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取引き

「ねぇねぇ、孟起。」

「ん?何だ。」

 俺は囲炉裏の鍋で汁を作ると、椀にたっぷりと注いで鈴に渡した。

「何で孟起はここに暮らしているの?」

 鈴はそう言うと汁に口をつけたが、あちっ、と悲鳴を上げた。

「ここが静かだからだ。」

 俺はそう答えると、汁をぐいっと飲んだ。

「静かな村だったら私、知っているよ!」

 鈴は無邪気に言った。

「静閑村って言うところ。」

「ふん、そこが静かなら住みたいがな。」

「でしょ?一緒に住もうよ。」

 いや、この少女と一緒だとどこでも五月蠅い気がするが。

「まぁ、気が向いたらだな。」

 俺は汁を飲み干すと立ち上がった。

「どこに行くの?」

「馬を売りにだ。お前を攫った男共のな。」

 家で大人しく待っていろ、と言おうとして俺は振り返った。

 だが、その言葉は彼女の興味津々で無邪気な笑顔を見ているとその言葉は引っ込んでしまった。

 その代わり、口の内側から別の言葉が突いて出てきた。

「一緒に、来るか?」

「うんっ!」


「―――で、鈴のお嬢もついてきた訳か。」

 友人はあきれ顔で言った。

「まぁな。」

 鈴は商品の犬と遊んでいる。

 友人は商いもやっていて、何かと世話になる訳だ。

「んっと、馬が五頭だな。衣類は剥がなかったのか?」

「剥ぎたくもないわ。血に染まった衣服なんて売れないだろう?」

「まぁ、そうだろうが。―――で、お前が生き物を取引するのは珍しいんじゃないのか?」

「うん?誰のせいで生き物を取引せねばならなくなったのかな?」

 友人はそう言いながら地面に数字を書き込んだ。

「ふん、しかし、前々から取引している印象があったが。」

「いんや、生き物は面倒くさい。確実な取引先がいないとしねえよ。奴隷だけは絶対やらないが。」

 友人はそう言うと、地面に書いた数字を全て消して新たに数字を書き込んだ。

「―――これでいいか?」

「―――いつもより低くないか?」

「お嬢の服と食料を引いたんだよ。最近、不景気だからこんなんしか払えねえ。」

「仕方ないな。」

 俺は承諾すると、友人は笑ってコインをいくつか俺に渡した。

「毎度あり。」

 俺はそれを懐に突っ込むと劉鈴の元に向かった。

「鈴。帰るぞ。」

「うん……。」

 鈴は立ち上がったが名残惜しそうに犬を撫でた。

「これも確実な取引先がいるからやっているのか?」

 俺が友人に訊ねると、奴は頷いた。

「猟犬を飼育している場所でだな。どうだい?お嬢、欲しいか?」

「うんっ!」

 鈴はいかにも、と言った様子で頷いた。

「だが、買う金なんぞないぞ。」

 俺が予め言うと友人は少し考え込んだ。

「―――そうだな。こいつだったらどうだ?」

 友人はそう言うと、倉庫に入って何かを持ち出した。

 犬だ。小さいが。

 友人はそれを鈴に渡しながら言った。

「この前、捕まえた奴だが、貧弱でよ。売り物にならねえんだ。一枚で良いから買ってくれよ。」

 一枚……コイン一枚。まぁ、それなら構わないが出来るだけ貯金はあった方がいい。

 俺はチラッと鈴の方を見ると、彼女は子犬を抱きしめて上目遣いで言った。

「孟起……お願い……。」

 う。

 思わず情の動いてしまう顔だ。

 可愛い……。

「―――ふん、貰ってやる。」

 俺はその気持ちを悟られないようにそっぽを向きながらコインを一枚放った。

「毎度あり。」

 友人の笑いを堪えるような声を背後に聞きながら俺は友人の小屋を出た。

 俺は愛馬の元に行ってたてがみを撫でていると、鈴が犬を大事そうに抱えて出てきた。

「ありがとっ、孟起。」

 鈴はニコッと笑って言うと、その犬を掲げて見せた。

 再び先程の気持ちが襲ってきて、俺は顔を背けた。

「行くぞ。鈴。」

「うんっ。」

 俺は鈴を抱えると愛馬に乗せ、その後で俺が馬に乗った。

 丁度、俺の前に鈴がいる感じだ。

「しっかり抱えていろよ。」

「うん。」

 そして、俺は馬の腹を蹴った。

 馬は軽快に大地を駆けていった。

ハヤブサです。


いや、ほのぼのしていて羨ましいです。

あー、孟起さん、いいなー。


当分、ずっとほのぼのしている予定です。


あ、感想待っていますねー。

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