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33.「第四の……?」

 ヴァラギスもまた、現代日本からの異世界転生者だった事に、俺は驚きを隠せない。


 しかし、それでやっと腑に落ちた。


「だから、ステータス眼鏡の効果を弾けたのか……」


 〝チート能力〟を弾けるのは、同じ〝チート能力〟のみ。

 ヴァラギスの〝変身魔法〟もまた、女神に貰った〝特殊スキル〟なのであれば、俺の〝特殊スキル〟を無効化出来るのも納得だ。


 ちなみに、それは〝悪魔族の特殊能力〟でもあり、ある意味〝能力の重ね掛け〟とも呼べる現象が起こっていた。


 それにより、俺の〝特殊スキル〟は完全に弾かれてしまったらしい(まぁ、あくまで〝変身〟なので、あの〝漆黒獄炎〟は、見た目だけで、攻撃力は皆無だったようだが)。


「で、お前は〝何に対する愛情〟を女神に褒められたんだ?」


 俺の場合は、〝眼鏡に対する愛情がすごいから〟という理由で、女神が転生させた。


 ヴァラギスの場合は――


「んなもん決まってるだろうが。〝悪魔っ〟だ!」

「……は?」


 ――俺の予想の斜め上をいくものだった。


 まるで水を得た魚のように、奴が語り始める。


「世界で一番可愛く、世界で一番尊いもの。それが悪魔っだ! 現代日本にいた頃、俺は悪魔っが大好き過ぎて、『どうしたら会えるんだろう?』『そうだ! まずは自分が悪魔にならなきゃだよな!』と思い付いて、悪魔のコスプレをした上で、ジャングルジムの天辺から『とうっ!』と飛び降りて、着地に失敗して『ごぶべっ!』と、頭を強打して、死んだ。そして、女神に、〝悪魔っへの愛情がすごいから〟という理由で、異世界転生させられたんだ」


 上気した顔で語り終えたヴァラギスとは対照的に、それを見たジーンの瞳は、氷のように冷たく――


「キモッ」

「はうっ!」


 言葉の刃で旦那の心をズタズタに切り裂いた。


 なお、魔王に扮していたヴァラギスの身体から膨大な魔力が迸っていたのは、〝モンスター一の魔法の使い手である種族〟とも称される〝ダークエルフ〟のルメサが、事前に、ヴァラギスに魔力を分け与えていたかららしい。


 また、ヴァラギス自身も悪魔デーモン族であり、少なからぬ魔力を有している事から、そこにルメサの魔力が上乗せされて、あのように莫大な魔力を披露出来たようだ。


 よくもまぁ、そんな手の込んだ事を考え、実行したもんだ。


 それにしても、今回の魔王も偽者だったし、結局、魔王なんていなかった、って事だよな。


 そんな事を思考する俺は、ふと、嫁の言葉にショックを受けて胸を押さえるヴァラギスの尖った耳を見て、思い出した。


 そう言えば、()()()()()()()()()()()()な、と。


 でも、尖った耳をしている()()()()()なんて、別に幾らでもいるし。

 耳が尖っているからと言って、その正体が魔王だった、なんて事はないだろうな。


 『魔王と名乗っているのが、個人的に気に入らない』と、勇者は過去に言っていたようだが、別にそう思うモンスターだって、中にはいるだろうし。


 聖剣アレルギーとも言っていたが、そういうモンスターだって、他にもいるだろう。


 だからまぁ、違うだろうな。

 うん、やっぱり、魔王なんて元々いなかったんだ。


 俺は、改めて、レンに向き直った。


「話は分かった。不安にさせてすまなかった」

「本当、鈍感にも程があるわよ!」

「悪かった」


 「全くもう」と呟いたレンは、もじもじとその翼を擦り合わせる。


「……で、さっき告白してくれたって事は……その……もう……そういう事よね……? ……あたしたちの関係って……」


 頬を朱に染める彼女に、俺は――


 今度こそ、ちゃんと、俺から伝えよう!


 ――そう決意して――


「ああ。勿論だ」


 ――世界一好きな女性の目を真っ直ぐに見て――


「結婚しよう!」

「!!!」


 ――そう告げた。

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