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男男帝国  作者: %s
1章~穂模川芸太郎編~
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Brotmesser

 4月の夕方の6時。外は薄暗いはずだが男男学園地区周辺は、さまざまな施設の照明の明かりで全然明るさに不自由はない。

 私は下校途中に見覚えのある人物を見た。

 丁だ。

 この人は国外からのスパイみたいなんだけど私にスパイ活動だだ漏れだよ。

 私はこの人とこの人のスパイ本部との通信を傍受しているから情報が私に入ってくるの。皮肉な事にこの人はスパイのくせに逆に私にスパイされているような状態だね。

 この人、異性愛者診断の時に1回目は『異性愛者』と診断されて正式な個人IDが取得できなかったのにのになぜか2回目は正式なIDを取得していたみたい。

 それを怪しく思って色々調べてみたら外部からのスパイみたいだったから驚いちゃった。

 

 「丁君」

 「あ。殺那ちゃん」

 丁は両手に黒いナイフを握っている。

 「あれ?そのナイフはどうしたの?」

 「これの事か。俺の親はドイツの包丁会社の社長なんだ。そしてこれはその会社の製品なんだけどいらないからこれからそこのリサイクルショップで売るつもりなんだ。俺はこれと同じナイフをまだ10丁は持っているし、このナイフ凄く高い値段で買い取ってくれるんだ。一丁10万円。最初この店の店員を疑ったけど本当に十万円で買い取ってくれたんだ」

 「ねえ!そのナイフ見せてよ!」

 私は丁君の持っていたナイフを見せてもらった。

 「……これは……」

 「どうしたの?」

 「これはBM。日本出身の包丁職人が社長のドイツ企業ブロウトメッサー社の商品だよ。しかもまだ未発売。しかも試作品!?あなた……。まさかあなたがあの大企業のブロウトメッサー社の息子だなんて……」

 「そうなんだよ。でも俺はお父さんの会社が嫌いなんだ。俺のお父さんは昔はパン職人のために包丁を作る小さな工場をやっていて、一人一人のパン職人の要望に応えて特注の包丁を一つ一つ手作りしていたんだ。だけど俺のお父さんは儲かって会社が大きくなってくると今度は戦闘用のナイフや銃器などの人殺しに使う道具を生産するようになっていったんだ。表では調理用の包丁メーカーとして有名だけど裏では戦闘用のナイフの世界シェア80パーセントを誇っていて軍隊だけでなくテロ組織にもたくさんの銃や刃物を提供してるみたいで一種の『死の商人』みたいなものなんだよ。俺はその会社の次期社長候補だったけど俺は人殺しの道具なんて作りたくないと言って家出したんだ。そしてその後、諜報関係の組織からスカウトを受けて今に至るんだ。俺は本当はパン屋さんになりたかった。そのパン作りの修行のために一応たくさんこのパン用ナイフを家から持ち出したんだ。お父さんが作った試作品段階の物だけどこんなにたくさん必要ないし邪魔になるから売ろうと思っているんだ」

 「ねぇ。丁」

 「どうした?」

 「このナイフ。本来なら一億円前後の値段で取引される予定の最新技術を惜しみなく利用したものですばらしい代物だよ。このナイフは最近開発されたばかりの物でまだ製品化はされていないナイフのBrotmesser Meteor (流星パン切り用ナイフ)略して『BM』。このBMは万能な刃物。料理、狩猟、殺害、軍用、どのような用途でも使える。そのナイフは宇宙から来た素材も使われていて、数十年前に地球に落ちてきた隕石の中にほんのわずかだけ含まれていた未知の物質を使って作られたナイフなの。あなたのお父さんは人生のほぼすべてをこのナイフを作ることに捧げてきたの。固さを持ちながらもしなやかで、弾力性も備えたこの刃をまねできるのはあなたのお父さんの会社以外にはないと言っても過言ではない。このナイフの素材を人工的に作り出す技術はあなたのお父さんの会社しかない。刃を固くしすぎると折れやすくなるがその欠点を克服したこのナイフにかなう刃物はこの地球上に存在しない。あなたは人類史上最強の刃物をたかだか十万円で売った。もったいないよ」

 「これってそんなにすごいナイフだったのか……。ありがとう。君が来てくれたおかげでこのナイフの価値がわかった」

 「あの……。」

 「どうしたの?」

 「まぁ、私も言いたいことは言ったし、このナイフすっごく欲しかったんだから私に売ってくれないかな?」

 「一本だけなら君にただであげるよ。これは君が持つべきだよ!君の武器に対する熱意はすばらしいから」

 「やったぁ!私はまだ公式に発売されていない最先端の世界最強のナイフを無料で手に入れちゃったよ。うふふふふふ。ありがとうっ!嬉しいよ!ああ。このナイフBMが手に入るなんて夢にも思っていなかった!本当にありがとう。大切にするよ」

 


 

 

 

 

 

 


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