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週末の精霊使い  作者: DP
1.女の子の体になったけど、女の子にはならない
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ユージンとあそぼう

ただ遊んでいるだけの回になってしまった


「わぷっ」


この海を模したレジャー施設の超巨大プールは、ちゃんと波まで再現されている。しかも常に一定のレベルではなく波の高さはランダムで、時折それなりの高さの波が来たりもする。


今も弱い波の続いた後にいきなりデカイ波が来て、女性陣の中だけで見ても一番小柄なスタッフより10cmは身長の低い俺は、自らの体に当たった波の飛沫を思いっきり顔面に受ける事になった。


「ちゃんとしょっぱいんだな」


くちの中にも入ってしまった水をぺっぺっと吐き出しながら、味蕾に塩気を感じてそう呟く。ここ数年海に遊びに行った事ないから海水の味など正確に覚えていないが、その朧気な記憶と比較しても少し塩気が薄く感じるのはここが本物の海ではなく人造の疑似海水だからか。或いはこの世界の海の水自体が、俺達の世界の海水より塩分濃度が低いのかもしれないが。


しかしここまで再現してリアリティを追求するのはいいが、施設のいろんな所が傷んだりしないのだろうか?まぁそんな事ただ遊びに来ているだけの俺達が気にすることじゃないけど。


「大丈夫っスか?」

「ん? ああ大丈夫、ちょっと口の中に海水入っただけだから」


心配そうに聞いてきたレオに、そう返す。


先程まで一カ所に集まっていたエルネストの面々は、今は思い思いにばらけて好きに遊んでいる。がっつり泳いでいる者、波打ち際で遊んでいるもの、日光浴を楽しむもの、様々だ。そんな中俺はそのどのグループに入る事もなく、水の中をのんびりと漂っていた。


漂うと言っても水深は1mないくらいで先程のような大きな波がこなければ大体水面の高さは胸より下くらいだ、正直水の中に突っ立っているという方が正しいかもしれない。


そして周囲にはミズホとレオ、それにチームの女性スタッフが二人いる。特に声をかけたわけでもなく、俺が一人でこっちにきたらくっついてきた連中だ。


「別に俺、水の中でのんびりしようとしてこっちに来ただけなんだけど」


とりあえずなぜかこっちに視線を集中させている他のメンバーに対して言ってやる。

この施設の中、気温も調整されているのか結構高めなうえに(さっきパーカー着てた時、実はわりと暑かった)9月といえ今日は結構日差しも強いため、単純に水の中にいた方が気持ちよさそうだからってのが一つの理由。あともう一つ理由があるが、とにかく何かをしたくてこっちまで来たわけじゃない。


だがその言葉にレオやミズホは笑みを浮かべ


「アタシは元々ユージンと遊びたくてここに来たんだけど?」

「お二人が一緒にいるのに別の所で遊ぶという選択肢は俺には無いっス」


そう答えた。

更には残りの二人も


「せっかくこういう機会だからユージンちゃんと仲良くなりたいなぁって」

「ねー」


確かに俺は週末しかこっちいないし、その週末にしたってスタッフの皆は仕事してるからプライベートで話をすることは殆どない。新たな同性の同僚として見られてそういわれているなら、否定はしづらいな。ちゃん呼びはちょっとやめて欲しい気もするけど。


「まあ、皆がいいなら俺は別に構わないけどさ。ただそれ、どっかにすぐ流されちゃうんじゃない?」


俺は女性スタッフの一人が手に持っているビーチボールを指さす。わざわざここまで持ってきてるということはこれで遊ぼうということだろうが、これくらいの深さだと動きづらさはあるしそれで取り逃せば波に持っていかれる。

その指摘に、ビーチボールを持っている女性スタッフも頷く。


「うん、だから本当はもうちょっと浅めの所がいいんだけど」

「あ、それは……」

「あー、それはだめよ」


ここまで来たもう一つの理由からそれは断ろうとしたら、なぜか先にミズホが否定の言葉を発した。そして彼女はさらに言葉を続ける。


「もうちょっと浅い所に行くとユージンのお尻が水面に出ちゃうし、みんなからの視線も届くでしょ? そしたらそれが気になってユージン満足に動けなくなっちゃうわよ」

「ちょ」


いや確かにこの深さの場所まで来てるのそれが理由なんだけどさぁ! 察しが良すぎるのなんとかなりませんかね! あともうちょっといろいろとオブラートに包んで!

