31.「能力」
防御魔法無しでどうにか出来る代物じゃない。
俺は、覚悟を決めるが――
「ラルド!」
――悲痛な叫び声を上げるレンを見て――
そうだな。
足掻くか――
――俺は、二人で歩む未来を一瞬、空想して――
「『防御眼鏡』 『防御眼鏡』 『防御眼鏡』 『防御眼鏡』 『防御眼鏡』 『防御眼鏡』 『防御眼鏡』 『防御眼鏡』」
――防御眼鏡を重ね掛けした。
俺を包む防御魔法の光が強まる。
恐らく、ここまでしても、きっと魔王の魔法には効果が無いのだろう。
だが、足掻かずにはいられない。
そう。
やっと自分の気持ちに気付けたんだ。
やっと、気持ちを通じ合わせる事が出来たんだ。
レンと共に生きていく、そんな将来のために――
――一パーセントでも、可能性があるなら、それに懸けない手は無い――
「死んでたまるかあああああああああああああああああああああああ!!!」
――足掻く――
――最期の瞬間まで――
「『防御眼鏡』! 『防御眼鏡』! 『防御眼鏡』! 『防御眼鏡』! 『防御眼鏡』! 『防御眼鏡』! 『防御眼鏡』! 『防御眼鏡』!」
――俺の展開する防御魔法が放つ、光の奔流が――
――魔王が飛ばした〝漆黒獄炎〟に触れる――
――寸前に――
「きゃっ!」
「!?」
――広場から見える、森の中――
――木の傍に倒れたのは、ジーンだった。
どうやら、木の根に躓いて、転んでしまったらしい。
え?
あんな所で、何をして――
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
――それに気付いた魔王が、突然、雄叫びを上げる。
「バカ! 駄目ですわ! もう少し最後まで――!」
――と、立ち上がったジーンが、必死に止めようとするが――
――魔王は、大口を開けて――
「ジーンたあああああん! 見てた? 僕ちん、頑張って〝魔王〟を完璧に演じ切ったにょおおおおおおおおおん!!!」
「「「………………」」」
……へ……?
沈黙が場を支配する。
暫くして――
「コホン。さぁ、食らうが良い。『漆黒獄炎』」
「いや、無理無理無理無理。誤魔化せないから」
仕切り直す魔王に、俺は半眼で突っ込む。
マジか……!?
やられた……!
そういう事かよ……!
「本当はヴァラギスなんだろ、お前?」
「な、何をほざいている? 俺様は魔王さまで、てめぇが言うような男は我は知らないにょだよ、貴様」
「もう色々混ざって訳分からなくなってるじゃないか」
「はぁ」と深い、深~い溜息をついた俺は――
「取り敢えず一発殴らせろ」
「え? いや、それはやめごぶべっ!」
――魔王を思いっ切り殴り、吹っ飛ばした。
「ごばっ!」
――地面に落下し、悲鳴を上げた直後――
「ほらな」
――魔王は、本来の姿――つまり、悪魔族の〝ヴァラギス〟へと戻った。




