僕の相棒が天国へと旅立った
けんじは放課後に自転車置き場に向かっていた。
僕はけんじです。
ああ嫌だなぁ。これから芸太郎のところに行かなくてはいけない。
行きたくない。なぜだか胃が痛くなってくる。僕は陰鬱な気分に浸りながら駐輪場の自分の自転車のところへと向かう。
まるでこれから拷問でもされるかのような気分だよ。いや、そもそも奴と一緒にいるだけでも十分な拷問だ。
奴は、ホモでもあるので、男好きであって、僕に抱きついてきたり俺の膝の上に乗っかってきたりしてなかなか離れてくれないことがあった。きもいよ。
ひどいときには雨の日にずぶぬれになった僕は人通りのある公共の場所で暴言を浴びせられるとともに何度も奴に叩かれて見せ物にされたんだ。僕は奴のこの行動をびっしょりホモホモ羞恥SMプレイと呼んでいる。びしょ濡れになった背中を叩かれながら暴言を浴びせられてそのうえその光景を目の前を通り過ぎる人々に見られることによって恥ずかしそうにしながらとても不快感があるような表情を浮かべる僕の姿をみて奴は性的な興奮を得たみたいだ。
ああ、そういうことは仮想世界にでも入り込んでやっていろよ。
今の時代、コンピュータ上で現実世界と全く同じ物理法則によって成り立つ空間を再現可能だ。自分自身の脳を仮想世界にリンクさせて、その世界での五感を味わうこともできる。
でも……奴は生身の人間がいいのかな?迷惑だからやめてほしい。
……「あれ?おかしいぞ?僕のチャリはどこだ?」
僕はチャリが指定位置にないことに気付いた。間違いなくいつもの学校指定の位置に置いたのだが何度確認しても自転車はそこにない。
……
一時間後
僕は何者かによってタイヤが両輪ともゆがめられており、そのうえサドルがなくなっているチャリを発見した。そのチャリは僕のものであった。
おそらく奴の仕業だろう。僕は嫌になったからもう家に帰る。奴の事なんて知るか。どうせ奴のところに行っても結局は痛い目にあうんだ。
歩きで下校か……。僕の家まで歩きで3時間かかるだろうか?
とにかく僕の家まで歩きで帰るには遠い。
いっそのことここで寝泊まりでもしようかな。
「けんじ君。どうしたの?」
この声は、殺那ちゃん?
僕はその声の聞こえた方向に顔を向けると殺姫殺那がいた。
「殺姫さん。僕は今日、教室で眠るはめになりそうです」
「え?いったいどうしたの?すごく不機嫌そうだよ?」
「僕の相棒が永遠の空の旅へと出かけたようであります」
「は?」
「僕のチャリが死んだ」
それを聞いて殺那はけんじの後ろにほとんど自転車の原型をとどめていない物体が転がっていることに気付いた。
「あ……。やられちゃったの?あいつに」
「うん」
「けんじ君、あと少しの辛抱だよ。さっき校長に決闘の許可を申請してきたの。そして私があいつを殺せばこの学校は、あなたたちは救われる。」
「殺那ちゃん、それは難しいよ。奴はいったいどんな卑怯な手を使ってくるかわからない。以前、奴に決闘を申し込んだ人がいたけど決闘する前に奴はその人の家を家族ごと爆撃すると脅してその挑戦者を無理やりギブアップさせたんだ。その後、その挑戦者は奴に脅され続けてつねに道具のように扱われた。毎日のように奴はその人に性的な行為を強制的にしたり、殴ってストレス発散の道具として使っていたりしたみたいだ」
「そしてそのあと、自殺したんでしょ?」
「あれ?殺那ちゃん、知っていたの?」
「まぁ、この学校については色々と情報収集しているからね」
「そうなんだ」
僕はどうして殺那が余裕な表情を浮かべていられるのか理解できなかった。芸太郎の事を知っているのであれば恐怖を感じるはずなのだが、殺那はかなり余裕そうにしていて、決闘に関してまったく緊張感が無いように見える。この人、本当に強いのかもしれない。
まぁ、殺那ちゃんは殺し屋なわけだし普通の人よりは強いよね。
もしかしたら、奴を倒してくれるかもしれない。
「私と戦うことになるなんて、奴は運が悪い」
「殺那ちゃん、どうしてそんなに余裕でいられるの?奴は君に勝つために手段を選ばないはずだよ。今、こうして話している間にも、奴は上空から無人攻撃機で君のことを攻撃してきてもおかしくないはずなのに」
「そうね。さっき、身をもって実感したよ」
「え?」
「さっき、私は数人の男たちに銃撃されたんだ」
「えええっ!」
「まぁ。銃を奪って全員の足を撃って行動不能にしたところで警察を呼んだけどね」
「ッッ!」
「そんなに驚くことじゃあないと思うよ?」
「いやいや、数人の銃を持った男だよ?君一人で全員倒しただって?」
「うん。5人だった。そしてみんなサイレンサーつきサブマシンガンを持っていた。」
「ッッッ!!!」
それ、冗談か?いったい何のゲームをプレイしていたんだ?
