ジーニアスガールと似非天才
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一時間目の授業の時間
穂模川芸太郎にとって授業の時間は妄想の時間である。奴は、今日も妄想に耽っている。
~芸太郎の脳内~―――――――――――――――――――――――――――――
やっぱり僕は頭がいいなぁ。
僕は成績優秀でエリートだ。
周りは無能なクズばかりで笑えてくるな。
ああ。僕にとって勉強は友達!
わぁ!今日は正弦定理君が来た!正弦定理君、一緒に遊ぼう。
ほうら、三角形君、君の辺をSINθで割っちゃうぞ!そして割られた君をさらに2で割ってあげる。
ほら。円の半径が求まった。
こんにちは半径君。
あははは。
三角形君!
円君!
SIN君!
シータちゃん!
楽しいね!ははははは。
僕たちはこの教科書という美しい空間上で楽しく肩を組み、語り合うんだ。僕は君たちのことを理解したいんだ。僕は君を知りたい。僕は君たちに恋をしている。
僕は学習内容と心を通わせる。僕は勉強と心通わせる。この幸せなひと時はどのような時間よりもすばらしい。
この時間が永遠に続いてほしい。僕が頭がよくて成績優秀な理由は教科書に載っていることがすべてが美男子や美少女に見えてしまうからなのだ。
だから僕は学習内容がすぐに覚えられる。
教科書を見ているとすごく興奮しちゃう。
僕にとって教科書は最高の読み物さ。はははははっ
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奴が妄想しているところに殺那がやってきて声をかけてきた。
「ねぇ」
「おぉっ!僕の可愛い奴隷ちゃん。僕に勉強教えてほしいのかい?もしそうならじっくりと教えてやるよ。時間が足りなかったら僕の家に来る?君さえよければ泊まらせてやるぞ?僕って優しいだろ?君は僕の犬みたいなものなんだ。存分に可愛がってやる」
「能無しが。笑えてくる。お馬鹿さんのくせに調子に乗っている」
「ん? ん? ん? ん? 僕をなめてるの?僕なんて去年の期末テスト全然勉強してないのに全教科70点とれたんだぞ?しかも中学生の時なんかちょっと頑張りすぎちゃったから一度だけ全教科94点以上取って学年一位になったことがあるんだ。今度僕が中学生の時の成績表見せてあげようか?本当なんだぞ?僕さ、いつも思うんだけど高校生になってからテストがあまりにも低レベルすぎてこの学校程度の低レベルのテストなんて本気出すまでもないんだよね。簡単すぎてやる気が出ないんだ。それはそうだよね。だって僕全然勉強していないのに全教科70点ぐらいとれるんだから。こんな赤点を取るような無能なクズどもに合わせて作られたような簡単な問題なんてまじめにやる必要なんてないんだよ。ね?あ。僕さ、この問題解けたんだ。余弦定理とかほかの定理とかいろいろ使ってこの図形の面積Sを求める問題をね。君はまさかこれぐらいの問題もう解けていね?」
「私、まだ解いていないよ。こっそり今日の宿題やっていたの」
「あれぇ?まだ解けていないのかい?こんな問題もわからないの?僕よりバカだね。本当は宿題やっていたから解いていないんじゃなくて、難しくてわからないから解くのをあきらめて宿題をやることにしたんじゃないの?あ。絶対そうだろ」
「違う」
「あぁ?絶対そうだろ?僕に自分自身が頭の悪い女だと思われるのが恥ずかしいんだろ。そんなに恥ずかしそうな顔しちゃっているじゃないか。僕のことを能無しとか言っている割には君のほうが能無しなんじゃないのかなぁ?弱い犬ほどよく吠えるんだなぁ。でも、可愛いよぉ。いいねぇ。問題が解けないことが僕にばれて恥ずかしそうにうつむいている君のことを見ていると興奮しちゃうよ。君、まさか問題が解けないから僕に教えてもらいに来たんじゃないのかなぁ?うわぁ。可愛い。可愛い。表では僕にきつい口調でいながら実は心の中で僕のことを求めているのだろう?ツンデレちゃん。うふふふ。仕方ないなぁ。その問題の解き方教えてやるから今日、帰りに僕の家に寄っていてよ。僕と遊ぼうよ。楽しい事をしよう」
「ごめんね。私は今日なら人と会う予定があるから無理なの」
「残念だなぁ。でもあとで遊ぼうよ」
「じゃぁ、決闘の後でいいかな」
「僕に負けた後に僕に泣いて抱きついてくるっていうのかい?もう決闘なんて無駄なことはやめて僕の物になっちゃえよ」
ふふふ、よく喋るねこの馬鹿は。丁の情報やけんじの話で前から知っていたけどこいつ思い込みが激しすぎるよね。自分で勝手に話を発展させてありもしないことをべらべら喋ってくる。うざい。
まぁ、もう少しこいつを油断させておこう。
「私、少しあなたの強さに興味があるの。あなたの実力を見てみたいな」
「うん。いいぞ。僕の強さを見せてやるよ。君は僕にぼろぼろにされて僕にはかなわないということを存分に思い知ることになるぞ。殺さないから安心してくれ。せいぜい両手両足に全治一カ月程度のけがを負わせるぐらいにしてやるよ。そして体が不自由な間は僕が君の面倒を見てやるよ。ふふふふ」
うわっ。絶対こいつエロいこと考えているでしょ。まぁ、私は負けるつもりはないから別にどうでもいいけど夢を見ていられるのも今のうちだけだからね。
「あ。そうだ。君は前の学校にいたときにどれぐらいの成績だったのかな?」
「私は学年一位。たまに二位をとる」
「はぁ?」
私は成績表を奴の机の上に置いた。
奴は自分の机の上に置かれた成績表を見た。
奴は英語で書かれているその成績表を日本語に直して読んだ。
「ドイツ語 98点←彼女はスイスにいたためこの科目は日本でいう国語に相当。
数学100点
物理100点
化学100点
生物100点
英語100点
地理100点
歴史 98点
合計796点
学年333人中一位。 」
……
芸太郎はその成績表を呆然とながめていた。