異世界ウルーバ:異世界を体験するのはこれで3度目です。
ここから少しの間中編となります。展開は決まってるけど文字数は未定。
「……自分で言うのもなんだけど、俺ヒーローみたいな体質だよな。巻き込まれ体質の。というか三回も異世界を経験するなんてそうそうないだろ」
「確かにないと思うけど、それはそれとしてユージンはヒーローではなくヒロイン体質よね」
「2回も攫われているしな」
「いや、2回目の方は攫われたわけじゃないから……自分の意思で逃げただけだから……」
「そろそろドラマ化のオファーとかきそうっスよね。ユージンさんほど波乱万丈な人生を送っている人なんてそうそういないっスよ」
「何にしろヒロインだな。それもお姫様系の」
「まぁ今のユージンはお姫様にしてははしたない格好しているけどね?」
「なんでわかんだよ! 見えてるのか!?」
通信機越しで映像もないのに的確に今の状況を言い当てたミズホに思わず声を荒げて突っ込むと、それに対して今度はサヤカから少々呆れが含まれら声音で突っ込みが入った。
「いや、先ほどちょっと暑いかなと言った後に衣擦れの音をさせてたんだ。普通にわかるだろう」
「うっ……聞こえてたのか」
「聞こえたわよ。脱いだ後のちょっと色っぽく漏らした声も一緒に」
「やめろ」
精霊機装の操縦席の椅子の上、シートを倒した椅子の上で体育座りに近い恰好をしていた俺は自身の恰好を見る。
足元は素足。脱ぎ捨てたソックスは椅子の端に掛けてある。俺用のチームユニフォームであるショートパンツはそのままだけど、上半身はおへそを出した状態だった。というか上半身は下着だけの状態だ。当然本来操縦席の中でするような恰好ではなく、はしたないと言われても仕方ない恰好だ。
勿論露出に目覚めたとかそういう理由ではなく、この格好にはちゃんとした理由がある。
まず最初に。俺達は精霊機装に搭乗はしているが試合中ではないし、論理崩壊の対応中でもない。……いや、論理崩壊が関連した状況ではあるんだけど。
正面だけという最低限のものしか稼働させていないモニターに映るのは、巨大な精霊機装に匹敵する高さを持つ木々が立ち並ぶ、鬱蒼とした森の光景だった。目の入る範囲に人工物らしきものはみつからない。
ぱっと見は、アキツの広大な森の中にも見える。だが、その光景の中に俺は以前感じたものと同じ違和感を感じている。
それはグラナーダだ。アキツの中に現れた異世界。その理由は単純で、明らかに異質な生物をいくつか見かけている。こちらの世界に似た生物もいるようだけど……
そう、先ほど告げた通り今俺は、いや俺達は異世界に来ていた(推定)。
本当になー。なんで異世界を複数回体験しているんだよ。そのうち一回は最初は自分の意思で行ってはいるけどさ。
で、現在はコクーンに包まれた操縦席という完全な閉鎖空間の中で待機中というわけ。
精霊機装は必ずその機体の中に大気組成を分析する装置が組み込まれている。というのも俺達は論理崩壊による歪が起きて異世界の影響が発生した場合、その影響で発生する"意識映し"または"異界映し"の対応のため出撃するわけだが、"異界映し"の場合はその環境自体にも変化が起きる事がある。サヤカがこちらの世界に来た時なんかそうだよな。
で、可能性としては大気組成等にも影響が出る可能性があるわけで、その中に人体に悪影響がある成分が含まれていないとも限らない。だから基本的には標準装備なわけだ。めったに稼働する事はないけど。
その装置の初期判断では大気組成は問題ないと出てはいる。ただアキツにも存在する成分ならともかく未知の成分などだと分析にも時間がかかるため、その詳細な分析結果が出るまでこうして閉じこもってるわけだ。そしてここが異世界であるならそこまですぐに助けはこない。となると、バッテリーの充電もしばらくは行えないわけで……こうして酸素関連など生命維持に必要なものを除いて大部分の機器の電源を落としている訳だ。
「一応機体自体の機能を落としてるなら、救助が来るまでは普通に持つと思うけど」
「温存するに越したことないだろ? さすがに汗をかくような感じになったら作動させた方がいいだろうけどさ」
コクーンを展開している間は外気の影響も受けないから気温の変動要素は機器と操縦者の発する熱だけだ。時間が経てば徐々に上がっていくだろうけど、汗をかくほどでなければ脱げばいいだけである。……決して俺が露出狂というわけではない。
ちなみに過去にもこういった事例は何度もあるそうで、近年では発生していなかったものの発生時の対応はちゃんとマニュアル化されている。今大気組成の詳細チェックの分析結果を待っているのもそうだし、機体の電源の大部分を落としているのも同様だ。そしてそのマニュアルでは、ちゃんと救助が行くのでその場所から動かないように記されている。実際、救助もされているらしい。
今回みたいな通常とは逆の異世界転移が起こる場合、以前起きた"深淵"の件の時のように意図して起こされたものでなければ世界同士がかなり"近づいた状態"にあるらしい。その状態であれば行き来が可能となっている地球と同じように往来できる技術があるそうで、過去もそれで救助されている。
で、その場合基本的には同じ場所かその近辺に繋がるから、出来るだけその場所を動かないでっていうのもマニュアルに記載されております。
「出来るだけ早く救助来て欲しいッスねぇ」
「十数年ぶりの発生なんだろう? 少し時間がかかるんじゃないのか?」
口に出してはいえないがセラス局長は過去に何度もその対応はしているだろうから方法の調査からとかはならないだろうし、単純に準備にかかる時間次第じゃないかなぁ。局長が今アキツを離れてるとかだとアレだけど。
「とりあえず過去の事例だと早くて1日、遅くても3日には救助が行われているわ。時間が経過する程救助が難しくなるって話だから、すぐに対応はしてくれると思うけど」
「最低でも1日かかるか。大気組成の分析結果次第だとしんどいなぁ」
一応それぞれの操縦席の中に携帯食料と飲料のペットボトルがあるから1日くらいならどうにかなると思うけど、3日かかるとなると少ししんどい。水と食料は節約しないとなぁと思うけど、一番の問題はトイレである。さすがにこの密閉空間の中で用を足すのは……設備的にガスとかの問題は大丈夫だろうけど。最悪小の方はペットボトルでなんとかするにしても(それもあまりやりたくないが)、大の方はさすがに……
大気組成が地球やアキツとほぼ酷似している事を祈ろう。生命活動が行われている異世界の場合、結構な確率で大気組成とかは似通っているって話だし。最悪の事態になることは今の時点であまり考えたくない。
ころん、と倒したシートの上で横になる。当然といえば当然だけど、寝るための場所ではないからそれほど寝心地はよくない。そんなに大きいシートでもないし。
「安全には気を遣わないでいいのは楽でいいけどな」
こんな森の中だ。これが以前のグラナーダの時のように一人で転移させられていたのだったら、こんなのんびりはしていられなかっただろう。今の俺の体は鋼の鎧とそれより更に高い強度を誇る霊力で作られた繭に護られているからな。安心感が違う。少なくとも森を眺める限り精霊機装より大きい生物はいる気配はないしな。
「あ、分析結果出たっぽいッスねぇ」
お、マジ?




