クレイジーボーイ「穂模川芸太郎」
僕は男男帝国男男高校の生徒だ。
僕の名前は百合園けんじ。
まぁ、いたって普通?の人間かな。特に何か取り柄があるわけでもない。
僕は困ったことに穂模川芸太郎というやばい奴に目をつけられているんだ。
……ということで僕は今、奴に見つからないように校舎から出ようとしているところだ。
奴の隙を隙を狙って何とか教室からは脱出できたけど無事に校舎からも出られればいいな。
ん……何かがものすごい勢いでこっちに来る!
僕が後ろを振り返った時、そこには芸太郎の姿!
奴は両手を広げながら目大きく見開いて僕に飛びついてくる!!
そして奴は僕のに飛びつき、強く抱きしめてきた!!!
狂ったような目つきで僕のことを見つめていてしかも息が荒くて僕の顔に息が吹きかかる!
「ッ!!」
痩せ細った芸太郎の体の骨が当たって痛い……まぁ、もしこいつがデブだった場合、こんなに勢いよく飛びついてから強く抱きしめられたらそれこそ僕は死んでしまうかもしれないんだけどね……。
僕が奴に抱きしめられて不快を感じていたら奴はこんなことを言ってきやがった。
「うへへへ。温かい」
……きもっ!!!
気持ち悪いっ!
おい!そんなに僕に体をこすりつけるなよクソが。
しかも息が臭っ!
こいつ歯を磨いたことないんじゃないか?
こいつと話すときはガスマスクをつけて話すことをお勧めします。
こいつは体内で毒ガスでも生成できるんじゃないのかな?
「気持ち悪いから離れろよ芸太郎!」
「そんなこと言わないでもっともっと僕を抱きしめろ!」
「……気持ち悪い」
別に同性愛な分には普通だけどさ……さすがに突然他人に抱き付くなんてどうにかしてるよ。
「いやんっ!キモイって言われちゃったぁ!」
うん。僕は事実を述べたまでさ。
「けんじ君、これから一緒に帰ろうよ」
「僕は一人で帰りたい」
「僕と帰れ」
「わ……わかったよ。仕方がないな」
……本当はこいつと帰りたくないんだけどこいつはオブジェクトだからこいつの命令何度も逆らったらなにされるかわからないから一緒に帰らざるを得ないな……。
「けんじ君。僕の家に来てよ。面白いゲームをやらせてあげる」
「断る」
「来い」
「いや用事があるんだよ」
「なら暇なときに来てくれ」
「遠慮しておく」
「その日の食事代三食分おごってあげるからさぁ。僕の家に後で来てよぉ」
うわぁ……家に来いとか絶対変なこと考えているだろこいつ
僕を専属性奴隷にでもするつもりか?
「きもい」
「来てっ!」
「わっ。何度も抱きつくな」
こいつ、しつこいな。
「離れないぞぉ」
「くそ……」
「けんじ君が困ってるっ!うほっ!うほっ!困ってるぞぉ~!けんじ君を困らせるの楽しいィィィィィッ!」
「うざいっ!あっち行けホモ!」
「あらら?怒っちゃった。ああ。面白い」
面白くねぇよ!
「けんじ君。一緒にトイレ行こう」
「お前一人で行ってろ」
「僕と行け」
……幼稚園児でもないんだしトイレぐらい一人で行けよ。
「嫌だ」
「オブジェクトの命令だぞ?」
「……仕方ないな」
奴の権力にはむかえるわけがない。下手したら殺される。
僕は仕方なく奴と一緒にトイレに行った。
あ……ちなみにこいつ、今まで数十人ぐらい人を殺したことがあるみたい。
「けんじ君。こっちに来い」
トイレに到着すると、奴はトイレの奥のほうに行ってから僕にそう言ってきた。
「はぁ?」
「いいから来い!」
僕は芸太郎の言うとおりに芸太郎がいるところに行った。
芸太郎は僕に背を向けてしゃがんでいる。そして奴のしゃがんでいる床は水浸し……?
なんだか嫌な予感がするな。
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。けんじ君……」
「な……何?」
奴が立ち上がってこちらに体を向けたら、奴の手には水がたっぷり入ったバケツ!
「くらえ!」
バシャッ
僕は汚い水でびしょぬれになった。
しかもこの水はトイレの床の清掃用に使っている水であり、トイレの床を拭いたぞうきんを浸しておく水である。
最悪だ。不潔だ。帰ったらシャワー浴びたい。
「ああっ!冷たい。いきなり何するんだくそ!」
「やっぱり最高」
「はぁ?」
「濡れている男の子は最高」
「……。」
こいつ、頭どうにかしてる。
「おい。そろそろ学校から出て図書館のベンチに来い!」
「わ……わかった。」
はぁ。今度は何をしてくるのだろうか……。陰鬱だ。
ん?下駄箱に見覚えのある人物がいる。
あの人は……極知君!芸太郎の第一下僕。つまり芸太郎の一番のお気に入り。
「極知く~ん!」
「あ。変態か」
極知君は即、返答する。
「おいっ!いきなり何を言う」
「いや……君の隣に被害者がいるじゃないか」
「あ。こいつは勝手に濡れただけ」
それはないだろぉ~。お前が濡らしたんじゃないか!極知君の言う通りだよ。
「お前が水かけたんじゃないのか?」
「知らない。そんなことよりこれから図書館に行ってゲームでもしようじゃないか」
「えー、面倒だ」
「そんなこと言わないでさぁ。来てくれよぉ。ねぇ」
なんだかオカマ口調になりやがった。
「まぁ……家に帰っても暇だし……まあいいか」
極知君、嫌そうに答える。
「よしっ!今日は夜の九時まで残るぞぉ」
「おいおい。やめてくれよ。以前もこんなことなかったか?いくら家に帰ってから暇と言ってもさすがに九時はないよ」
「ん?暇なんだろう極知君。ならいいじゃないか。僕と一緒にいれるんだぞ?光栄に思えよ?」
「はいはい」
僕たち三人は図書館に向かった。
芸太郎はすごく上機嫌であり、テンションが高いが、僕と極知君はこれから自殺でもするんじゃないかと周りの人間に心配されそうなぐらいの暗い表情で芸太郎の後についていった。
空を見てみると今にも雨が降りそうな曇り空。
今すぐにでも泣きたくなってくる僕の陰鬱な気持ちを反映しているかのような空模様だった。