留学から帰ってきたら、婚約者が第二王子と結婚式を挙げていました。王家の陰謀で婚約者を奪われた私が、熱き公爵令嬢と新たな未来を築いた件
ロイドは信じられない光景を見ていた。
自分と結婚するはずだったエレンシア・フォデル公爵令嬢が、フェリウス第二王子に手を引かれて、教会から出てきたのだ。それもウエディングドレスを着て。沢山の人達が集まって二人を祝福している。
エレンシアは嬉しそうに、フェリウス第二王子に向かって微笑んでいて。
あんな嬉しそうな顔を私に見せた事はあったか?
あんな幸せそうな顔を私にした事はあったか?
何でだ?エレンシア。君は私と結婚するのではなかったのか?
君は隣国へ出国する自分を見送ってくれた。
港まで馬車で来てくれて、涙ながらに見送ってくれたのだ。
ロイド・ラクテウス公爵令息は、歳は20歳。二つ年下のエレンシア・フォデル公爵令嬢と3年前に婚約を結んだ。ロイドは次男である。フォデル公爵家に婿に入る形で、家柄も丁度よく、エレンシアとは互いに見知った間柄だった。
ピアノを嗜むエレンシア。
バイオリンを嗜むロイド。
二人は王立学園での音楽を嗜む会に入っており、よく一緒に演奏をしていた。
どんな激しい演奏をしても、エレンシアは呼吸を合わせて、ぴったりとついてきてくれる。
エレンシアとだったら、高みに登れる。
「わたくし、ロイド様と共に演奏をしているこの時がとても幸せで」
「私もだ。ああ、これからの人生、君と共に、演奏をし、人生を走り抜けていきたい」
「どこまでもついていきますわ」
美しいエレンシア。エレンシアを抱き締めて口づけをしようとした。
エレンシアに唇を指で押さえられて、
「結婚するまでは。わたくし、結婚式で初めての口づけを捧げたいと思いますの」
なんて可愛らしい事を言うんだ。エレンシア。
ロイドは愛しさのあまり、
「ああ、結婚が待ち遠しい。君と早く一緒になりたい」
「わたくしもですわ」
だから、婿に入るフォデル公爵家には足繁く通い、義父に当たるフォデル公爵と公爵夫人に頻繁に会って、親交を深めた。
フォデル公爵はロイドを気に入っており、
「こんなに、真面目に領地経営を学んでくれて、君がうちに婿に来てくれて嬉しいよ」
公爵夫人も、
「ああ、本当に。ロイドがうちに婿に来てくれるなんて、わたくしも嬉しいわ。二人の演奏を聞かせてくれないかしら」
エレンシアは頷いて、
「ロイド様。お父様とお母様に演奏をして差し上げたいのですが、お付き合いお願いできますか?」
「勿論だよ。エレンシア」
ロイドはバイオリンを手に、激しい曲を演奏をした。
エレンシアはぴったりとついて来てくれる。
なんて心地よい。演奏が終わると公爵夫妻は拍手をしてくれて。
「素晴らしい。ああ、この演奏がこれからも聞けるだなんて」
「本当に素敵でしたわ。さすがロイド」
公爵夫妻も喜んでくれた。
全てが順調だった。順調だったのに。
第二王子フェリウスがエレンシアに思いを寄せているのは知っていた。だが、フェリウスだって婚約者がいる。
ルディリア・アマリウス公爵令嬢だ。
ただ、エレンシアは可憐な感じの金髪の優しい感じの美人だが、同じ金髪美人でもルディリアはきつい感じの令嬢だった。
フェリウス第二王子は美しい。銀の髪に青い瞳。だから色々な女性達からモテる。
ロイドも美しさは負けてはいないと思うが、黒髪に青い瞳のロイドより、派手なフェリウス第二王子の方がモテた。
フェリウス第二王子は婚約者のルディリアがいるのにもかかわらず、エレンシアに付き纏った。
他の令嬢達には目もくれず。エレンシアにいつも声をかけてきて。
「今日も美しいな。エレンシア。君が婚約者だったらどれ程、よかったのか」
エレンシアは困ったように、
「わたくしは、ロイド様のラクテウス公爵令息の婚約者ですわ。第二王子殿下におかれましては、ルディリア・アマリウス公爵令嬢という婚約者がいらっしゃるでしょう?誤解されたら困ると思うのですが」
