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週末の精霊使い  作者: DP
1.女の子の体になったけど、女の子にはならない
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美少女になった事に伴ういろいろ面倒な雑事

前のシーンで呼び出されたのはユージンとミズホと記載していましたが、ユージンのみに修正しました。ご了承ください。


エルネストの事務室には一応オーナールームというものは存在する。がチーフメカニックも兼任するナナオさんはハンガーにいることが殆どで、この部屋にいることはほとんどない。この部屋にいる時は契約更新など事務的な話をするときが殆どだ。


だが今はシーズン真っ只中だし、俺は今シーズン頭に年単位で契約を更新しているのでそういった話は今はないはずだが、はてさて。


「ナナオさん、ユージンです」

「いいわよ、入ってきて」


ノックをして声をかけると即座に返事が返って来たので、ゆっくりと開いて中に入る。


部屋の中は、チームの最高責任者の部屋とは思えないほど殺風景なものだ。俺達が使っているものよりほんのちょっと立派なデスクとキャビネット、それに背の低いテーブルとそれを囲うように配置された柔らかそうなソファ、目立つものはそれだけ。装飾品や調度品といったものは全くない。


そんな、オーナールームには見えないような部屋の中で、ナナオさんは立ち上がって俺を迎え入れた。


「悪いわね、そこに座って頂戴」


言葉と共にソファの方を指し示されたので腰を落とすと、ナナオさんはいくつかの書類を持ってその反対側に座った。


「それでお話って?」

「うん──実は4つほどあるんだけど」

「多いっすね」

「ええ。おかげで私も忙しくなって困るわ……精霊機装いじる時間が減るじゃない」

「いや半目でみられても……って俺のせいなんですか?」

「貴女が悪いってわけではないけど、貴女絡みだからね。しかも契約絡みだから私が関わらざるをえない案件だし」


ナナオさん元々精霊機装をいじりたくてチーム立ち上げたような人だから、本来はチームの雑事よりも機体のメンテナンスや改修の方をやってたいんだろうなぁ。とはいえチームの最高責任者だ、契約が絡んでくるなら確かに経理総務へ丸投げというわけにはいかない……って契約絡み?


「契約絡みって、こないだ俺契約更新したばっかりですけど。また伸ばすんですか?」

「ウチとの契約交渉じゃないわよ。……非公式打診だけど、移籍の意思確認が来てるわ」


は? 移籍?


「俺にですか?」


俺の問いにナナオさんは頷く。

まーじかー。


ウチのチーム、先日レオに対して打診があったとおりレオやミズホにはちょくちょく引き抜きの話が来ているらしいが、これまで俺に対してそういった話が来た事は残念ながら過去に一度もない。いや別に俺は今のエルネストで満足しているし、日本人というデメリット(特に活動に当てられる時間の問題が大きい)があるのにギリギリの所で俺を拾ってくれた恩義もあるので移籍するつもりはないんだが、やはりちょっと……ほんのちょっとだけ寂しさを感じていたのは否定できない。ウチのチームはそういう打診があった場合必ず伝えてくるから、これまで言われたことがないってことは本当に一切打診がなかったってことだからな……


精霊機装のリーグ戦参加チーム間での移籍交渉はわりと明確にルール化されていて、チームに所属している選手に対して直接他所のチームが移籍を打診することはない。必ず先にチーム間交渉を行い、その合意が取れた後にようやく選手との交渉となる。このルールを守らず直接交渉を行った場合は最長で1年間の移籍交渉禁止と罰金という罰則が科せられるため、少なくとも俺が知る限りではこのルールは守られている、ハズだ。

ただし、選手にそもそも移籍の意思がない場合はそもそもチーム間交渉が無駄になるため、まず最初にその意思の確認の打診が行われるのが通例だった。


そうかー、ついに俺にも来たかーとも思うがまぁこのタイミングだ。実力を認めての打診ではなく話題性からの打診というのは明らかだろうな。そういう意味では素直に喜ぶ気にもなれない。ミズホもだいたいいつもこんな感じの気分なのかな?


「ちなみにどこのチームから打診が来てるんですか?」

「B1のフェアリス」

「お断りしてください」

「あら即答」


いやだってフェアリスってメンバー全員美少女でそろえたチームじゃん! 精霊使いの活動だけじゃなく歌やダンスとかもやるアイドル集団じゃん! しかもあのチーム4人揃ってる上に活動状況から考えてメンバーの入れ替えをするわけがないから(そんなことしたらファンが暴動起こしそう)完全に控えメンバーとしてかアイドル側の活動要員としての獲得じゃん! 話題性からじゃなくて話題性だけの獲得じゃねーか! 誰がいくかそんなチーム!


