19.勲章を授与されました②
マティアス王子と別れて、城を出てみると、外がまぶしく感じられた。
春の陽気が心地いい。
自分の家の馬車を探していると、背後から声をかけられた。
「少し時間、いいかな」
クラウスだった。
北方地方での魔獣討伐が一段落した後、アデレードの要求に、クラウスが折れた形で、婚約は白紙になっていた。
まだ公にはしていないが、そのうち両家から発表されるだろう。
「今日、あなたに会えるのが楽しみだった。ずっと避けられていたから」
「避けていたわけじゃ・・・」
アデレードは嘘をついた。実は本当は避けていた。
「あなたに話したいことがあったんだが、話しかけられなかった」
「以前はあんなにあなたと会う機会があったのにな。俺はいったいなにをしていたんだろう」
クラウスが苦しそうに微笑む。
「クラウス、婚約の件はもうーーーー」
「ああ、そのことは諦めている。諦めたくはないが。でも、もう一度、あなたにきちんと謝りたかったんだ。申し訳なかったって」
「・・・・・・」
「あなたは優れた魔術の使い手だったんだね」
全然知らなかった、とクラウスがつぶやく。
「ふふ、魔石があればだけどね。レティシアと張り合えるくらいには使えるの」
「・・・・・・」
冗談を言ったつもりだったのだが、クラウスの中ではまだ冗談にはできないらしい。
空気が凍って、気まずい。
(盛大にすべったわ・・・つまらない冗談なんか言わなければよかった!)
あれからクラウスとレティシアは破局したままだ。
このまま破局を願っているわけではないが、応援するほどお人好しでもない。
しばらく無言が続いた。
「・・・こんなこと俺に言われたくないかもしれないが、少し気になって」
不意にクラウスが言った。
「な、なんでしょう?」
「マティアス王子は信用しないほうがいい」
「え?なんで?」
クラウスにそんなことを言われたくない。
アデレードは無性に腹が立った。
(あなたはもう、わたしに関係ないはずよね?)
「あなたが、高慢で身持ちが悪いってマティアス王子が王太子に伝えていたぞ」
。
「は?ユリアン王太子に?・・・わたしのことを?・・・マティアス王子が?・・・嘘よ」
「嘘じゃない」
「じゃ、じゃあ何でそんなことを・・・」
「分からない。しかし、これは本当の話だ。俺の部下数人が聞いていた。確かめてもらってもいい」
アデレードは、頭の中が真っ白になった。
(何でそんなことを言ったんだろう)
いきなり奈落の底に突き落とされた感じがする。
マティアス王子とは、もっと温かい関係だと思っていた。
気がつかないうちに、こんなにマティアス王子のことを信頼していたんだ。
アデレードは下を向いた。
どうしてこんなに悲しいんだろう。
(王子は、ずっと、心の中ではそう思っていたのかしら)
「王太子殿下に、先日あなたについて聞かれた」
「マティアス王子の言うことは本当かと。だから、俺は強く否定しておいた」
「あなたは素晴らしい女性で、あなたをないがしろにしていたことを、俺はとても後悔しているって」