「私が君と一緒にいたいと言ったのだ。誰にも文句は言わせない。だいたいだな。ルディリアは口うるさくてうっとおしい。もっと学べ。我が公爵家に婿に来るなら、しっかりしろとか。うるさくてな。きつい女だ。それに比べてエレンシアはなんて、優しい」
「優しくなんてありませんわ」
「いやいや、はかなげな美貌。ルディリアとは大違いだ。私は必ず、エレンシアと結婚する」
「ちょっと、それは困ります。わたくしはロイド様と結婚するのですから」
「エレンシア。愛しているっ」
ロイドは二人のやりとりにイラついて、間に入って。
「私とエレンシアは婚約しております。それなのに、エレンシアを口説くとはどういうつもりでしょうか?」
「私がエレンシアと結婚したいと思っているからだ」
「はぁ?第二王子殿下におかれましては、ルディリア・アマリウス公爵令嬢という婚約者がおいででしょう?アマリウス公爵家に婿に入ると聞いておりますが」
「アマリウス公爵家より、フォデル公爵家に婿に入る。フォデル公爵家の方が領地が広いではないか。ワインの名産地だとか。私はワインが大好きだ。だから、フォデル公爵家に婿に入る」
「そんな身勝手な事が、第二王子殿下の我儘で許されるとでも」
「不敬であるぞ。私は王族だ。第二王子だ。口答えするな」
あまりの態度に、ロイドはイラついた。エレンシアはロイドに向かって小声で。
「フォデル公爵家とラクテウス公爵家の連名で王家に苦情を出しましょう。酷すぎますわ」
「そうだな。そうしよう」
苦情を出そうとした矢先に、留学の話が持ち上がった。
ロイドが半年、バイオリンを学ぶため、隣国へ留学することになったのだ。
隣国は音楽が盛んである。確かに魅力的な話だが。
それを勧めてきたのが、王妃だった。
「ラクテウス公爵令息ロイドは、バイオリンの腕が素晴らしいと聞いております。隣国に半年留学してバイオリンを学んできては?」
バイオリンの腕を上げたい。
もっともっと高みに登りたい。
フォデル公爵夫妻と、エレンシアに相談した。
フォデル公爵夫妻は、
「王妃様がお勧めになるというのだ。なぁに半年の留学ではないか。行ってくるがいい」
エレンシアも、
「お手紙書きますわ。素晴らしい師がついて教えて下さるのでしょう?行ってきては如何?」
と勧めてくれた。
両親であるラクテウス公爵夫妻も賛成してくれていたので、ロイドは皆の好意に甘える事にした。
留学する当日、エレンシアは見送りに来てくれたのだ。
涙ながらに、
「お帰りお待ちしておりますわ」
「ああ、こちらからも手紙を書くよ」
船に乗ってエレンシアの姿が見えなくなるまで手を振った。
留学先でバイオリンの世界で名が知られているブラウ師について、バイオリンを習った。
毎日が楽しくて楽しくて。あっという間に過ぎていく日々。
エレンシアの手紙も最初は来ていたが、忙しくて返信を伸ばし伸ばししていたら、いつの間にか来なくなった。それでも楽しい日々に慣れてしまい、すっかりエレンシアの事を忘れていた。
戻ったらきっと彼女は喜んでくれる。戻ったら、結婚に向けて動かなければ。
そうロイドは思っていた。
半年後、いざ、戻ってみたら、ラクテウス公爵である父に連れられてとある教会の前で馬車から降ろされて。
そこで見たのはフェリウス第二王子と結婚するエレンシアだった。
父はロイドの肩に手を置いて、
「お前に知らせようと思ったが、もう二人の婚約は決定したと、我が家との婚約は解消しろとの王家からの命で、解消せざる得なかった。お前は楽しそうだったから、留学を終えてから知らせてもよいかと」
「大事な事じゃないですか?すぐに知らせてくれれば」
「知らせたとて、どうしようもない事だ。王家の命には逆らえない」
「もしかしたら、王妃様は私をエレンシアから遠ざける為に留学を?私が反対するのを阻止するために?」
「お前が王家が結ぶ縁を反対しても、握りつぶされるだろうよ」
王家の権威は大きい。貴族の結婚に異を挟むことが出来る程に。この王国の王家の権威は大きかった。
だから、エレンシアは……
泣く泣くフェリウス第二王子に嫁いでいったのか?