「正直ユージンをチームから手放したくはないけど、あのチームのチームコス着てダンスするユージンは見たくはあるのよね」

「そんな理由で悩むのやめてイタダケマスカ」


あのチームのチームコスチュームはフリッフリのアイドル衣装だ。たまにそのままの格好でライブとかやってる。


「冗談よ。……それじゃ当人に移籍の意思なしってことで先方に返事しちゃうけど構わないわね?」

「強く強調して返答してください。……というか、基本的に俺移籍する気はないですから今後あっても全部断っちゃっていいですよ」

「そういう訳にもいかないでしょ。まぁ、この件に関しては了解したわ。次に、またインタビューの申し込みがいくつか来てるんだけど」

「そこら辺は前回お話した通りに。シーズン中は全部NG、シーズンオフなら精霊機装関連のメディアだったら受けます」


こちらの世界での活動時間が週2回、時間にしてみれば睡眠時間も含めて30時間ちょっとしかない身としてはそんなことに時間を割いている暇はない。機体の調整やトレーニング、対戦相手のデータ分析や作戦の立案、更には突発で入る防衛出動とやることは山積みなのだ。……本当はここ数週間の経験からオフシーズンでもそういったものはお断りしたいのだが、さすがにエンターテイメントである精霊機装に参戦するプロ精霊使いとしてそういう訳にもいかないのでそこは我慢するしかない。ただしゴシップ誌は門前払いだ。


「OK、この辺は総務にスケジュール面も合わせて調整するようにさせるから、今度可能な時間帯を総務と相談しておいて」

「了解です」

「それじゃ3つ目ね。これは私の方からお願いという形になるのだけれど」

「お願い?」

「ええ、スポンサー絡みでね。まず既存のスポンサーからなんだけどこれまでミズホだけにイベント参加や広告の撮影を希望していた所から、ユージンも参加するように要請が来てるの。申し訳ないけど受けてもらえるかしら」


そう言ってナナオさんが渡してきた書類に目を通すと、割と大口のスポンサー2社からだった。そうか、メディア関係は時間がたてば今後ある程度沈静化していくにしても、単純にガワが美少女になったからこういう案件は継続的に発生してくる可能性はあるのか。


「強制はしないけど……」

「いえ、大丈夫です」


内容に目を通したが、それほどおかしな内容でもない。いずれも俺一人じゃなくてミズホと一緒だしチームの事を考えればこれも役目だ。

自分自身を美少女として売り出していく気は毛頭ないが(世間が中身を男と知っているのにおおっぴらにそんなことやっていけるような強メンタルはしていない)、このガワによってチームが受けられる恩恵の為には受け入れられるものは受けていくしかないだろう。


「ちなみに実はもう一社あるんだけど……」


何故か少し言いずらそうにナナオさん。


「どこですか?」

「エルネスト社」


ウチのメインスポンサー──てか、ナナオさんの旦那の会社じゃん。


「これはミズホだけじゃなくてレオも含めてなんだけど、今度の新作衣装の広告のモデルをやって欲しいって」

「……はぁ」


なんでナナオさんが言いづらそうにしていたか分かった。

エルネスト社の衣装モデルは今回に限った話ではない。前回はミズホがやってるし、その前にはミズホとグェンの()()()()でやっている。俺にまで要請が来たのは今回が初めて、そしてレオには当然のように要請が来ている。

まぁそういう事だ。戦闘方法も外見も地味な俺には今までは話も来ていない。なのに外見が変わったら即コレで、しかもレオまで含めての話だ、頼みづらい所があったのだろう。


でも別にそこは気にしてもらわなくてもいいのにな。だって別に俺その仕事やりたかった訳じゃないというかどちらかというやりたくないし……とはいえメインスポンサーからの要請だ、これは断れない。俺が了承の意を伝えると、ナナオさんの顔に安堵が浮かんだ。旦那の会社とは言えチームの運営費に大きく影響するスポンサーだもんな。


「これで話は終わりですか?」

「いえ、もう一つあるわ。──論理解析局からの要請が」


論理解析局から?








 






チームフェアリス所属の4人は歌やダンスのレッスンやらライブやらイベントをこなしながらもほぼB1を維持している実力者&努力家の集団


あと上位チームや金銭に余裕のあるチームでは病気等の緊急時の対応の為に控えプレイヤーを雇っているところはそこそこある。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アイドルは歌って踊れるだけじゃ最早やっていけない時代なんだな…ゆーじんちゃんも歌って踊ろう!
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