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魔法な世界で愛されて  作者: きつねねこ
魔法な世界で愛されて
12/32

11話

 11歳にて王都デビューをした私。その一歩目は思いの外に良好です。初めて一人で参加したパーティー、そこで出会った大貴族のイザベラ様に茶会のメンバーに誘われたのです。


 イザベラ様との二人きりの茶会を終えて、後日改めて主要メンバーの方々を集めた茶会が開かれました。丸テーブルを囲って座る皆様はどの方もお綺麗な方ばかり。年の頃は13~15歳くらいでしょうか。皆様の溢れる美貌が眩しいです。


 今日の茶会で私にはやらねばならない事があります。新人として先輩の方達へ自己紹介をしなくてはいけません。気分は学年が上がった新学期の初日。無難にこなすか印象に残る事を言うか、自分の趣味や好物をアピールしてみるか、毎年悩んだものです。


「皆気づいてると思うけど、今日から一人新たにメンバーが加わったわ。ミリアリア、皆へ挨拶を」


 ご挨拶の時間がやって来た訳ですが、この期に及んで内容を決めかねてます。私の実家は伯爵家。イザベラ様の侯爵家よりは格下ですが、実はそれに次ぐ伯爵位。お母様が教えてくださったのですが、家格が上の家の方には丁寧に挨拶するべきだけれど、家格が下の方へ丁寧に挨拶するとマナー違反な事があるとか。慇懃無礼と言う事でしょうか。


 イザベラ様を除く目の前の方達の家の爵位が子爵や男爵の方だけの場合は、伯爵家の娘として威厳ある挨拶をしなくてはいけません。しかし同等の伯爵家の方や、格上の侯爵家や公爵家の方が居たらどうしたら良いのでしょう? メンバーの方達の事を知らないので困ります。


 困った末にイザベラ様へチラッと視線を向けるとにっこり笑顔を返されます。困ってる事が伝わらなかったようで、残念ですがパーティーの時のような助けは得られず。


 仕方ないので覚悟を決めましょう。私もリートバイト伯爵家の娘です。11年以上も貴族をやっているのです。挨拶の一つや二つは出来るはず。決意を胸に秘め立ち上がり、皆様をゆっくり見渡し喋ります。


「リートバイト伯爵家の長女、ミリアリア・ルーデ・フェス・ラ・リートバイトと申します。若輩者で至らぬ身でございますが、お姉様方には色々教えていただければ幸いです」


 笑顔で丁寧にご挨拶。年下なので若輩者を強調しました。これなら家格に関係なく、年が下なので威厳ある挨拶とかしないで良いはず。年齢が上の方を敬う事は当然ですよね。


「よろしくお願いしますね。ミリアリア様」

「可愛らしいご挨拶でしたわ」

「気軽に何でも聞いてくださいね」


 無難な挨拶を選択した結果、お姉様方に笑顔を頂けました。威厳を出そうとして少し高飛車に「伯爵家のミリアリアです。以後よろしくお願いしますわ」なんて言わなくて良かったです。言っても威厳なさそうですが。


「ミリアリアの為に、皆様も軽く自己紹介を為さったらどうかしら?」

「そうですわね。では私から――」


 イザベラ様のご提案でお姉様方の自己紹介が始まります。それを笑顔で聞きながら私は内心で必死です。貴族の常識の一つに一度名前を聞けば覚えると言うのがあるのですが、それは私的非常識。一度で覚えられたら使わなかった英単語暗記帳。


 皆様の挨拶が終わっていつの間にか始まる雑談。お名前を覚えようと必死だった私に、隣の、えーと、思い出すんだ私の頭脳。


「ミリアリア様、今日のお菓子は私が持ってきたのです。よければお一ついかがですか?」

「はい、是非いただかせて頂きます。……ミザリィお姉様」


 推定ミザリィお姉様は返事を聞くと綺麗なゼリーのお菓子をとって下さいました。それを見て心の中でガッツポーズ。右隣の綺麗な長髪のお姉様はミザリィ様で正解でしたね。家名はえーと……あ、ゼリーがマスカットっぽい味ですっきりして美味しい。


