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魔法な世界で愛されて  作者: きつねねこ
魔法な世界で愛したい
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プロローグ

 青空が広がる晴れの日、実家の私の部屋で忙しく動く使用人の方達。私は部屋の主らしく彼等が的確に動けるように頑張って指示を出します。ですが。


「ミリアリアお嬢様。『剣の勇者』、『暁の聖女』等の巻数の多い本はどうしますか?」

「え~と、どうしましょう? また読みたいですけど嵩張り過ぎます?」

「お嬢様~、こちらのドレス類はどうしますか~?」

「あ、はい。ドレスは殿下とご一緒するならいっぱいある方がいいでしょうか?」

「お嬢様~、小物はどうしましょうか~?」

「んっと、贈られた物も多いので持って行きたいです」


 使用人の方達の呼びかけに応じ次々に指示を出す。と言うよりも疑問質問要望と言った方が正しい気もいたします。けれど使用人の方達はちゃんと動いてくれているので、きっと問題ないのでしょう。


 部屋から荷物を運ぶ人の邪魔にならないようにちょこちょこ動いていると、忙しそうにしているスフィさんと目が合いました。するとスフィさんは私に近寄り感心した様子で声をかけてきます。


「お嬢様、珍しくご自分から積極的に動かれていますね」


 スフィさんの言う通り、私にしては珍しく積極的に進んで指示を出そうとしています。今まで勉強やダンスの練習等を頑張ってはいましたが、あれは言われたことを頑張る受身の姿勢でした。自分から頑張っていたとは言えないでしょう。


 しかし今の私は違います。誰に言われた訳でもなく貴族の令嬢らしく、使用人の方達にテキパキと指示を出そうと頑張っています。気持ちの上ではとっても頑張っています。が、実際に的確な指示を出せてるかどうかは別のお話。


 指示がなくても手早く動く皆様を見てなんだか空回りしてそうな気がしてきた私に、スフィさんが頷きながら楽しそうに言ってきました。


「愛しいレグルス殿下に少しでも早くお会いしたい。そういう訳ですか」

「えっ、いえ、あの、ちが――――ったりはしませんけど」


 普段は無表情なスフィさんがニヤリとしてます。明らかにからかわれているとわかるのですが、動揺して冷静に対応できません。だって言われた内容が事実ですから。


 私が誘拐された事件のあらましを説明に来てくださった時に、王子様から再度のプロポーズを受けました。それを受け入れた私は一応、なんと言いますか、レグルス殿下と恋仲なはずでして。恋人同士なら側に居たいと思うのは仕方ないじゃないですか。


 しかも王子様は説明を終えるとすぐに王都へと帰って行ってしまったので、告白から実質一日も一緒に居なかったのです。一緒に王都へ連れて行ってくれたりせず、それはもうさっさと帰っていかれました。


 サクライス王国では十五歳になると準成人扱いになり、王子様の十五の生誕祭が近いのでお忙しいのは理解できます。本当にお忙しい中、来てくださったのでしょう。でも恋仲になった相手と一日も一緒に居ないうちにお帰りにならなくてもいいじゃないですか。去る間際、王都で待っていると言ってくださいはしましたけど。


「旦那様も奥様も喜んでおいででしたね。サージェンス様は少々複雑そうでしたが」


 私が真っ赤になって居ると、感慨深そうにスフィさんが言います。王子様と私が恋仲だと知った両親は、それはもう喜んでくれましたね。特にお母様が。感激で涙ぐむお母様には驚きました。それだけ私を心配してくださっていたんですね。


 今日の王都への引越しに使う荷馬車やらは、お母様が用意してくださいました。さらにお母様は王都の屋敷関係を正式な手続きで全て私の所有財産としたらしく、レグルス殿下を逃がさぬように不退転の覚悟で、王都からここに戻ってこないつもりでお行きなさいって、力強く言ってくださいました。


 過去の私なら、貴族の覚悟を込めたお母様の激励に足が竦んでいたでしょう。ですが今の私はお母様の厳しく優しい想いをしかと胸に刻み王都への引越しに前向きです。何かあっても本当に実家に帰ってきちゃダメなのかな? って、ちょびっと不安ですが。


 喜び一辺倒だった両親に比べて愛弟のサージェは困ったような表情をしていましたね。それでもお祝いを口にしてくたお姉ちゃんっ子なサージェが一歩引いた感じなのは成長したと喜ぶべきか、それとも寂しく思うべきなのか悩ましいです。


 二度目となる王都への引越し。最初の時は未知の場所でした。けれど今度は待っていてくれる方々が居ます。友人のイザベラ様に茶会メンバーのお姉様方。そして大好きな王子様が。


 我が国の第一王子であるレグルス殿下の告白を承諾したのですから、王都へ行けば想像もしないような苦難があるかもしれません。そう思うと不安が湧きますが、それに負けずしっかりと前を向いていようと思います。だって大切な友人のイザベラ様や大好きな王子様の横に、共に立って生きていきたいと思ったのだから。


 胸に希望を抱き窓から見える明るい日差しに眼を向け、心の中で太陽のようなあの方に語りかけます。


 待っててくださいね。レグルス殿下。

よろしくお願いします。


書籍化に伴い、読んでくださった方へのお礼を込めて追加のお話を更新していく予定です。喜んでくれる方が居ると嬉しいのですが。


書籍の情報については2016年 04月30日の活動報告をお読みください。たいしたこと書いていませんが……。

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