異常なやつも一人いるし……
噂で聞いたがこのクラスの生徒の組み合わせは芸太郎が決めたそうだ。
あいつ、女よりも男のほうが好きだから全員男のクラス構成にしたんだろうな。
転校生の子には本当にお気の毒だよね。まぁ、この国自体、異性愛は認められていないから外からのスパイである俺と、マルチセクシャルの能力を持った芸太郎を除けばエロい目で見る人はいないと思うけどね。
あ、マルチセクシャルというのは男でも女でも人間以外の存在に対しても恋愛感情や性的興奮を持てる精神異常的な能力だよ。
まぁ、この能力を勉強に応用すれば学習内容をかっこいい男や可愛い女などに脳内で擬人化することによって勉強することにより性的快感みたいなものを得られるようになる。
しまいには勉強する内容を愛するようになり学習能力を飛躍的に向上させることすら可能だ。そのおかげで奴はやたら学力が高い。
お。転校生が入ってきた。……おおおおおおおっ!可愛い!なんて可愛いんだ!
ああ。これは現実であってくれ。嘘であってほしくない。今日がエイプリルフールだからといってこのクラスに転校してくるのは実は嘘です。なんてことはやめてくれよな!
「殺姫殺那です。よろしくお願いします」
転校生の紹介が終了した後、俺は一時間目の授業があるパソコン室へとけんじ君と一緒に向かった。けんじ君と一緒にパソコン室に向かっていると、殺那がこっちに向かって歩いてきた。
「けんじ君、久しぶり」
「久しぶりだね。殺那ちゃん」
ん。んんん?何だ。けんじ君まさか殺姫殺那と知り合い?嘘だろ……?
「おい……お前らって友達同士なのか?」
「うん。」
「私たち、春休み前から知り合いだよ。」
「まさか恋人同士だったりして。」
「……」
あ……殺那に引かれたか?おいおい、二人してそんな冷淡な目つきで俺を見てくるな。
「丁君、それはないだろ」
「そういうこと言うのやめてよ。私は異性愛者なんかじゃないから」
「外国人じゃないんだから僕は現実世界の女に恋はしないよ。殺那ちゃん現実世界の男なんて興味ないよね?」
「うん……私、人間は同性でも異性でも愛せない」
「へぇ。対物愛者か」
「うん」
俺だけ異性愛者ですよ~だ!どうなっているんだこの国は。異性を愛せないとかおかしいだろ。少なくとも高校を卒業するまでこの高校で集めたデータを本部に報告し続けなければいけない。
俺は異性に恋はできない期間があと二年間もあるじゃないか。辛いな……。
「殺那ちゃんはどんなものが好きなの?」
俺は殺那にきいてみたらけんじ君が答えてきた。
「銃とかその他の武器とか」
「そうなのか」
随分と物騒な恋愛対象じゃねーか!
「丁君、あなたの恋愛対象は?」
「人間の女性」
「………………………………………」
沈黙ッ!!
沈黙とともにまた二人が俺を冷淡な目つきで見る。
いやいや。そんなに驚くことないだろう。外国ではこれが普通なんだから。
君たちのほうがおかしいんだよ。けんじ君は二次元のレズビアンの女が恋愛対象で殺那は銃が恋愛対象。普通に考えて日本とかだったら変に思われるから。
特に銃に恋をしているってどんだけ銃オタクなんだよ。どうすればそこまで「物」を愛せるのか教えてほしいぐらいだ。けんじはまぁ、人間のキャラクターだからまだわかる。
殺姫殺那……病気か?銃に恋してるのか?
この国にいるやつ何だか変な奴多いぞ?
「犯罪者だね」
「はぁ?」
はぁ?犯罪者ぁ?
「丁君のあだ名、犯罪者でいい?」
おいおいおい。確かに事実かもしれないけど……さすがに『犯罪者』なんてあだ名つけられたら傷つかないか?殺那ちゃん……さすがにそれはないぜ。
「お。いいね。だって男が人間の女性を好きって言った時点でもうこの国では犯罪だよね」
おいッ!なにのっているんだよけんじ君。いくら友達でも『犯罪者』はひどいって……。
「うんうん」
「おーいっ!やめろよ」
「心配するなよ丁君、冗談だってば。確かに異性愛は犯罪だけど君もさっき言ったこと冗談でしょ?」
「え……まぁな……」
本気なんだけどな。まぁ、ここで本気だなんていったら何されるかわからないから冗談ということにしておきますよ。
対物愛……俺には理解できないぜ。
三人がパソコン室に到着して間もなく、一時間目の授業が始まった。そして授業が終了した後に、また三人は一緒に教室に向かう。