1話 追放
わい、吉法師じゅっちゃい。今日死ぬなう。
……何を言ってるのか分からないと思うが一言で言えば……傾奇過ぎた。
生まれてすぐは状況確認の為大人しく赤ちゃんプレイに従事していた。もちろん乳首は嚙みちぎってない。
そして状況の確認も終わり体も大きくなっていったある日、そろそろ良いかと思い親父(織田信秀)に千歯扱を作ってくれと頼んだ。
笑われた。吉法師は面白い事を考えるな。そう言い頭を撫でられた。子供の言う事だし仕方がない。そう思い私も笑った。
次にお米が多く取れると方法があると塩水選を教えた。
怒られた。大事な種籾を塩水なんかにつけるなんて何を考えてるんだと叱られた。
ならばと次は硝石の作り方を教えた。
親父は硝石なんか何に使うんだと聞いてきたので火薬にして鉄砲で使うと言うと鉄砲て何? と聞かれてしまった。
そこで私は鉄砲とその運用について伝え、時期的に今から作っておくと色々便利だと教えたが親父もそして傅役の平手政秀も怪訝な顔をするばかりだった。。
ならばと椎茸の栽培をしようと伝えると食べ物で遊んではいけませよと平手政秀から一言。
ならせめて肉が食べたいと言うと死にたいのですか穢れますぞと泣く平手政秀に反対され。
清酒を作りたいと言うと若様にお酒は早うございますと平手政秀に諫められ。
石鹸を作ると言えば何の役に立つのか呆れられ、病気にならないためと教えてもなら祈祷しなさいとお寺に行かされ。
脚気を治すには麦飯を食べればいいと教えても証拠はあるのかと言われ。
忍者を雇いたいと言えば下賤な民を屋敷にいれてはなりませんと怒られ。
座や関所を廃止するよう言えば猛反対をくらい。
不作の年や戦の勝ち負けを言い当てれば気味悪がられ。
何時しか狐憑きと噂が立ち幽閉された。
ならばと現状を挽回しようと転生した事や未来の出来事を話すといよいよ大人たちは般若と見まがう鬼の様な顔になり廃嫡が決まり、更には斬首の日取りまで決まってしまった。
普通切腹や出家じゃないの? と聞いたところ罪人扱いな為斬首で間違いないそうだ。う~ん、これは所謂、あれ? 俺また何かやっちゃいました? 的な奴だ。只やっちゃったレベルは最悪に近い。
まさか戦国時代小説に出てくる中ではかなり当たりに近く勝ち組人生を歩めるはずだった織田信長に転生しておいて元服もせず生涯を終えようとは……何を間違えたのだろうか。
そして斬首が決行される日時の夜も明けきっていない早朝、牢屋の入口がキィと小さく鳴りながら開いた。
朝ご飯の時間にはまだだいぶ早く、まさかこんな早くから処刑されるのかと驚きながら牢の入り口を見ると傅役をだいぶ前に解かれた平手政秀が立っていた。
「最後のご奉公です」
平手政秀はそう言うと私を牢から出し静かに付いてくるように言った。私は最後の奉公が処刑場に連れていく事って……相当怨まれてるんだなと思いながら言う通り静かに平手政秀に付いて行った。
赤ん坊のころ夜泣きが少なく気味が悪いと言われ、その話を聞いて夜泣きを増やしたら赤ん坊なのに言葉が分かると更に気味悪がられた。言葉を喋れるようになるとすぐ、文字を習いたいと言い平手政秀は膝に私を乗せ言葉を教えてくれた。そしてすぐ、脱穀のだの字も知らないはずなのに千歯扱を作りたいと言い周囲を困らせた。他にもこの時代では珍しい先進的な考え方や技術を発表し一時は麒麟児とまで言われた。だが私の言う言葉は広がらなかった。いや、言葉だけが広がり気味悪がられ何時しか私は狐憑きと言われるようになってしまった。そんな私に最後まで付いて来てくれたのが傅役、平手政秀だった。しかしその傅役も弟に取られ私は座敷牢に押し込められた。だから平手政秀に恨みはない。親父にもだ。そう斬首を言い渡してきた親父に言い私はさらに出来損ないの息子ですまなかったと頭を下げた。親父は何も言わず、去っていった。その日から私は親父を見ていない……。
着いた先は馬屋だった。
「お逃げなさい」
平手政秀は私の方を見ず、馬の鬣や腹を摩りながら言った。
「逃げるは恥だが役に立つ。若がおっしゃった言葉です」
ごめん。それドラマ。
「確か打楽器を叩く人々が言った言葉だとか」
ごめん。それドラマー。
「意味はよくわかりませんが孫子の策にも三十六計逃げるに如かずと書かれております。後の事はこの政秀に任せてお行きください」
こうして、私の恥多き人生は始まったのだった。
設定を考えて1日で書いたんで続きが書かれるかは不明。むしろこの設定で誰かほかの人、書きませんか? チラチラ