「ミリアリア様、ジェローが気に入りましたか?」

「あ、はい……ルクレツィアお姉様。とっても美味しくて気に入りました」

「でしたら、こちらの赤いのもお食べになってみたらいかがですか?」

「よろしいんですか?」

「良いですわよね? ミザリィ様」

「えぇ、もちろんです」


 今度は左隣のショートボブなお姉様のルクレツィア様が赤いゼリー、ジェローというらしいお菓子を取ってくれます。今度の味は甘くて少し酸味があって、これもとっても美味しいです。


 ジェローをはむはむと食べて居ると、4つの視線に見つめられているのに気づきます。イザベラ様にミザリィ様、ルクレツィア様に……まずい、出てこない。金髪ポニーのあの方のお名前は。


「この黄色いのも美味しいですのよ。ミリアリア様、お食べになります?」

「ずるいわ、ルセット。私もミリアリアにあげたかったのに」

「ふふふ、早い者勝ちです。イザベラ様」

「ありがとうございます。ルセットお姉様」


 長身の金髪ポニーのルセット様が黄色いジェローを取って下さりました。黄色いのは一番甘くて口の中全体がふわっと甘みに包まれます。蕩ける甘さは幸福の味。


 その後にイザベラ様からもジェローを勧められました。特に会話がなく、私がジェローを食べるのを見続ける皆様方。ぷるんとしたジェローはとても美味しいのですが、私ばかり食べてて良いのでしょうか。


「これが子育てする親鳥の気持ちなのかしらね」


 イザベラ様が呟く一言を最後に、お姉様方が静かに私を見守ります。それを横目に美味しいジェローを食べ続けます。いつの間にか最初のような緊張が薄れていました。甘いお菓子は緊張を解いてくれるんですね。


 餌付けされ、茶会に馴染んだ私です。






 茶会のメンバーとなって数ヶ月。メンバーの方達といくつかのパーティーに参加したり、茶会に呼ばれてお菓子を食べたりする充実した日々。その中でちょっとした出来事が起こります。いつものように茶会でお菓子を食べていた時の事でした。


「先日のパーティーでブラムス様にダンスに誘われて、今度二人で湖を見に行こうと言われてしまいましたわ」


 最年長のミザリィ様がおっしゃったブラムス様とは、見た目が良いと評判の子爵家のご子息です。茶会で話す内容は他愛の無い雑談が多く、ここまでならあの人かっこいいよね~と言った女子会のノリだと思ったのですが。


「あら? 私は演劇を見に行こうと誘われましたよ」


 真面目なルクレツィア様が続きまして。


「私は今度家に来て欲しいと言われましたね」


 長身で行動的なルセット様がそう繋げ。


「私には婚約を申し入れたいなんて言ってきたけど」


 イザベラ様が最後に〆ました。


 奇妙な沈黙が訪れます。普通なら噂のあの人に声かけられちゃった~、良いわね~となるはずですが、さすがにそうもいきません。パーティーで複数の女性に声をかけるのは良いとしても、同じグループの女性にこうも声をかけるとは。


 沈黙の理由にはブラムス様への呆れもあるのでしょう。ですがそれだけではなく、噂のイケメンに声かけられて嬉しい気持ちが、他の女性にも声かけていたと言う事実に女性としてのプライドが引っかかっているのでしょう。同じ茶会のメンバーなだけに尚更に。


 しかしこの雰囲気はいただけません。年頃の乙女達なので仲が良くても引けない部分はあるのでしょう。ですが何とかしないとまずそうです。心情的にもお口の中の味覚的にも。こうなれば自分で言うのはどうかと思う取って置きのお話をいたしますか。