他の面子もあー、とか頷かなくていい!


「それじゃこの辺りでやりましょっか」

「流されたら俺が取りに行くから大丈夫っスよ。泳ぎは得意なんで!」


レオが元気よく手を上げてそう答える。まぁお前見るからに運動神経良さそうだもんな、腹筋割れてるし。さっき別の女性スタッフの一部がその辺りをねっとりとした目で見ていたのを教えてやった方がいいだろうか?当人はあまり気にしなさそうだけど。


というかこいつまがりなりにも年上の女性(うち一人は外見は明らかに年下だし中身は男だが)に囲まれているのに物おじしなすぎだろ、そういった視線を向けることもないしさぁ。本当にまだ19の青少年か?


「? なんスか?」

「なんでもない」


こいつミズホが俺に引っ付いてくる時は妙な目──というかガン見してくるけど、ミズホや女の姿になって以降の俺が露出高めの格好していても一切そういった視線を向けてくることないんだよな。俺ですら以前はミズホのそういった姿をチラ見してしまっていたくらいなのに、そのレベルのチラ見すらしてこない。性欲的なものがないんだろうか? 男に対してそういう視線を向ける事もないから、同性好きってこともないだろうし。


ま、おかげでこっちは気楽に付き合えるから助かってはいるんだけどな。


しかし、ここでボール遊びか。

俺の身長だと動き回る時、多分ある程度泳いだりした方が早いよな。だとしたら、


「なぁミズホ。念のため確認なんだが、これ動き回ったり泳いだりしても脱げたりしないよな?」


胸を覆っている水着を指さすと、


「当たり前でしょ、そう簡単に脱げたりしたらプールやこういった施設はそういったの期待した男たちで溢れかえるわよ」

「そりゃそうか」

「それにちゃんとその辺は考慮して水着選んでるから、心配しなくても大丈夫よ」


ミズホがそういうなら大丈夫か。それに今は周りには女性陣と性欲が枯れている(予想の)レオしかいないし、仮に事故っても対して問題にならないな。


よしそれなら、童心に帰ってというわけでもないけどたまにはがっつり遊ぶとしますか!




──そして、数十分後。


俺は水面に浮かんでいた。


「おーい、生きてるー?」

「死んではいないな」


声を掛けてくるミズホに浮かんだままそう返事を返す。ちなみにすぐ横には女性スタッフの一人が俺と同じように浮かんでいる。


うん、ちょっとヒートアップしすぎた。


原因はミズホだ。ボール遊びを始める前にただ単純にボールを回すだけでは面白くないと、彼女は罰ゲームを提案したのだ。


その内容は3回ミスしたら他の人が指定するちょっと恥ずかしいポーズを取るというもの。それほど無茶な内容でもないし全員がそれを受け入れ遊びを開始した、が。


いや全員マジでやりすぎじゃないですかね! 遊びだよ?


自分がやりたくないのか、或いは他の人間にやらせたいのか他のメンバーの考えはわからないが、明らかに遊びの雰囲気ではなくスポーツ的なノリになった。おかげでえらく動き回る羽目になり、その結果が今の状態である。


罰ゲーム? ええ、何回かやらされる羽目になりましたよ、どんなポーズしたかは言わないけど。っていうかさぁ、言い出しっぺのミズホがどんなポーズさせられても全くノーダメージぽいのずるくない? ちなみに罰ゲームの回数が一番多かったのが今俺の隣で浮いている娘で、その次に多かったのが俺です。


逆に罰ゲームの少ない体育会系の二人は今もボールで遊んでいる。体力バカ共め……


「そこまで疲れてるなら、いったん上がって休憩する?」


波に漂うワカメみたいになっている俺達二人を見てそう提案してきたミズホの言葉に、ちょっと考えてから俺は頷いた。


「そうだな。結構海水飲んじゃったせいか喉も乾いた気がするし、一度上がるか」

「そうひまひょ~」


となりの娘も同意してきた。というか君はちょっとばて過ぎ。もうちょっと体力つけようね。


俺は海面に浮かべていた体を起こすと、いまだボール遊びしている二人に声を掛けた。


「おーい、一回上がろうぜ!」












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