一人の女の子がちょっと戦ったら五人の武装した男を倒しちゃったなんて現実に起こり得るわけないだろ。
さすがは殺し屋!
「漫画かッ!何だよそのチート級戦闘力は!」
「CA。クロックアジャストメント」
「……しーえい?」
何だろうそれは。武器かな?僕は聞いたことがない。
「そのうちわかる。私の真の力を見せてあげる。楽しみにしていてね。私は芸太郎を倒すためにこの学校に来た。その目的を必ず私は成し遂げる」
この人、ぶっ飛んでるよ。いったい何なんだ。初めて会ったときからこの人は変人だと思っていたけど、なんだか今度は漫画じみた妄想話してきたし『CA』なんてなんだかよくわからない自作用語?を言ってきたしさ。
僕はこの後、殺那と一緒に話しながら帰ることにした。彼女は僕の家の帰り道の途中にあるようだ。
彼女はやっぱり銃好きであり銃オタクのようだ。彼女は、対物ライフルやら重機関銃やら銃の話をやたらしてきた。
男男帝国では銃の所持は認められているので彼女は銃の免許を持っていて、数十丁の銃を持っているようだ。
この時代、銃の所持免許は万国共通なので銃の所持が認められている国ならば、どこでも同じ免許で許可が通るので、1年前?にこの国に引っ越してきた彼女は、ずっと前から免許を持っていたのだろう。ちなみに彼女は、スイス生まれの日本人らしい。
また、彼女は、レズビアンでも腐女子でもなく、物に対して恋愛感情を持つタイプの人間のようであり、基本的にこの男男帝国は、対物愛も認められているので彼女はこの国への入国許可が下りたらしい。武器に対して恋愛感情を持っているというのは本当だったみたいだ。
彼女は、オーストリアの有名なとある銃器メーカーの小型拳銃を愛用していた。素材は強化プラスチック。シンプルな上2080年の今でも古さを感じさせない未来的なデザイン。使用弾薬は9mm×19mm弾であり、サブマシンガンや拳銃によく用いられる弾薬のようだ。
今の時代、警察や軍隊などではレーザーやマイクロ波などを使った銃が採用されているが、比較的大きくて仕組みも複雑で整備が難しいので、今の時代でも小型で手軽で信用性の高い武器である銃が主流である。
「銃はそれぞれ個性を持っていて、使用弾薬、銃身長、ライフリングなどによってそれぞれの銃特有のくせがある。さまざまな銃と出会い、それぞれの銃とコミュニケーションをとることは私にとってとても楽しいことで、とっても幸せなひと時。」
やっぱり銃オタクなんだなこの人は。
殺那は僕に別れを告げ、家に帰って行った。僕は家まであと少し距離があるので一人で自宅まで向かい、帰宅した。そして僕は食事をとり、風呂に入って、ベットの中に入った。
ああ。悪夢を見そうだ。今日は奴に散々な目にあわされた。僕は眠り、予想通り、奴にホモホモしい行為をされる夢を見た。
クソ!せめて夜ぐらい精神的に楽にさせてくれ!もう疲れた!夢の中にまで出てくるな変態!