「お姉様達は凄いですね。私なんてブラムス様にお声もかけていただけなかったです」

「そうなの?」

「はい、残念ながら。ブラムス様はお姉様達の美しさに心打たれたようでして、私は目に入らなかったみたいです」

「まぁ、貴女だってすごく可愛らしいわよ」

「そうそう。ミリアリア様を誘わないなんて、見る目がないわね」


 一気に場の雰囲気が明るくなります。ブラムス様に悪者になってもらった形ですが、モテる男性の有名税と思って我慢して頂きましょう。


「うちの小鳥に声をかけないなんて、その程度の男って訳ね」


 リーダーであるイザベラ様のお言葉に揃って同意するお姉様方。それからはいつもの通りに仲良く雑談が始まります。そして安心してお菓子をほお張ります。今日のお菓子も美味しいですね。


 その日の茶会で、何故か私は一人残るようにイザベラ様に言われました。うっかりに定評のある私の事ですから、またやったのかと思ったのですが。


「今日は助かったわ。貴女が自分を下げてウソまで言って場を取り繕ってくれて。でもブラムスの奴は気に入らないわね。節操なくうちのメンバー全員に声かけるなんて、少し痛い目にあわせるべきかしらね」


 私にお礼を言って、ブラムス様に対する憤りを隠さず怒ってらっしゃいます。イザベラ様はいつも髪色に合わせたダーク系のドレスを着用していて少し怖い感じがいたしますが、身内にはとても優しい人です。なのでこのままではブラムス様大ピンチ。私の分だけでも早めに誤解を解いておきましょう。


「先ほどの事でしたら、私は一切ウソを言っておりません。実際にお声をかけて頂いてないので」

「節操なしのブラムスが本当に貴女に声をかけなかったの?」

「えぇ」

「それこそウソでしょう?」


 真実を言っても信じていただけません。イザベラ様の中ではブラムス様は、どんな女性にも声をかける節操なし確定のようです。そこは否定しないとしても、事実はちゃんとお伝えしなくては。


「私が魔力シングルだからではないでしょうか?」

「あ、そう言えば貴女ってシングルだったわね。なるほどねぇ」


 いくら節操なしのお人でも、貴族としての最低限の事は踏まえていると。イザベラ様も納得の理由のようです。


「実はダンスのお誘いも誰からも受けた事がないんです」

「え? ……そう言えばミリアリアが一緒に居る時って誘いの数が少なかったわね」


 一緒に居る事で誘いが減るとは。これはイザベラ様達にご迷惑をおかけしていますね。お姉様達の影で私の婚活がより停滞するのは望む所ですが、そのせいでお姉様達まで誘いが減っているのは考え物です。


「今後はあまりご一緒しないようにしますね」

「何言ってるのよ。むしろ良い事じゃない?」

「どうしてですか?」

「うんざりする誘いの数が減って嬉しいからよ。私が侯爵家出身で、尚且つ魔力がトリプルだからか13だと言うのに本気の誘いもあるのよ。忌々しい」


 本気でイラついた顔をなさるイザベラ様。サクライスでは婚姻関係は15歳からが通例ですが、13歳で引く手数多とは凄いです。王族ではないのにトリプルランクの才能持ち故でしょうか。闇夜を映す美貌も大いに関係ありそうですが。


「15歳になるまでは結婚なんて考えたくもないわ。正直嫌だったから助かるくらいね」

「コルベール侯爵家の力で何とかできないんですか?」

「何とかどころか逆なのよね。うちの父はね。『早めに才能ある婿を見つけるのは良い事だろう。コルベールの努めとしてお前は優秀な婿を取る必要がある。爵位など気にせず、いっそ平民でも有能であればかまわん。なんとでもするのでお前の眼に適った男を連れて来い』なんて言って推奨してるのよ」