いや、あんなに楽しそうに嬉しそうに笑った顔を見た事は無かったぞ。
二人が新婚旅行から帰ってくるというので、フォデル公爵家の門前で待ち伏せした。
エレンシアに幸せか聞きたかった。
エレンシアの気持ちを聞きたかった。
門の前に馬車が止まる。窓からエレンシアが顔を出した。
「まぁ、ロイド様。何用ですの?」
フェリウスが馬車から降りて来て、
「エレンシアは我が妻ぞ。そなたとの婚約は解消され、私とエレンシアは結婚したのだ」
エレンシアも馬車から降りて、
「この際だから言いますわ。ロイド様に」
ロイドはエレンシアの前に立つ。
「悔しかっただろう?私との結婚をあれ程、楽しみにしていたのに。私は隣国に留学するのではなかった」
エレンシアは微笑んで、
「最初、フェリウス様の求婚には困りましたわ。でも、わたくしは解りましたの。貴方と結婚するより、フェリウス様と結婚する方が何倍も幸せだということを」
「どういうことだ?」
「貴方はバイオリンの腕を上げることが大事で、わたくしの事は二の次」
「でも、君はピアノの演奏を嬉しそうに私と合わせてしてくれたではないか?」
「どれだけ貴方に合わせるのに苦労したと思っているのです。わたくしは練習に練習を重ねて。貴方ったら、自分の事しか考えないのですもの。貴方について行くのにどれ程、わたくしが苦労した事か」
「知らなかったんだ。でも、バイオリンだけでなく、フォデル公爵家の領地経営の勉強だって一生懸命したではないか」
「そんなの当たり前です。我が家へ婿に来るのですもの。それに、フェリウス様ったら、わたくしに首飾りや耳飾り、ドレスまでプレゼントして下さいましたわ。わたくしの好きな薔薇の花も」
「プレゼント?私だって君にプレゼントを」
「ああ、好みに合わなかったのでつけなかった地味な色のブレスレッドや、首飾りのことかしら。どうしてあんな安物を」
「だって、私達は税を貰って生活しているのだ。あまり高価な物を身に着けるのはよくないだろう?」
「貴方のバイオリン。幾らすると思っているのですか?」
「バイオリンは別だ。高ければ高い程、私の望む音が出る」
「わたくしは、フェリウス様のお陰で素敵なドレスや首飾りや耳飾りに身を包むことが出来ましたのよ。わたくし、とても幸せ。ですから、二度と、わたくしの前に現れないで下さいません?」
だから父も手紙で知らせなかったのか‥‥‥エレンシアの心が自分から離れていたから。
ウエディングドレスを着て、幸せそうに微笑んでいたエレンシア。
ああ、私はなんて自分勝手だったのだろう。
バイオリンの腕を高める事だけを考えて。
バイオリンを一番に考えて、エレンシアは二番だった。
もっとエレンシアを大切にすればよかった。
後悔してももう遅い。
ロイドは地に膝をつくのだった。
ロイドは辺境騎士団へ来ていた。
情報部長オルディウスと面会していた。
オルディウスは辺境騎士団の情報部の貴公子と言われている銀の髪に青い瞳の美男だ。
客間に通されて、ロイドはオルディウスに事の次第を説明した。
「そういう訳で私は婚約者だったエレンシアの本当の気持ちに、気づく事が無く、留学している半年のうちに彼女を失ったのです」
「屑の美男として、教育されに来たのかね?」
香り高い珈琲を淹れたカップをテーブルに差し出してオルディウスが聞いてきた。
ロイドは首を振って、
「私はそんな悪い事をしたのでしょうか?確かにエレンシアを苦しめたとは思います」
「それなら、明日、屑の美男達にお前の話をしてやれ。そして、バイオリンを弾いて聞かせてやってくれ。何か彼らの心に響くと良いな」
「そうですね。私も反省を込めて弾きたいと思います」
屑の美男達を集めて、バイオリンの演奏会が開かれた。
変…辺境騎士団とは屑の美男をさらって教育する騎士団だ。本業は魔物討伐とされている。
屑の美男達は集められて、ロイドの話を聞く事となった。
現在30人程いる屑の美男達。皆、うつろな目でロイドの話を聞いている。
「という訳で私は婚約者を失ったのだ。もっと彼女に寄り添えばよかった。もっと彼女の気持ちを解ればよかった」
