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男男帝国  作者: %s
1章~穂模川芸太郎編~
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ウェポンガール

 武器って最高だよね。私は人間を愛せないけど武器は愛せる。

 武器よりもそれを使う私たち人間のほうがよっぽど恐ろしく危険な存在だよね。

 武器よりも人間のほうが危険。

 武器は自分だけで人を殺せないけど人間は自分から人を殺せる。

 人を恨むことができるのは人間。

 憎い相手を殺そうと考えるのは人間。

 人を殺すために行動することができるのは人間。

 そして、今まで数えきれないほどの人間を殺してきたのは人間。

 人間は戦争をして人間を殺す。

 人間は銃で撃って人間を殺す。

 人間はミサイルや爆弾で人間を殺す。

 人間は毒ガスで人間を殺す。

 武器は「人間を攻撃するため」という人間の勝手な都合によって生み出されて武器は道具であるがゆえに人間の思うままに操られ、役に立たなくなったら捨てられる。

 武器は人間の代わりに「殺戮」という不名誉な仕事を引き受けてくれる。

 どんなに周りから悪く見られようとどんなに嫌われようと自らの使命を全うする。そんなまっすぐで純粋で一途で順従な彼らを私は愛している。

 私が彼らを裏切ることはできるけど、彼らは絶対に私……いや、私たちを裏切らない。

 彼らは私に尽くしてくれて守ってくれて正直でいてくれて順従でいつもそばにいてくれて私の愛をすべて受け止めてくれて私のすべてを受け入れてくれて私に無限の勇気を与えてくれてどんな時でも何があってもたとえすべての人間が私を恨んでも、どんなに危険な状況に陥っても最後の最後まで彼らは私の味方でいてくれる。

 私は望んでもいないのにこんなに汚れた醜い世界に生まれてきた。

 私がCAの能力を使えるからといって人々は私に過酷な仕事をさせてきた。スナイパー、テロリストの制圧、潜入捜査、殺し屋。私はそれらの仕事を六歳の時から経験している。六歳ころから何人もの人間を殺してきた。初めはとても怖かった。たとえどんなに強力な能力を持っていても子供であることに変わりはないしCAの能力を持っていても体が頑丈になるわけではないから敵に撃たれたり刺されたりすれば私は死んでしまう。

 しかも私は強力な能力を持っているがゆえに周りの人間から恐れられて誰一人と私に近づこうとしてこなかった。しかも外を歩いていれば常に暗殺者が私を狙っていた。

 私は自分の味方なんて一人もいないと思っていた。仕事仲間も私を便利な道具みたいに扱っていて危険な仕事ややりたくない仕事などすべて私に押し付ける。 

 私は押し付けられた仕事を断ることはできなかった。だって断ったら即首にされる契約でそうしたら私は収入がなくなって生きていけなかった。その時私の両親は死んでいていなかったからお父さんの研究室の研究員の人に育てられていた。だけどその人は私を狙う暗殺者に殺されたから私は自分自身の力で生きていくしかなかった。

 私はずっと命の危険のある仕事をしているうちにあることに気が付いた。私は力強い味方がいつでもそばにいてくれたことに気が付いた。私がいつも使っている銃やナイフなどの装備だ。

 人間たちは私の事を守ってくれない。むしろ私を危険な戦場に放り込み、苦しめる。

 だけど武器たちは違う。例えば銃はいつも私を守ってくれた。私が引き金を引けば動いてくれる。そしてちゃんと標的を狙えば弾が標的に命中してくれる。そして私の目の前を芸術的な赤色で染め上げてくれる。私に代わって殺人という汚い仕事を何の躊躇もなく引き受けてくれる彼らに私は恋をした。

 武器は限りなく優しい。人間たちは私を戦場という地獄に送り出したが武器はそんな地獄にまで何の文句も言わずについてきてくれた。彼らは絶対に逃げずに私と戦ってくれるし絶対に裏切らない。私は今まで何年間も私と一緒に戦ってくれた武器たちに対しての感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。

 武器は私が大切にしたら大切にした分だけそれに応えてくれる。

 壊れても修理をすれば元気になってくれる。毎日メンテナンスをすれば正確に動いてくれる。私が彼らの個性を知れば彼らの力を最大限に引き出してあげることができる。

 そうやって武器と私の間には絆が生まれてお互いを思いあってきた。

 私は望んでもいないのに人間の勝手な都合でこの世に生まれてきて、望んでもいないのに人間社会という醜い世界で生きていくことを強要されて、望んでもいないのに人殺しという仕事を強要されて、そして役に立たなくなったら捨てられるという恐怖に怯えながら毎日を生きていく。

 私も武器もそのように世の中で似たような扱いを受けながら人生を供にしてきた。私は自分自身と同じ境遇にある存在に気付けて本当に幸せだった。

 私は武器に救われてきた。

 私は武器を愛している。

 私は人間を愛せない。動物を愛せない。だけど私は武器は愛している。

 

 

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