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8/14

8. 天野心晴という女子は


ひとり、くらい、さびしい、こわい。


◆ ◆ ◆


7月14日月曜日。


私、天野 心晴は現在、保健室にいる。


今日はボランティアのため優利は来ない。ちょっとショック。


そして今私の目の前に座っているのは私のライバルである神咲 雪。


今日はこの女狐に呼ばれたため、誠に面倒くさいが優利のいないこの保健室に足を運んだというわけである。


「それで、女狐。今日はどういう要件?」


私は不満そうな顔を隠すことなく言った。


まあ実際すっごく不満だし。


「ごめんね心晴ちゃん。今日は優利くんもいないことだしちょっと聞きたいことがあって」


女狐は珍しく申し訳無さそうにしながらそう言ってきた。


ただ、正直聞きたいことというのは気になる。


一体この女が私に何を聞きたいというのか。


「心晴ちゃん。あなた...........」


女狐はゆっくりとこちらを向き、視線を合わせていった。


「過去に何かあったでしょ。主に.......人間関係で」


背筋がぞくっとした。


さっきまではだるいということしか感じていなかったのに、今は驚愕が私の心を覆っている。


なんで今さら.........


そもそもなんでこの女がそのことを.........


「その反応を見るに、あたりみたいだね。わかるよ。私も.........同じだったから」


そんなことを言われても疑問は増えるばかり。


この女が私と同じ?


なにが?


どこが?


どうして?


様々な疑問が私の頭の中を駆け巡る。


「よかったらでいいんだけど、心晴ちゃんの過去.......聞かせてもらえないかな?」


思考が急に冷静になる。


つばを飲んだ。


話すつもりなんてなかった。


話していて気持ちいいものでもないし、聞いていて楽しいものでもない。


誰も知る必要もない。


誰かに知られるメリットもない。


だけど..........


この人になら話せるって、心が叫んでいる。


この人は同じだって。


大丈夫だって。


別に根拠はない。直感だ。


でも、話してみようって、そう、思った。


「わかった。話してあげる。ただし、口外禁止」


「ありがとね、心晴ちゃん」


「礼を言われるようなことはない」


そうして私は話し始めた。


一人の男子とそして.........()()()女子の話を.........


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「こんにちは!心晴さん!」


「うるさい.......」


保健室にて。


顔を合わせるたびににこにこで近づいてくる彼を今日も振り払う。


朝霞優利。


なぜかいつも保健室にいて、いつも話しかけてくるうざいやつ。


そんな彼に、私は冷たい態度を取っていた。


そりゃそうだ。


正直言って鬱陶しかったし。


それにあの頃の私は.......かさんでいた。


人を信用することを怖がって.........人を信用することを諦めていた。


でもきっとどこか..............あの太陽のような明るさに救われていたんだと思う。


最初は無視から始まった彼への対応は徐々に軟化し.........気づけば普通に話す友達のような存在になっていった。


そして、ある日...........


私は彼に悩みを暴露したのだ。


助けてほしかったわけじゃない。


哀れんでほしかったわけじゃない。


ただ........


聞いてほしかった。


知ってほしかった。


ただ、それだけだ。


私は生まれつきの天才だった。


別にこれは自慢でもおごりでもなく、あくまで事実を言っているだけである。


大抵のことは何もしなくてもできた。


いろんな大人たちから天才だなんだともてはやされた。


別にその言葉たちに興味はなかったが、悪い気はしなかった。


私の親は優しい人たちで、よく私のことを褒めてくれた。


私の才能に対してではなく、そこにある努力に対して。


二人はしっかりと私を見てくれていた。


でも、いやだからこそかもしれない。


私によってくる人たちが私ではなく才能しか見ていないということを強く感じた。


そしてある日から..............




いじめが始まった。


悪口を言われた。


殴られた。


陰口を言われ続けた。


それが嫉妬からくるものだと理解はしているが、私はそれを気持ちよく思えるほど強い人間でもなかった。


少しづつ人が信用できなくなっていき、私は教室にいけなくなった。


保健室で授業やテストだけを受ける毎日。


両親は心配していたが、どこまでも私の意思を尊重してくれた。


本当にいい親だと思う。


だからこそ、申し訳無さはあったが。


いじめの主犯格はわかっていた。


九条 瑠璃。


大手財閥の令嬢で、お金をくさるほど持っているらしい。


だが、私はどうしても彼女のことを嫌いになれなかった。


それがなぜだかわからなかったが。


彼に話し終わったときには、私は無意識に涙を流していた。


もう悲しみの感情を感じたのなんていつぶりだろう。


彼は静かに、そして真剣に私の話を聞いていたが、話が終わると突然立ち上がった。


そしてこちらを向いて言ったのだ。


俺がなんとかする───と


正直、なんとかできるのかという不安はあった。


けれど、私は本当に久しぶりに人を、彼を信じることにした。


だって彼は───



私自身を見てくれていたのだから。

お久しぶりです!ぺこりです!

またモチベが出てきたので書きたいと思います!

もしよろしければブクマと評価の方をよろしくお願いします!

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