話しているうちに、だんだんとエレンシアの気持ちが解って来た。
自分のバイオリンの激しい曲に合わせるピアノ伴奏は大変だっただろう。
素敵な首飾りや耳飾り、ドレスのプレゼントが婚約者である自分から欲しかっただろう。
バイオリンだけには金をかけていた自分はどうしようもない男だ。
話が終えた後、バイオリンを弾き始めた。
静かな心に響く曲を。
屑の美男の中には、泣きだす者も出てきた。
辺境騎士団四天王のアラフが、
「ここに来ている屑の美男は酷い奴らばかりだ。沢山の女性達が苦しんで泣いてきた。でも、少しは改心してくれるといいな」
オルディウスが優雅に紅茶を飲みながら、
「そうだな。まぁ改心するだろう。いずれ」
マルクがオルディウスの腰に触手を絡めながら、
「改心するよ。俺達が教育するからね」
ゴルディルが指をぽきぽきと鳴らしながら、
「さぁて今宵も北の帝王が荒れまくるぞ」
エダルも頷いて、
「三日三晩の説教からの心を折って、徹底的に教育だ」
アラフは相変わらずの連中だなと笑ったが、マルクの触手に腰を絡められながら涼しい顔で紅茶を飲む情報部の貴公子も凄いなと思う今日この頃であった。
辺境騎士団から戻ったロイド。
新たな婚約者を探さねばならない。
自分の婿入り先を。
ただ目ぼしい相手は皆、婚約済か結婚していて、ロイドはバイオリニストとして生きようかと思い始めた頃、面会しに来た女性がいた。
ルディリア・アマリウス公爵令嬢だ。
ルディリアは客間に通されるとロイドに向かって。
「貴方、うちに婿に来る気はないかしら?」
直球で訪ねてきた。
ロイドは慌てて、
「アマリウス公爵令嬢。確かに、君もフェリウス第二王子の婿入りの話が無くなったね。でもアマリウス公爵家なら身分を問わねば、来たがる令息は沢山いるのではないかと」
「身分を問わなければいるわ。でも、わたくしは嫌。ある程度の教育を受けていて、身分もわたくしと釣り合わなければやってられないわ。だって第二王子が婿に来るはずだったのよ。それなのに、フォデル公爵家に盗られてしまって。だから貴方に来て欲しいの。貴方なら身分的にも申し分ないわ」
「私はバイオリニストとして生きてもいいと思っている。せっかく勉強したんだ。この腕を生かして生活しても構わないと」
「わたくしは嫌。わたくしにふさわしい婿が欲しいの。わたくしはわたくしは、一生懸命、勉強してきたわ。フェリウス殿下が来てもいいように、釣り合うように、公爵令嬢としてふさわしいように、振舞って。自分を高めて。でも、エレンシアに盗られてしまった。わたくしは、あの女程、美しくもない。我が公爵家の領地もあの女の領地程、広くはない。でも、我がアマリウス公爵家の領地だって、麦の産地よ。沢山の麦が取れるわ。美味しいパンだって色々と開発されて売っている。胸を張って誇れる領地よ。その領地を一緒に盛り立てていってくれるのに、下位の貴族では嫌なの。公爵家の出身のある程度、頭の良い夫が欲しい。わたくしは貴方が欲しいの」
ルディリアに正面から強い眼差しで見つめられた。
凄い熱を感じる。
ロイドはルディリアに、
「私一人の一存では決められない。ラクテウス公爵家とアマリウス公爵家との結びつきになる。私たちの両親達の話し合いだな。私としては、アマリウス公爵家の領地が見たい。君が誇っている麦の産地だというのなら、麦畑を見たい。麦で作ったパンを食べたい。色々と見てみたい」
「ええ、いくらでも見せるわ。今度、正式に両親を伴って挨拶に来ます。貴方からもご両親に話してみて」
そう言って、ルディリアは帰って行った。
学生時代に交流はなかった。婚約者以外の女性と親しくするのは礼儀違反だと思って親しくして来なかった。
あんな熱い令嬢だとは知らなかった。
二日後、アマリウス公爵夫妻と共にルディリアは、ラクテウス公爵家にやって来た。
父と母も乗り気で。
「良い話ではないか?ロイド。アマリウス公爵家に婿入りとは」
「そうよ。ロイド。この話を受けなさい」
と言われていたので、両家の話し合いの末、婚約は結ばれることとなった。
アマリウス公爵夫妻は、
