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男男帝国  作者: %s
1章~穂模川芸太郎編~
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転校生?

 けんじは芸太郎に何度も背中を叩かれたり体中を蹴られたりした挙句にバッグを水たまりに投げ込まれ、屈辱的な気持ちに浸りながら水たまりのもとで膝をついていた。

 水たまりに膝をついているけんじのもとに一人の人間が近づいてくる。

 今、土砂降りの雨だというのに彼女は傘を差さずにけんじに向かってゆっくりと歩み寄ってくる。そしてけんじの目の前に立ち止り、けんじを見下ろす。

 「……」

 彼女はけんじを無言で見る。

「誰だ?芸太郎か?死ね……戻ってくるなよクソ。」

 くそ……戻ってくんなよ。どうして何もしゃべらないで僕の前に立っているんだ。

 ん?靴が違う。あいつは黄ばんでいて汚い運動靴をはいていたはずだが今、僕の視界には黒い革靴……。

 けんじは顔を上げた。

 そこには男男高校の制服を着ている少女。

 「……!」

 この人は誰だ?

 僕は知らない。

 会ったこともない。

 こんなに雨が降っているのに傘も差さないでどうしてこの人は僕の前にいるんだ。

 「ねえ。あなたは男男高校の人?」

 あ。話しかけてきた。

 「え……うん。そうだよ」

 「ここにいてもさらに濡れちゃうから屋根の下のベンチのところに行こう?」

 「うん」

 僕は水たまりから立ち上がり彼女の後をついていった。いったい誰だ?この人は。どうして僕に近づいてきたんだ?まさか芸太郎の姉?妹?……いや。そんなことは無いはず。

 「はい……これ……」

 彼女は僕にタオルを差し出してきた。

 「ん?使ってもいいの?」

 「うん。」

 「いや……そのタオルは君が使ったほうがいいと思うよ?わざわざ水たまりの上で座り混んでいるこんな馬鹿に濡れてまでわざわざ構ってくれたというのにさらにタオルまで貸すなんてどこのお人好しだ。そして君は比較的髪が長いしそんなに濡れてたら簡単には髪が乾かないだろうからタオル使うのは自分自身を優先したほうがいい」

 「二つあるから大丈夫」

 「そうか。ならありがたく使わせてもらうよ。ありがとう」

 用意周到だ。ありがたい。

 僕はそのタオルで頭をふく。

 「僕は百合園けんじ。君の名前は?」

 「私は殺姫殺那さつきせつな、男男高校に転校したの。新学期から男男高校に通学することになる。」

 「よろしく」

 「こちらこそ」

 殺那はぬれた髪をふいた後、携帯電話を取り出した。

 殺那ちゃん。なんか携帯いじくりだした……。

 ……殺那は黙り込んで投影式のキーボードを打ち続ける。

 なんか携帯を床において携帯から地面に投影されるキーボードを恐ろしい速さで操作している。しかも画面には謎のアルファベットや記号が大量に表示されている。

 ハッカーか?お前は。

 殺那が黙り込んでしまったので僕は殺那に声をかける。

 「そうか……お気の毒だね。殺那ちゃんは今年の新学期で何年生になるの?」

 「二年生」

 殺那はそう答えるとキーボードから手を離して携帯電話をポケットにしまった。

 サイバー攻撃でも仕掛けていたのかな?まぁ、そんなことは無いか。

 それにしても僕と同じ二年生ならついていないね。芸太郎と同じ学年だから奴とにからまれる可能性が高くなる。

 「殺那ちゃん、ついていないね」

「うん。さっき、けんじ君を痛めつけていた人でしょ?あいつがいるからでしょ?ねえ、あいつってオブジェクト?」

 え……芸太郎がオブジェクトだって事を知っていたのかよ。僕がこれから言おうとしたことすべて先に言いやがった。この人は男男高校の下調べをしていたのか。用意周到だ。 

 「そうだよそうなんだよ。どうして知っているの?」

 「知り合いが君の高校にいるからその人から聞いた。あと、君の事もある程度は知っているよ?」

 そういうことか。

 ……ということは最初からこの学校に芸太郎がいるとわかっていたのにここに来たって事か……勇者だ。

 僕の目の前に勇者がいる。

 いや、馬鹿かな?

