会見アフター
●第三者視点
匿名:ユージンちゃん何あの狙撃精度。エグない?
匿名:あれは対戦相手のベルクダインの連中がダメ過ぎた。普段ならさすがにあそこまでバカスカは当たってないよ。
匿名:とはいえ精度と動きの読みの鋭さはBランク辺りまでならダントツでは?
匿名:そのかわりユージン氏、近づかれると途端にポンコツになるから……私元々ミズホ・オーゼンセのファンだからエルネストの試合いつも見てるんだけど、接近されると全力逃走するか囲まれてボコられるかの2択なんで……
匿名:囲まれて無茶苦茶にされるユージンたん……
匿名:通報した
匿名:そもそも格闘戦用の武器を持ってすらいないという潔さ
匿名:ライフルで殴ればいいのでは?
匿名:暴発しませんかねそれ……
匿名:暴発したところで霊力込めてなければダメージ通らないし……
匿名:暴発しちゃって涙目になるユージンたんのイラストください
匿名:ユージンちゃんに狙撃されたい
匿名:一瞬で消し炭になるか粉々の肉片になるかだと思うけどよろしいか
匿名:まぁあの狙撃の腕持ってて更に格闘戦もいけるならそもそももっと上のリーグに引き抜かれてるだろうっていう
匿名:オーゼンセもそうだけど、技術はあるけど霊力の最大値が高くないから上のリーグはしんどいんだよな
匿名:記者会見見てるけど、さっきからどもりまくってるの可愛すぎない?
匿名:これは自分の外見を生かして萌えキャラを目指しているな……あざとすぎる……
匿名:いやこれ普通に緊張しまくってるヤツだわ。C1の選手でこんな数の記者に囲まれる事なんてないからな。
匿名:あ、舌噛んだ。
匿名:結構勢いよくいってない? これ
匿名:可哀そうに……俺があの場所にいたらさすさすしてあげるんだが
匿名:舌をかよ。さすがに気色悪いわ。
匿名:記者達が無言で喋れるようになるの待ってるのクッソ笑う
匿名:しかしこの姿を見ると元が男だったというのが本当に信じられん
匿名:[画像]
匿名:画像貼られても元が割と特徴がないタイプなせいかあまり気にならないんだよな
匿名:きっちりメイクしてあげれば女装も行ける気がするわね
匿名:元々メディア露出が少ない選手で印象が薄いから名前聞いても顔が浮かんでこないっていうのは強い気がする。
匿名:唐突に好きな男のタイプは笑う
匿名:急に流暢な突っ込みして吹いたわ
匿名:オーゼンセも吹き出してて草生えますよ
匿名:ユージンが下がろうとした瞬間マイク突き出すの剛腕だな
匿名:あ、ユージンの会見終わった
匿名:オーゼンセふっつーに受け答えしてますね
匿名:彼女はカメラ慣れてるだろうからね
匿名:[画像]
匿名:!?
匿名:えなになになにこの舌出し画像、さっきの会見でこんなシーンあった!?
匿名:地方ローカルのネット配信局がずっとユージンちゃん映してたのでそっち見てたらユージンちゃん急にこっち向いてこの表情ですよ。体が勝手に動いてスクショ取ってたわ。
匿名:その配信局もお前も有能が過ぎる
匿名:これなんだろ、カメラに気づいてサービス的な?
匿名:いや、目線がこっちじゃないな。誰か知り合いがいてそっちに向けて、みたいな感じじゃないか?
匿名:ああカメラ気づいてないでやっちゃった感じか。ドジっ子可愛い
匿名:うっわ、タイムラインの方に画像や動画一気に流れてきた
匿名:これはまた動画サイトに切り抜きまとめが上がりそうですね……
(……やっぱりこうなってるっスよねぇ)
自分のタイムラインに流れてきたまとめサイトの内容を一通り眺め終えて、レオは苦笑いを浮かべた。
当人は来週にはある程度事態が沈静化していることを信じて日本へと帰って行ったが、今日の記者会見の規模を考えれば無理な話だ。少なくとも向こう1、2か月程度は落ち着かないんじゃないかなと思う。
(フォローしないといけないっスね)
チームメイトとしても後輩としてもそう思うが、何よりそういった事が負担になってユージンが疲れてしまうと、ミズホがベタベタするのを遠慮してしまうため自分の望む光景があまり見れない。
(他の人間では見ることが出来ない、同僚だけの特権ッスからね)
自分の欲望を満たすためにも、ユージンをがっつりサポートすることをレオは心に誓うのだった。
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〇有人視点
「!?」
なんか背筋にゾワっとしたものを感じた。湯船に入ってるのになんでだよ……。え、もしかしてそういった存在的な? 勘弁してくれ……あまり得意じゃないんだよオカルト。
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●第三者視点
「珍しい物見てるな、フリー。例の子の会見だろそれ」
所属チームの本拠の中、精霊使い用に準備された一室。小さなオフィスのようなエルネストと異なりゆったりとしたリビングのような部屋の中、ソファに腰を降ろして大きなモニターに映し出される映像をじっと見つめていたフレイゾン・イスファは、背後からかけられた声で意識を引き戻された。
「ザック。まだ残っていたのかい?」
振り返れば、そこにはひとりの青年がマグカップを片手に立っていた。
青年の名前はザック・マルティネス。彼のチームメイトの一人だ。
「今日はもう帰ったと思っていたんだが」
「ヴィクとゼノは帰ったよ。俺はこれを飲んでからにしようと思ってな」
そう言って彼は手に持ったマグカップを小さく持ち上げる。
「紅茶か。本当に好きだな、家にもあるだろうに」
「家にあるのとは違うのをこっちに置いてあるんでね。勝った時にはここでこれを飲むって決めてるんだよ、知ってるだろ?」
そう言って笑いながらザックはソファの前へと回ってくると、テーブルの上にカップを置いてフレイゾンの横へと腰掛ける。
「いやー、凄いなこの記者の数。俺達Sリーグの試合後の会見より多いじゃないか」
「今や時の人だからね」
「元の姿の写真を見たけど、完全に別人だからなぁ……しかも一時的なものでもないんだろ?」
「ああ」
「……言っちゃ悪いが、可愛い女の子の姿で本当に良かったな。場合によっちゃ生きてくことすらつらいことになってたろ」
「過去の事例を見たが、割と詳細を記せないような姿になったこともあったらしいからね」
「怖い話だな」
そう呟いてからザックは一度紅茶に口を付け、それからモニターから目を離しフレイゾンの方へと向き直った。
「で、どうしたんだ? お前さんはあまりこういったゴシップめいた話は追わない印象だったんだが」
その言葉に彼はピクリと体を震わせる。それから一瞬逡巡するような様子を見せ、だが意を決したように言葉を発した。
「今日、試合前に……たまたまだが彼女と会ったんだ」
「……ほう?」
「それで少し話をしたんだが、特に問題はなかったんだ」
「ほう!」
はたから聞いてると何のことを言っているかさっぱりわからないフレイゾンの説明だが、ザックには意味が通ったらしい。彼の表情に笑みが──いや、面白がるようなものが浮かんでくる。
「つまり──そういうことか?」
その言葉に、今度はフレイゾンが苦笑い。
「さすがにそこまで節操なくはないよ。だけど、練習相手としてはいいと思ってね」
「成程なぁ。いやでもいいと思うぜ、ついに第一歩を踏み出すわけだな」
「ああ──僕の未来の為の第一歩だ」
そう言ってフレイゾンは笑う。
長い長いトンネル、その出口がようやく見えてきたのかもしれないのだから。