「ああ、このような優秀な婿がうちに来てくれるなんてなんて嬉しい」
「よろしくお願いしますね」
と言ってくれて、両家の親達は客間で交流し、ルディリアと二人で庭を散歩することにした。
ルディリアと共に庭に出る。
ルディリアは俯いて、
「強引に話を勧めてしまってごめんなさい。どうしても貴方と結婚したかったの」
「君の気持ちはこの間、聞かせて貰ったよ。本当に熱い心を持った人だね」
「ずっと高みを目指して来たから、もっと高みを目指したいから。だから、きっとフェリウス様に嫌われたのね」
「嫌がられていたのか?」
「ええ、君はきつくて、疲れると言われたわ」
「私も婚約者に疲れると思われていたようだ。ずっと私のバイオリンに合わせる為に努力してきたとか、私が安物のアクセサリーしかプレゼントしないとか文句を言われた」
「安物は困りますわ。公爵令嬢として、先行き、公爵夫人として馬鹿にされますもの」
「確かに。それでいてバイオリンだけには金をかけすぎると。私は自分勝手だった。だからエレンシアに捨てられたのだな」
「反省していらっしゃるの?」
「勿論。君と結婚したからには、君の気持に寄り添うよう努力したい」
「わたくしはきつい女よ。でも、少しは女性らしく柔らかくなりたいと思ったこともあるの。でも領地を見ていると。あの金色の麦を見ていると。頑張らなくてはと思ってしまう。領民たちの暮らしをよくしたい。領民たちが作る美味しいパンを沢山の人に食べて貰いたい。わたくしは公爵領の為なら命をかけるわ」
「君は本当にアマリウス公爵領が好きなんだね」
「ええ、大好きよ。この領地を守る為ならわたくし‥‥‥」
そう言うルディリアはキラキラしていた。
ロイドはルディリアに向かって、
「君の熱に私も乗せておくれ。アマリウス公爵家の為に私も頑張るよ。もっともっと豊かにしよう。一緒に頑張ろう」
微笑んだ彼女は美しかった。
ロイドはルディリアの唇に口づけをした。
一年後、ロイドはルディリアと結婚し、アマリウス公爵家に婿に入った。
領地で大半を過ごして領地経営を、ルディリアと共に頑張った。
一面に広がる麦畑をロイドも大好きになった。
久しぶりに王都で開かれた夜会に出席した。
フェリウスとエレンシアに再会した。
二人の仲は悪そうで、エレンシアは不機嫌そうな顔をしていた。
社交界の噂ではフェリウスの浮気が絶えなくて、エレンシアが怒りまくっているそうだ。
フォデル公爵家の領地の仕事もエレンシアに任せきりで遊び回っているらしい。
エレンシアはロイドを見るとにこやかに近寄って来て、
「ロイド様、久しぶりですわ。今度、また二人で演奏をしたいですわね」
ロイドはエレンシアに、
「ああ、申し訳ない。王都でゆっくりしている暇もなくてね。領地に明日にでも帰らないと」
「まぁ、忙しそう。こき使われているのですね」
そこへ、ルディリアが近寄って来た。
「用事はすみましたわ。あら、エレンシア様」
「あら、ルディリア様。お久しぶりですわ。おめでたですの?」
「ええ、後、3月後には産まれますわ」
にこやかにそう返して、ルディリアはロイドに寄り添って、
「素敵なロイド様を譲って下さり有難うございます。本当に助かっておりますわ」
エレンシアは悔し気に顔を歪めた。
ロイドは思った。
エレンシアにざまぁみろとか言う気持ちはない。
自分が悪かったのだ。
エレンシアを自分勝手に傷つけたのだ。
心の中でエレンシアに謝っておいた。
ルディリアを労わりながら、夜会の会場を後にした。
「私は君と結婚出来て幸せだと思っているよ」
「まぁ。そう言って下さって嬉しいですわ。子が産まれるのが楽しみですわね」
手を繋ぎながら馬車に乗るロイドとルディリア。
ロイドは愛しい妻の顔を馬車の中で見つめながら、心からの幸せを感じるのであった。
とある変…辺境騎士団
「何か忘れていないか?」
「何か忘れているぞ。屑の美男っ( ゜Д゜)」
「ほら、あの元王子、今は婿に入っているあの美男の屑。四天王どうした?夏バテか?」
「俺達が行ってさらってくるか?」
「そうしようそうしよう」