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(自称見習い)魔法使いの放浪の先  作者: 橄欖石
第一章 魔法具商店手伝い時々ボランティアの日々
4/8

4話

『魔法は富と権力と共にある』

この世界の誰もが知る常識は、少なくともアルト達が5時間に及ぶ激戦を繰り広げた16ジョウ程の空間では、適用外であるらしい。

アルトの師匠、兼養い親である『アトリエール・サラ』の店主シャラジャユエ・ナージュ・・・通称サラは、権力から最も遠い場所の一つと言えるここ、ミケーレ大森林地帯のミケーレ村に魔法具商店を構えている。激戦の舞台となったのは、店のバックグラウンド且つ心臓部と言える工房と倉庫を兼ね備えた部屋だ。

暇な雨の日の午前中、客が居ないことを良いことに声のボリュームを考えずにおしゃべりに興じてしまった代償は、店舗・工房・住居を兼ねるこの建物の内、工房と一体となった倉庫スペースの大清掃で購うこととなった。

初めに掃除を命じられたのはアルトだけであった。しかし、根が真面目なリティーヤは「アルトが店番を疎かにしたのは、自分達にも責任がある」と主張したため、3人揃っての罰掃除と相成ったわけなのだが・・・。

(どう考えても3人がかりでやらせるつもりだったんだろうな。)


『危険なものは除けておきましたので、部屋の掃除と倉庫の整理をお願いしますね』

そんな言葉と共に掃除用具一式を渡されたときは、3人懸かりでやることだし、大して時間も掛からないだろうと思った。更に言えば、普段必要なものを取りに行く時以外出入りを禁止されている倉庫をじっくり見る良いチャンスだとさえ思った。それは他の二人も思ったに違いない。しかし

「・・・なあ、アルトよ。」

「・・・何さ。」

「この家って平屋建てだったはずだよな。」

「この村で平屋じゃないのはアンタんとこだけでしょう。」

「流石村長の家って感じの立派な家だよね。」

「んなこたぁ今、関係ないだろ。今俺達がいるのは一体どこだ!」

「『魔法具商店アトリエールサラ』の・・・3階だね。」

家の図面を引っ張り出してくるまでもなく、建物の外から確認できる床面積と、ここ以外の部屋面積を考えれば、16ジョウ程の空間しかないハズなのだ。しかし、普段は立ち入らない倉庫の奥に入ったとき、それを見つけてしまった。有る筈の無い2階へ続く階段を。

この家で4年間生活をしていたアルトを含め、初め知った衝撃の事実に少年達は絶望を知る。その頭には後悔が渦巻いていた。

1階から3階まで、そこに並べられた棚には、ギッシリと物が詰まっていた。

『しつかり整理しておいて下さいね。』

少年少女の脳裏には、銀色の髪を伸ばした悪魔の声が、エコーとともに響いていた。




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