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12.「二百年の間に出来るようになった事」

「最初は、レインボーを吐き続けるのが、苦痛で堪らなかったんだ」


 顔を上げて、どこかここではない遠くを見詰める勇者。


「けど、十年ほどして慣れた。呼吸と同じ感じになったのさ」


 そう言うと、まだほんの少し残っていたのか、口許から垂れて来たレインボーを、勇者が拭う。


「それでさ。暇だから、それから百九十年ほど修行したんだ」

「いや、暇て」


 いくら無限の時間があるからと言って、誰にも知覚されない中、常にレインボーを吐き続けながら、〝よし、修行しよう!〟などと、前向きに考えられるだろうか。


 勇者の言動は、常軌を逸している。

 まぁ、もしかしたら、世界の命運を握るような戦いに身を投じる勇者という存在は、普通の思考をする凡人には務まらないのかもしれないが。


 コップのお茶を一口(すす)った勇者は、更に言葉を継ぐ。


「その結果、それまで使えなかった〝解毒魔法〟を窮める事に成功してね。治癒魔法と回復魔法も使えるようになったんだ。解呪魔法は今でも使えないけどね。うーん、もしかしたら、呪われている最中だったから、自分で呪いを解けるようになっちゃうような行動は、制限されていたのかもしれないけど」


 話を聞いたレンが、瞳を輝かせた。


「じゃあ、これでライムちゃんのお兄さんに会いに行けるじゃない! ラルドが結界を破壊して、クソ――じゃなかった、勇者が毒を無効化すれば良いんだから!」

「思いっ切り〝クソ〟って言ってるぞ、おい」


 未だに〝レインボーを身体に浴びせられた恨み〟は消えていないらしく、さり気無く罵るレンを俺は半眼で見やる。


「あ、それとも、勇者が張ったんだから、結界も勇者が解除すれば良いのかしら?」

「そうだね、勿論僕は解除出来る。けど、もし眼鏡屋が結界を壊せるなら、その方が助かるかな」


 「何故だ?」と俺が訊ねると、勇者は答えた。


「理由は二つある。まず一つは、毒汚染地域の毒は、常に外に広がろうとする動きがあるため、タイミングをきちんと見計らわないと、モンスター王国南部へと汚染が広がってしまうという事。もう一つは、あの広大な地域の毒全てを無効化――浄化しようとすると、かなりの魔力を練った上で、大規模な魔法を使う必要があるからだよ。僕は〝大規模浄化魔法〟の構築に集中したいから、必然的に、結界の方は他の誰かにお願いする事になる」


 俺が、「なるほどな。分かった」と、頷いた。


 ――直後。


 バン!


 店の扉が勢い良く開かれたかと思うと――


「話は聞かせてもらったイム! これで、お兄ちゃ――兄を助けに行けるイム!」


 そこには、眼鏡を掛けた赤色のゼリー状モンスター――ライムがいた。

 その必死さから、ブラコンだとは思っていたが、兄の呼び方もそれっぽい事が分かったので、俺の推測は確信に変わりつつある。


 それにしても、いつも思うが、その身体でどうやって扉を開けてるんだろう?


「ライムちゃん! 良かったわね!」

「感謝するイム! これで、もう眼鏡屋の服を溶かさなくても済むイム!」

「いや、助けに行けなくても俺の服は溶かすなよ」


 ぷにょんぷにょんと飛び跳ねて、喜びを全身で表現するライムに向けて――

 ――おもむろに立ち上がった勇者が、無造作に手を翳すと――


「『ファイア』」

「ギャアアアアアアアアアアア!」

「きゃあああああああああああ!」


 ――()()()()()()()()

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