「はぁ、私とは別の意味で婚活をなされているのですねぇ」

「貴女も実家で言われてるの?」

「魔力シングルなので早めに結婚相手を見つけるようにと。私はもっと年を取ってから相手を見つけたいのですが」

「そう。貴女も私と似たような感じなのね」


 イザベラ様は溜息を吐いて俯むかれます。理由はかなり異なりますが、婚活している事でシンパシー。現状では望んでないという考え方も同じです。イザベラ様に対して急に親近感が湧いてきます。


「あ~、だからパーティーで挨拶できて感謝してた訳ね。結婚相手を探すには顔を売らなきゃダメだものね。ミリアリアも意外と苦労してたのね」

「両親も応援はしてくれてますが、強制はしてないので特に苦労はしてません」


 淑女教育もパーティー参加も嫌だと言えばお母様は強制しないでしょう。婚活がダメな場合に備えて、家の取り纏めの教育もしてくださっています。相手が見つからなければリートバイト家の小姑でも良いと考えているようで。厳しいお母様の最近の口癖が『無理しなくていいのよ』なのです。


「そうなのね。良いわね。ミリアリアの家は」

「イザベラ様のお父様もそうなのでは? だって好きな相手を連れてきたら、平民の方でも結婚させてくださるのですよね? 好きな相手を連れて来いなんて、素敵なことだと思います」

「違うわよ。王族だろうが貴族だろうが平民だろうが、優秀じゃなきゃダメって言う実利的な合理主義よ」

「ですが、イザベラ様の眼に適えば良いんですよね? つまりイザベラ様が選んだ相手なら誰でも良いって言ってるように聞こえます」


 本当は娘に優しく言いたいけれど、父親として甘やかせないお父さん。厳しい振りして娘に甘々なのではないでしょうか。娘が小学校の時にくれたお手伝い券を結婚式までとっとくような。


「そんな筈は……。曲解な気がしないでもないけど、でもそういう事なのかしら?」

「きっとイザベラ様に好きな人と幸せになってほしいんですよ」

「あの父がそんな風に考えるかしら? う~ん」


 父親の発言の事を真剣に悩んでいますね。素敵なイザベラ様のお父様に対して、うちのお父様はどうでしょうか。どんな人を連れて行っても喜んでくれる気がしますね。イザベラ様のお父様とうちのお父様は似た感じなのでしょうか。


「はぁ、ミリアリアって面白い考え方をするのね」

「そうですか?」

「自分だけ誘われなかった事も平然と話すし、父の言葉にも私にない視点での考えを述べるし。年下の小鳥ちゃんだと思ってたら、さっきは一番落ち着いていたし。貴女ってよくわからなくて良いわね」


 これは誉められてるのでしょうか? 茶会の時の微妙な雰囲気で落ち着いていたのは、話の内容的に部外者だったからです。お菓子に集中していたからではありません。


「とりあえずパーティーでは一緒に居ましょう。私はまだ結婚なんて考えたくないのよ。私ばかり得をしてる気がして悪いけど」

「いえ、一人で居るより気が楽なので私も嬉しいです」

「なら良かったわ」


 私とイザベラ様はこの日から仲良くなれた気がします。他の方には言わないような事を言ってくるようになったのです。


「まぁそれはそれとして、ブラムスにはどんなお仕置きをしましょうか。貴女を誘わなかった分もしっかり入れといてあげるわ。楽しみね、ミリアリア」


 その初めがこの一言です。噂のイケメンなブラムス様の未来に幸があらん事を祈ります。






 イザベラ様と仲良くなり、茶会のメンバーのお姉様方とも良好な関係を築き平穏な日々が続きました。しかし平穏な時間は思ったよりも短かったです。


 11歳半ばだった私も13歳となり、イザベラ様が15を迎えた頃に茶会に変化が訪れます。メンバーの方を通して、イザベラ様にアタックしようとする男性が時たま参加するようになりました。


 茶会は女子会のイメージでしたが、年頃の女性が主催、または参加する茶会には男性の方も参加する事があるのだとか。目的はもちろん出会いを求めて。例えるなら合コンのような時があるのです。


