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思い出倉庫に行ってみた(企画4177のリライト)

作者: ウナム立早

しいな ここみ様主催の『リライト企画』の企画作品です。


しいな ここみ様の原作

『思い出倉庫へようこそ 4177』(https://ncode.syosetu.com/n2251im/)

を僭越ながらリライトさせていただきました。


お待たせしました

ここがあなたの思い出倉庫です


女の子のような姿の管理人が言う

エレベーターの扉が開くと

そこには広大な空間

たくさんの本棚が

何列にも並んでいる


すべての思い出を見ることはできるかと尋ねた

管理人は言う

あなたの年齢なら20年かかります


良い思い出だけを見ることはできるかと尋ねた

管理人は言う

どの思い出を見るかはあなた次第です




私は倉庫へ足を踏み入れた


ここには

あなたの懐かしい思い出がいっぱい

よく覚えていることも

忘れてしまったことも

全部ここにはあります


最初に

管理人はそう言っていた


本棚からこぼれ

床に落ちているアルバムを見つける

私はそれを拾い上げた


アルバムの中にあったイメージは

仕事で失敗した私

顔を赤くして叱る上司

私はアルバムを近くの本棚にもどす


やたら目を引く

過剰な装飾のアルバムを見つける

私はそれを取り出した


アルバムの中にあったイメージは

身勝手な恋人に振り回される私

私を置いて好き勝手に振る舞う恋人

私はアルバムを本棚の隙間に押し込む


次のアルバムも

その次のアルバムも

心のふちつねるような

苦い思い出ばかり


ああ

普段の私と同じだ


なぜこんなアルバムばかり開くのだろう

もうどうにもならないのに

どうにかしたい思い出ばかり飛び込んでくる


楽しかった思い出だって

輝かしい思い出だって

この倉庫にはあるはずなのに




私は疲れてしまった

重い足取りで

エレベーターへと向かう


すると

エレベーターの扉が

ひとりでに開いた


中から管理人と

大きくて美しいツヤのある本棚と

それを乗せた台車が現れた


その綺麗な本棚は何かと尋ねた

管理人は言う

いっぱいになったので新しい本棚を作りました


一番上にあるアルバムは何かと尋ねた

管理人は言う

あなたがここへ来た時の思い出が詰まっています


私は何も言わず

エレベーターに入ろうとした

すれ違いざま

管理人が言った


この本棚

素敵な思い出でいっぱいにしてくださいね


ふっと

心の霧が晴れたようだった


ありがとう


私はそう言って

思い出倉庫を後にした



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 過ぎてしまえば苦しかったことも楽しい思い出に変わるといいますが、思い出そのものを開いてリアルに感じたらやっぱり辛いのでしょうね( *ˊᵕˋ) 抽象的だった私の詩を具体的にリライトしてくだ…
[良い点] 重苦しい気持ちから、軽やかで明るい気持ちになれるラストが素敵でした。テンポもとても読みやすく、するりと心に入ってきました。読ませていただき有り難うございました♪
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