 芸太郎の事を知っている人ならまずこの高校に入学しようと思う人はいないと思う。

 僕の学年は明日から春休みで春休み明けから高校二年生だ。つまり二年間も奴の奴隷として学校生活をすることになる。

 ほかにも百合野宮(ゆりのみや)女子高校とか雄都(おすと)高校とかがあるのに男男高校を選ぶなんてどうにかしている。そう思った僕はこう言った。

 「君馬鹿か?この高校選ぶなんて。」

 「うん。」

 なんか真顔で肯定した。

 君、馬鹿に見えないけど?絶対天才か何かだろ?

 いや……それでも学力が足りなくてこの高校しか転校先がなかったとかかな?

 何だか悪いこと聞いちゃったかな。

 それとも何か考えがあってあえてこの高校に来たのかな?

 「まあ。そんなことよりこの本見てよ。」

 彼女はバッグから辞書のような分厚い本を数冊取り出してきた。

 「この図書館にあった本だよ。『武器の歴史』、『銃器百科事典』……。」

 武器?銃器?んん?武器オタク?

 「この本お勧めだから後で見てみて。すっごく面白い。最高よ!ふふふ。私が読み終わったら借りてみてね。それか今一緒に読む?」

 うわ……なんかテンション高くなっているよこの人。

 でもわかる。自分の好きな物の話しているときってなんか話したくて仕方がないよね。テンションあがるよね。

 まぁ、僕もFPSゲームとかで銃とかにはなじみがあるし少し興味があるから見せてもらうことにするよ。

 芸太郎からBL系の本を無理やり見せられるよりはずっといい。いや、むしろ楽しいぐらいかな。

 「うん。読もう」

 僕はその銃の本に興味があるので読んでみることにした。

 「やったっ!」

 彼女はその分厚い本を開いてページをめくる。

 「200ページ目ぐらいだったかな……私の愛銃があるの」

 へぇ。愛銃か。僕はあるゲームでソ連の有名なアサルトライフルをよく使っていたな。 

「あった。この銃。凄いよね。かっこいいよね。連射速度すごく速いし装弾数多いし、形もかっこいいし、大好きっ!」

「へえ。」

「こっちの銃は装弾数が二発だけど小型で……」


 ……


 2時間が経過。


 彼女が話し始めてから2時間が経過した。


 どんだけ銃が好きなんだよこいつ。

 でも、僕は彼女の銃の話は結構面白かったと思う。そしてこの本も結構好きだ。

 「あの……そろそろ帰ってもいいかな……もう暗いし、雨やんだし」

 「あ……ごめんね」

 「いや、わざわざありがとう。話が長くて疲れたけど君の銃の話はためになったよ。今までゲームで弱いからと馬鹿にしていた銃でも実物には思いもしなかった機能とか性能があるって事がわかったよ。ろくにその銃の事も知らないくせに馬鹿にしていてその銃に申し訳なくなったぐらいだ。」

 「あ……ありがとう。私、嬉しいよ。銃の事を詳しく知ってもらえて嬉しい。また話そうよ」

 「うん。」

 「それにしても暗い。もう8時だそろそろ帰ろうか」

 僕がそう言ったその時!

 僕は自分の後頭部に何か固いものが当たっている感覚があった。

 僕が振り返るとそこには銃を持った高校生がいた。僕は銃を突きつけられている。

 そしてその後ろにもそいつの仲間らしき二人の高校生。つまり僕は今、命の危険にさらされている。


 高校二年生で死亡の危機……。

 

 

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