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木っ端怪談 ついてくるもの①
こんな怪談をきいたことはないだろうか。
夜の帰り道。
ひとけのない道を歩いていると、どこからともなく感じる人の視線。
だが振り返れど、周りを見渡せど誰もいやしない。
しかし確かに感じるのだ。すぐ後ろに、もしくはすぐ隣に、視線を、吐息を、足音を、自身の肩に伸びる手を。
オチはない。恐ろしい存在もでてこない。つまらない怪談だ。あるいはこの程度のことなら経験した人もいるかもしれない。
これもまた名前すら付けられてない木っ端怪談のひとつだろう。