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【8作目】人間嫌いだからって、天使が好きなわけじゃない  作者: あぱ山あぱ太朗
二章 隣席のオオカミ系女子を攻略せよ
8/32

2-1

「おはよう、伊東! 今日もいい天気だな!」

「ちっ」

 隠すこともない堂々とした舌打ち。もはや清々しい。

 伊東は不機嫌そうにカバンだけ置いて、席に座ることなく教室から出て行ってしまう。

「ありゃりゃ~! 今井くん、またフラれちゃったね~。今日も関係に進展なし!」

「ま、まだまだ……」

 伊東がリングを取り込んでいることが発覚してから二日が経過した。

 付き合う・付き合わないの問題は一旦置いといて、それでも関係を深める必要があるわけなので、こうやって根気強く声を掛けているのだが見事に無視され続けている。

 これまでのやり取りを考えたら、それも当然っちゃ当然なのだが。

「今井くんって発情期か何かなのー? 世読に対しても『この間はせっかく声を掛けてもらってたのに邪険にしてすまなかったな』とか言って関係修復を迫ったり、ガッツリ嫌われてるのに汐莉ちゃんを口説こうとしてるし!」

「ち、違うっての! 単純にクラスメイトと仲良くしたいだけだ!」

 リオンに諭されたこともあり、鬼崎には先日の対応について謝罪をした。

 その甲斐もあってまた話ができるようになったわけだが、僕が伊東との会話を試みて玉砕する度に斜め後ろから揶揄うように声を掛けてくる。

「本当にそうなのかなー? クラスでは今井くんが汐莉ちゃんを必死に口説いてる、って認識だよー? なんかもう勢いが凄いじゃーん? 必死すぎて気持ち悪いくらい~!」

「それは……うん」

 否定することが出来なかった。

 この二日間、何かしらのきっかけがあれば伊東に接触を試みている。

 挨拶はもちろんのこと、昼休みは食事に誘ったり、放課後は一緒に帰らないかと提案をしてみたりもした。言うまでもないと思うが、ことごとく全て断られている。

 我ながら気持ち悪いという自覚はあった。だけど、ただ受け身では関係も進展しない。無謀だと分かっていても、会話の機会を増やす以外の方法が思いつかなかった。

「青春してるねぇ、今井くんは!」

「青春なのか、これが……?」

 こんなメンタルが崩壊しそうになることが、か。

 二日間の行動により、夜眠れなくなったり、謎の腹痛を繰り返したり、耳鳴りがしたりと、完全に自律神経がイカれてしまっている。間違いなくストレスが原因だ。

「青春はほろ苦い!」

「そこは甘酸っぱいじゃないのか」

「だって~、汐莉ちゃん完全に脈ナシじゃーん!」

「……お前も歯に衣着せぬやつだな」

「今井くんに言われたくなーい! ま、汐莉ちゃんも今クラスで難しい立場だし? 根気よく話し掛けていれば心を開いてくれるタイミングはあるかもねー!」

 そうなのだ。今現在、クラスにおける伊東の立場は危ういものになっていた。

 原因は二日前のリオンを学校に連れてきた日、伊東がリオンの存在を大々的に指摘したことに起因する。

 結果論になってしまうが、伊東はあの時黙っているのが正解だった。

 僕の目線では伊東の行為には何ら不思議はない。教室に天使が入って来たのだ。それを指摘しないで放置している方が不自然でしかない。

 だが、クラスメイト目線では違う。彼らにはリオンが見えていない。存在しない少女の幻覚を見た上に、クラスメイト(僕)に絡んでいったヤバいやつ。鬼崎曰く、クラスではそんな風に認識されているらしい。

 もともと懇意にしている友人もいなかったみたいで、誤解は解けることなく尾ひれはひれがついた噂だけが一人歩きしているとか。

 伊東からすれば、それは不本意でしかないだろう。

 そういった事情もあり、一度だけ伊東の方から僕に接触してきたことがあった。

 あの日、屋上から戻ってきた後の話である。


「ねぇ、アンタの後ろに天使の格好した女の子……いたよね?」

「い、いや? 覚えがないけど」

「じゃあ、なんで逃げるように教室を出ていったのよ!」

「それはあれだよ。そっちが急に絡んでくるから」

「っ! それもそうね……。じゃあ何、あたしが見たのはやっぱり幻覚……?」


 僕が何とか誤魔化したこともあり、伊東は自分がおかしかったと認識したようだ。それに関して伊東には申し訳ないことをしてしまったと思っている。

 けど、正直に話せるわけがないだろう。あれは天使だよ、なんてさ。

「……とりあえず、根気強く頑張ってみるよ」

「さっすが、今井くん! 男の子だー! 辛くなったら世読が慰めてあげるからね! しかも初回だけはなんと無料で!」

「初回以降は金取られるのかよ」

 鬼崎との馬鹿話に興じていると予鈴のチャイムが鳴った。

 それから約四分後、SHR開始ギリギリの時間になって伊東が席に戻ってくる。絶対に僕とは話をしないという強い意志を感じた。

 端的に言ってしまえば、前途多難ということである。

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