奴は糞だ。
一時間目の授業が終わりました。
しかし一時間目の授業の後の休み時間は授業で疲れた頭を休める余裕さえ俺には与えられなかった。
教室に帰ったところ、俺はとんでもないものを見てしまう。
「あ……。」
まただ。またこれだよ。俺が一年生の時はタブレット端末を墨汁で汚されまくったが今度は机か。
ちなみにこの学校は授業は紙の教科書を使う科目もあるが、ほとんどの科目ではタブレット端末を使う。
俺以外にも五人ぐらいの人が被害にあっているみたいだな。俺の前の席のけんじ君は特に被害がひどいな。
バッグごと泥水の入ったバケツにつけられていておそらくあの中には教科書や文房具類が入っているだろう。俺はけんじに声をかけた。
「けんじ。だいじょうぶだったか?」
けんじは答える。
「僕の書いた絵が泥水まみれだよ……」
うわっ。奴が来たよ。奴はにやにやした憎たらしい顔で俺たち三人を嘲笑するような目つきで話しかけてくる。
その顔、てめぇの体からもぎ取ってやろうか?
「ほら、けんじ君。お前の筆箱とタブレット端末だ」
芸太郎はけんじの筆箱と端末をけんじに投げ渡してこう言う。
「お前のバッグがなぜか泥水の入ったバケツに浸されていたから無事だった筆箱と端末だけは水に沈む前に僕が救出してやったんだ。感謝しろよな」
「お前がやったんだろ?」
「はぁ?せっかく筆箱とかをを救出してやったのにその態度はなんだよ。謝れ。放課後にジュース三本おごれよけんじ。来なかったらどうなるかわかっているだろうね?」
「わ……。わかったよ。おごればいいんだろう。おごれば」
「そうだ。それでいいんだよ。あと、君は絵が下手なんだから失敗作の下手な絵が泥水まみれになったぐらいで済むなんてよかったじゃない。紙の教科書はダメになったけど端末と筆箱は無事なんだろう?」
俺は思った。
奴は『糞』だ。
クソ野郎だ。
どの道けんじには悲惨な運命が待ち受けているだろうな。
奴はたとえけんじがジュースをおごったとしてもお仕置きとして人通りのある公共の場で無理やり過激な男同士のSMプレイをさせられるだろう。
けんじから聞いたけど奴は以前にけんじを水たまりに無理やり体を押し付けて、びしょ濡れにした上にたくさんの人が通るベンチの上に座らせた。
そしてけんじはびしょ濡れのまま奴に暴言を浴びせられるとともに、背中が赤くなるまでたたかれた。
ああ。悲惨だ。けんじ、無事を祈ります!