大切な旧友の話
僕には古い友人がいる。
僕は毎日彼と遊んでいた。
晴れの日も、雨の日も、彼と遊んでいた。
彼は本当に無邪気で、陽気で、活発な子供だった。僕は感情を表に出すのが苦手だったので、無表情だったけれど、彼が笑うと僕は嬉しかった。
ある日、彼は突然何処かへ行ってしまった。
悲しかった。
辛かった。
耐えられなかった、
絶望した。
絶句した。
諦めた。
心に穴が空いたようだった。
泣きたかった。
でも泣けなかった。
あんなに毎日遊んでいたのに、何の連絡もなしに何処かへ行くなんて……。
僕はそれからの人生を真っ暗な闇で過ごした。
友達は出来なかったし、何をする気も起きない。思考もモヤがかかったように何も考えられなかった。
ずっと、ずっとずっとずっと、一人で、独りでふさぎ込んでいた。
このまましんでしまいたい。死んでしまいたい。死んで、終いたい。死んで、仕舞いたいと、そう思っていた。
でも、死ねなかった。
月日は流れ20年後、僕は奇跡的に彼と再会した。
彼は変わっていたが、僕にはすぐに彼が、彼であると分かった。
僕は嬉しかった。
心が晴れた。
感動した。
感慨無量だった。
視界が明るくなった。
希望に溢れた。
勇気が湧いた。
この気持ちを大切にしたいとおもった。
彼は僕に言った。
「懐かしいな。昔はよく、一緒に遊んでたよな。俺たち」
そういって、彼は僕の背中のゼンマイを優しく巻いた。
非常に短い作品ですが、如何でしたか?
「物に魂が宿る」というのは昔からよく言われていることで、代表的な物でいえば「髪が伸びる人形」があります。
これではホラーになってしまいますが、本作では、「僕」は「おもちゃ」として登場します。
私は昔から物を大切にしてきませんでした。
飽き性でしたし、新しいものが大好きです。
しかし、大切にしている机があります。小学校入学から今まで、私の人生に長く関わっています。
そこからヒントを得て、このSSを書きました。
「大切にしていると物に魂が宿る」
それを物の目線で書いた。まあ、筆休め作品です。
感想などいただけると嬉しいです。
それではみなさん、またお会いしましょう。
闍梨