 ミザリィ様達もイザベラ様が乗り気ではないのを知ってはいるのですが、全てを断る事ができないようで、申し訳なさそうにしておりました。ちなみに最年長の16歳ミザリィ様は婚約者が居たりします。


 仲良し女子会だった茶会も、結婚に後ろ向きな私とイザベラ様には少しだけ憂鬱に。それが結果的にイザベラ様との仲をより深くしたのは皮肉でしょうか。パーティーでは必ず私を連れ歩くようになり、茶会後には二人で話す事が増えました。


「どいつもこいつも、コルベール家の権力や魔力の素質目当てな下心が見え見えなのよね」

「そうとも限らないと思いますが」

「ミリアリアを誘おうとする男が居ないのが証拠よ」


 顔が売れて名が売れて、余計に誘いがなくなったのは事実です。よく考えれば顔が売れると魔力シングルなのも広まる訳ですよね。これはうっかりでした。前世でロマンス溢れると思ってた貴族社会は、思いのほかシビアでございました。


「しかしイザベラ様は15歳になりましたし、そろそろ誰かとお付き合いしてみてもよいのでは?」

「嫌よ。お兄様くらい誠実な人ならまだしも、誰も彼も浮ついて見えるんだもの」

「魔道騎士のグローム様と比べられては、少々酷かと」

「それはそうだけど……。ならシングルな事を気にせず、ミリアリアを誘うような人なら考えるわ」


 グローム様と比べるのも酷ですが、私に誘いをかけるのも貴族的には中々に難しいような。誘いがない妹分のせいで結婚が遠退いていますね。見た事もないイザベラ様のお父様にお兄様、本当にごめんなさい。


 このように遅々として進まぬ婚活。お母様も近頃はとっても優しくて、たまにくるお父様は慈愛に溢れていて、愛弟サージェは会う度に素敵な笑顔で花束をくれます。なんでしょうか、私より先に家族が諦めているような。


 本格的な婚活開始なはずの15歳を前に、リートバイト領に帰りましょうか? と、お母様が聞いてきた翌日。イザベラ様と共にとあるパーティーに参加していました。そこで思わぬ出来事が。


 イザベラ様とは別の侯爵家の方が主催のパーティーで、私達をじっと見つめる視線が一つ。長身で私よりも頭が一つ上の男性が明らかにこちらを向いていたのです。金髪の碧眼で顔が整った美形な方で、闇夜を思わせるイザベラ様と対極の明るい雰囲気。二人並ぶとお似合いかもと思って居ると、ニヤリと笑った男性が真っ直ぐこちらに歩いてきます。


「チッ、また誘いがくるのね」

「イザベラ様、あの方は初めて見る方ですし、良い方かもしれませんよ」

「どうかしらね」


 阿吽の呼吸とばかりに立ち位置を調整する私達。もちろんイザベラ様が前で私が後です。準備万端に待ち構えていた私達ですが、男性が近づいて来て驚きます。なんと軽く会釈しただけでイザベラ様を通り過ぎ、何故か私の前で立ち止まったのですから。


 私と比べ背の高い男性が碧い瞳で見てきます。無表情で見つめられて、ドクンドクンと鼓動が早くなってしまいます。私だって乙女の端くれ、男性に真っ直ぐ見つめられたらドキドキします。慣れない事態で緊張と混乱が主ですが、違う気持ちも混じってます。


 見つめ合って刹那か那由他かわからぬ時が過ぎ、男性がにこりと笑い手を差し出してきてしまいます。パーティーでのダンスのお誘い経験ゼロの私は、それが何を示すか頭の理解が追いつきません。でも、まさか、もしも、そんな言葉が浮かびます。


 差し出された手をどうすれば良いかわからない私に、男性はゆっくりと優しい口調で言葉を紡いでくれました。それはイザベラ様の近くに居たのでよく知っているけど、私に向けられなかった初めての言葉。


「お嬢様、私と踊ってくれませんか?」




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